税法・財政法試験問題集・その52

 

大東文化大学大学院法務研究科・租税法T(講義)2013年度本試験問題〔2013年7月26日出題〕

 

 ●次のT、Uより一問だけを選択し、解答して下さい(Uは2頁目です)。

 T.次の事例を読み、設問1〜3に答えてください。

 Xは内科医であり、平成10年より港区内でX内科クリニック(医院)を営んでいる。その娘のAは平成20年に医師国家試験に合格した後、しばらく母校の大学病院に勤務していたが、Xの意思などもあり、平成23年4月よりX内科クリニックでXとともに診療に従事している。また、同年9月にA名義の個人事業の開業届が所轄の税務署長に提出されている。AがX内科クリニックにて診療に従事し始めてから、減少傾向にあった患者数も増加に転ずるとともに、Aに固有の患者も来院するようになった。

 (なお、Aは平成23年3月にBと婚姻しているが、戸籍の筆頭者はAである。)

 平成24年3月、Xは、平成23年度分の所得税について、X内科クリニックの総収入および総費用をAと折半して確定申告をした。しかし、所轄税務署長は、平成25年の某日、Aを独立の事業者と認めず、Xの事業専従者と扱った上で、X内科クリニックの収入および費用がすべてXに帰属するものとして増額更正処分および加算税賦課決定処分を行った。これを不服として、Xは所轄税務署長への異議申立て(国税通則法第75条第1項第1号)を行った。その結果によっては国税不服審判所長に対する審査請求、さらに裁判所への提訴も検討している。

 〔設問1〕次に示す条件の場合、Xの請求(増額更正処分および加算税賦課決定処分の取消し)は認められるか。判例や学説に照らして論じてください。

 ・Xの夫婦とAの夫婦は同一の建物に住んでいる。この建物には、それぞれの夫婦の世帯ごとに独立した出入口はない。

 ・X内科クリニックの収入からは借入金の返済がなされ、その残りの部分についてXとAで按分しているが、その割合は明確に決められていない。

 〔設問2〕基本的な条件は〔設問1〕と同じであるとして、X内科クリニックにおいて、平成23年4月より現在に至るまで、XとAとで診療方法が異なり、また、Xの患者とAの患者とを明確に区別でき、どちらの診療による収入であるかを区分できる場合に、Xの請求は認められるべきか。判例や学説に照らして論じてください。

 〔設問3〕Xの夫婦とAの夫婦が同居しておらず、全く別の世帯であるとするならば、Xの請求は認められるべきであろうか。判例や学説に照らして論じてください。

 

 U.次の事例を読み、設問1〜3に解答してください。

 Xは弁護士であり、自ら弁護士事務所(弁護士法人ではなく、個人事務所である)を営んでいる。

 Xの平成23年分の収入は、次の通りである。

 @自ら経営する弁護士事務所に関する収入(但し、次のものを除く)=2000万円

 A複数の会社から受け取った顧問料収入=1000万円

 B母校のU私立大学法学部の非常勤講師として大学から得た報酬(2コマ分)=69万円

 平成24年3月上旬、Xは、次のような概要の確定申告をした。

 @について:事務員の人件費などを必要経費とする事業所得として。

 Aについて:給与所得として。

 Bについて:雑所得として。

 この申告に対し、F税務署長は、Aについては事業所得と認定し、Bについては給与所得と認定する趣旨の増額更正処分を行った。Xはこれを不服としており、争訟手続に入ろうと考えている。

 〔設問1〕XがAについて給与所得として申告するための主張または理由として、いかなるものが考えられるか。

 〔設問2〕XがBについて雑所得として認定するための主張または理由として、いかなるものが考えられるか。

 〔設問3〕以上を踏まえ、F税務署長による増額更正処分の妥当性について、判例、学説の動向に留意して論じてください。

 

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