税法・財政法試験問題集・その23

 

大東文化大学大学院法務研究科・租税法T(講義)2009年度本試験問題〔2009年7月24日出題〕

 

●次のT、Uの中から1問だけを選択し、解答して下さい。

 

T.次の事例を読み(いくつかの小事例に分かれます)、設問1〜3に答えてください。

  大東文化大学の卒業生であるXは、父親Aが経営する小売店で働いていた。次第に実質的な経営を任されるようになっていたが、青色申告は平成17年分(平成18年2月〜3月に行う)までAの名義で行っていた。Aは、青色申告を行うことについて四谷税務署長の承認を受けていた。しかし、平成18年の某日にAが死に、Xが名実とも経営者となった。従って、今後はXの名義で所得税の納税申告などを行うことになる。

  〔小事例1〕  Xは、Aの死からほどなくして、青色申告の承認を四谷税務署長に申請した。ところが、平成18年12月31日を過ぎても、四谷税務署長は承認もしなければ却下もしなかった。そのため、Xは、平成19年に、平成18年分の青色申告を自己名義(つまりX名義)で行った。その後も、Xは、平成20年には平成19年分の青色申告を、平成21年には平成20年分の青色申告を、いずれも自己名義で行った。

  〔小事例2〕  Xは、青色申告をなしうる法的地位が一身専属的なものであると知らず、相続によってその地位を引きついだものと思い、四谷税務署長に青色申告の承認の申請を行うことなく、平成19年に、平成18年分の青色申告を自己名義(つまりX名義)で行った。四谷税務署長はその青色申告書を受理した。Xは、平成20年に平成19年分の青色申告を自己名義で行った(やはり受理された)。ところが、Xが平成21年に平成20年分の確定申告を行ったところ、四谷税務署長は、Xが提出した2年分の青色申告の効力を否定し、白色申告とみなして更正処分を行った。

  〔小事例3〕  Xは、Aの死後、四谷税務署に相続税や所得税のことで相談に行った。その際、Xの大学時代の後輩で税務署の職員Bから、青色申告については税務署長の承認を求める申請がなくともX名義によって行うことが可能であると言われた。そこで、Xは、平成19年に、平成18年分の青色申告を自己名義(つまりX名義)で行った。四谷税務署長はその青色申告書を受理した。Xは、平成20年に平成19年分の青色申告を自己名義で行った(やはり受理された)。ところが、Xが平成21年に平成20年分の確定申告を行ったところ、四谷税務署長は、Xが提出した2年分の青色申告の効力を否定し、白色申告とみなして更正処分を行った。

  設問1  小事例1の場合、Xによる自己名義の申告は正当な青色申告として認められるか。認められるとすれば、根拠を何に求めるべきであるか。認められないとすれば、その理由は何か。

  設問2  小事例2の場合、Xが四谷税務署長による更正処分が違法であると主張するならば、どのようにして争うべきであろうか。また、Xの主張は認められるべきであろうか。

  設問3  小事例3の場合、Xが四谷税務署長による更正処分が違法であると主張するならば、どのようにして争うべきであろうか。また、Xの主張は認められるべきであろうか。

 

U.次の事例を読み、設問1〜3に答えてください。

  Aは東京都内で活動している弁護士であり、自ら弁護士事務所(弁護士法人ではなく、個人事務所である)を営んでいる。

  Aの平成20年分の所得は、次の通りである。

  @自ら経営する弁護士事務所に関する所得  3000万円

  但し、生計を一つにする配偶者で、Aとは全く別個に、自ら弁護士事務所を営み、経費も別にしていて記帳も別に行っているBに対し、Aの事業に従事したことの対価として支払った500万円を、必要経費の一部に含めている。

  AU私立大学の非常勤講師として大学から得た報酬  33万6000円

  BU私立大学の講義のために執筆した教科書や雑誌掲載論文の原稿料など  100万円

  C都内などで行った講演に対する報酬  500万円

  平成21年3月上旬、Aは確定申告をした。その際、@については上述のようにBに対して支払った500万円を必要経費として申告した。また、Aについては、講義のために使用する教科書(Bのもの)や六法などを自弁していること、私立大学共済組合員などの資格がないこと、研究費も研究室も与えられないこと、教授会などの会議への出席の権利もなければ義務もないこと、大学の講義は講演と同様のものである、などを理由として、BおよびCとともに雑所得として申告した(交通費、六法購入代などを必要経費としている)。

  この申告に対し、F税務署長は、@についてはBに対して支払った500万円を必要経費として認めず、Aについては給与所得と認定する趣旨の増額更正処分を行った。

  設問1  F税務署長が行った増額更正処分で、@のうち、Bに対して支払った500万円を必要経費として認めなかったことの根拠は何か。

  設問2  Aは、裁判においてBに対して支払った500万円を必要経費として認めるべきであると主張した。これに対して、裁判所はどのような判断をなすべきであろうか。それぞれが立脚する立場を明確にし、判例や学説の動向に留意して論じてください。

  設問3  Aについて、F税務署長は給与所得と認定したことの根拠は何か。また、この判断は妥当か。それぞれが立脚する立場を明確にし、判例や学説の動向に留意して論じてください。

 

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