行政法試験問題集・その21
国学院大学法学部「行政法T」2007年度後期試験問題〔2008年1月25日出題〕
●次の中から1問だけを選択し、解答しなさい。
(1)渋谷区に在住するAは、自分が住んでいる地区が準防火地域であることから、自己所有の土地に耐火構造の外壁を備えた鉄筋3階建ての賃貸マンションを建築した。この建物の外壁は、Bが所有する土地との境界線から5センチメートルしか離れていない。そのため、Bは、この建物が民法第
234条に違反するとして、Aに対し、境界線から50センチメートル以内の建物の収去を求めて訴えを提起した。Bの主張は認められるべきであろうか。判例や学説の動向に留意しつつ、論じなさい。なお、本件地域においては、民法第236条にいう慣習は存在しないものとする。参照条文
@建築基準法第65条 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。
A民法第234条 建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
2 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
(2)行政法における信義誠実の原則の適用について、学説や判例の動向に留意しつつ、論じなさい。
(3)A市は、パチンコ屋やマージャン店などを開業するには市長の同意を必要とするという内容の条文を盛り込んだ条例を制定し、施行している。業者Bは、この条例に違反し、パチスロ店を市内に開業しようとして、県公安委員会から営業許可を得て、また、A市建築主事から建築確認を得て、A市長の同意を得ないままに建設を開始した。A市は業者Bに対して建設中止命令を発したが、業者Bは建設を続行している。さて、A市は、業者に対して強制執行をなしうるか。なしえないとしたら、いかなる措置を執ることが可能か(なお、法律によれば、執行罰も直接強制もなしえないと解されることとする)。学説や判例の動向に留意しつつ、論じなさい。
参照条文 行政代執行法
第1条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。
第2条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
(4)要件裁量および効果裁量について、学説や判例の動向に留意しつつ、論じなさい。
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