行政法試験問題集・その25

 

国学院大学法学部「行政法T」2008年度後期末試験問題〔2009年1月23日出題〕

 

●次のうちのいずれか1問だけを選択し、解答しなさい。

T 東京都渋谷区に住むXは横浜市青葉区に本店を置くA社から土地を購入した。しかし、諸事情により、所有権移転登記を済ませていなかった。A社の経営状態は悪化し、ついに法人税などを滞納するに至った。Y(青葉税務署長)は滞納手続に入り、A社の機械を差し押さえようとしたところ、A社の社長Bは、Xに売却したはずの土地の登記の名義がA社のままであったことに気がつき、この土地を差し押さえるよう、Yに懇願した。これを受けてYはこの土地を差し押さえ、さらに、東京都目黒区に住むZを競落人とする公売処分を執行した(登記の名義人もZに変更されている)。そこで、Xは、Yを相手取り、滞納処分(滞納手続)・公売処分の無効確認を求めるとともに、Zを相手取り、本件土地の所有権返還を求める訴訟を提起した。

  この事件について、Xの主張は認められるべきであろうか。判例、学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

  参照条文:民法第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

U  N市は、パチンコ屋やマージャン店などを開業するには市長の同意を必要とするという内容の条文を盛り込んだ条例を制定し、施行している。業者Gは、大東文化大学の学生を目当てにゲームセンターを市内に開業しようとして、県公安委員会から営業許可を得て、また、N市建築主事から建築確認を得て、N市長の同意を得ないままに建設を開始した。N市は業者Gに対して建設中止命令を発したが、業者Gは建設を続行している。さて、N市は、業者に対して強制執行をなしうるか。なしえないとしたら、いかなる措置を執ることが可能か(なお、法律によれば、執行罰も直接強制もなしえないと解されることとする)。学説や判例の動向に留意しつつ、論じなさい。

  参照条文  行政代執行法

  第1条  行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。

  第2条  法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

V  行政行為の撤回について、判例や学説の動向に留意しつつ、論じなさい。なお、必ず、職権取消との違いについて述べること。

W  要件裁量および効果裁量について、学説や判例の動向に留意しつつ、論じなさい。

 

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