税法・財政法試験問題集・その50

 

西南学院大学法学部・税法(集中講義)2012年度期末試験問題〔2012年9月6日出題〕

 

   ●六法、および条文のコピーの参照を可とします(但し、書き込みのあるものは不可)。

  ■次の中から1題だけ選択し、解答してください。

  1.福岡県糸島市に住み、福岡市内の会社に勤務するXは、数年前に自家用車を150万円で購入し、通勤などに使用していた。昨年某日、Xは福岡市西区で交通事故を起こし、この自家用車を大破させた。修理には膨大な費用がかかるため、Xは自家用車を廃車とすることに決め、スクラップ業者に5000円で売却した。この事故がなかったら、自家用車の価値は100万円と評価されていたということで、今年の2月、Xは、自家用車の売却損(評価損)の995000円を自らの給与所得と損益通算し、確定申告をした。しかし、所轄税務署長は、Xの損益通算が認められないとして更正処分を行った。これに対し、Xは所轄税務署長に対して異議申立てを行った。Xは、主張が認められなければ国税不服審判所への審査請求、さらには裁判所への提訴も考えている。

 さて、Xの主張は認められるべきであろうか。判例、学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

  2.甲(男)と乙(女)は夫婦であったが、甲の不倫が原因で離婚することとなった。この離婚は家庭裁判所の調停によりなされたものであり、その調停の条項に従って、甲は自らが所有する土地および家屋を乙に譲渡し、登記の名義も甲から乙に変更した。

 この事例について、甲にはいかなる納税義務が発生するか(あるいは、全く発生しないのか)。土地および家屋の譲渡が慰謝料としてなされた場合、財産分与としてなされた場合のそれぞれについて、学説や判例の動向に留意しつつ、論じなさい。

   3. 法人税法第22条第2項は、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」と定める。何故、「無償による資産の譲渡又は役務の提供」からも「収益」が生ずるとされているのであろうか。判例、学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

  4. Xは酒屋を営む個人事業者である。或る日、所轄税務署から職員AがXの酒屋にやってきて、税務調査を行った。Aは所得税および消費税についての調査を行ったが、Xに対して帳簿および請求書等を提示するように求めたのに対し、Xは、それらを保存しているが帳簿以外は提示しないと答えた。Aは帳簿を調査したが、請求書等がなければXの申告が正しいかどうかわからないとして、その後も再三にわたって請求書等を提示するように求めた。これに対し、Xは、請求書等を保存していればよいのであって提示する義務はないと答えた。そのため、所轄税務署は、Xの消費税の申告について、仕入税額控除を認めない旨の更正処分を行った。Xは、この更正処分の取消を求め、適法な異議申立ておよび審査請求を経て裁判所に訴えを提起した。

 さて、Xの主張は認められるべきか。学説、判例の動向に留意しつつ、論じなさい。

 

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