税法・財政法試験問題集・その44

 

大東文化大学法学部・税法(講義)2011年度後期本試験問題〔2012年1月30日出題〕

 

●次の中から1問だけを選択し、解答しなさい。なお、所得税法の条文については別紙を参照すること。

   T  Tは板橋区高島平で酒屋を営んでおり、板橋税務署長から青色申告の承認を受けていた。長らく、Tの体調が悪かったので、息子のMが酒屋を実質的に経営しており、平成18年分の青色申告はMがT名義で行った。しかし、平成19年にTは入院してしまい、平成20年に亡くなったので、Mが名実ともに酒屋の経営者となった。Mは板橋税務署長に青色申告の承認の申請をすることなく、平成19年分についてM名義で青色申告をしたが、板橋税務署長は何故か申告書を受理し、平成20年分および平成21年分にもついても青色申告用紙をMに送り、Mの青色申告を受理していた。或る日、板橋税務署長が税務調査を行ったところ、Mが青色申告の承認を受けておらず、申請すらしていないことを知った。そこで、板橋税務署長は平成19年分ないし平成21年分の青色申告の効力を否認し、白色申告とみなして増額更正処分を行った。Mはこの増額更正処分の取消を求めた。

   さて、Mの請求は認められるべきでしょうか。何が問題となっているかを明らかにした上で、学説、判例の動向に留意しつつ、論じなさい。

   U  甲(男)と乙(女)は夫婦であったが、甲の不倫が原因で離婚することとなった。この離婚は家庭裁判所の調停によりなされたものであり、その調停の条項に従って、甲は自らが所有する土地および家屋を乙に譲渡し、登記の名義も甲から乙に変更した。

   この事例について、甲にはいかなる納税義務が発生するか(あるいは、全く発生しないのか)。土地および家屋の譲渡が慰謝料としてなされた場合、財産分与としてなされた場合のそれぞれについて、学説や判例の動向に留意しつつ、論じなさい。

  V  法人税法第22条第2項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」と定める。何故、「無償による資産の譲渡又は役務の提供」からも「収益」が生ずるとされているのであろうか。判例、学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

 

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