行政法試験問題集・その26

 

国学院大学法学部「行政法T」2009年度夏季休暇課題〔2009年7月23日出題。但し、7月20日掲載〕

 

注意事項

  (1)全問必答です。

  (2)提出方法および期限は、次の通りとします。

    @K-SMAPYの場合(こちらを原則とします):9月25日の16時まで。

    A紙による提出の場合:9月25日の講義の際に提出。

    B担当者の研究室へのメールによる提出の場合:9月25日の16時まで。  tosmori@ic.daito.ac.jp

  (3)書式については、とくに指定しません。

  (4)但し、次のいずれかのファイル形式で提出してください。

      Word 2007のファイル(拡張子はdocx.)

      Word 2003用のファイル(拡張子は.doc)

      リッチテキストファイル(拡張子は.rtf)

      テキストファイル(拡張子は.txt)

  注:@とくに断り書きのない限り、「憲法」は日本国憲法のことである。

    A選択式の設問(「妥当なものを選びなさい」、「妥当なものはどれか」などという設問)については、とくに断り書きのない限り、正答を一つだけ選ぶこと。二つ以上選んだ場合には誤答として扱う。

 

1.〔担当者作成。オリジナル問題〕

  (1)行政法に関する次の記述のうち、判例や学説に照らして妥当なものを選びなさい。

    @日本には、そのものズバリ、行政法という名称の法律があり、行政作用法、行政組織法、行政救済法のすべてに関する規定を盛り込んでいる。

    A憲法第65条は「行政権は、内閣に属する」と定めているが、行政権が担当する任務の活動全てが実質的な意味の行政であるという訳でなく、実質的な意味の立法に含まれるものや実質的な意味の司法に含まれるものも存在する。

    B憲法第65条は「行政権は、内閣に属する」と定めているから、内閣から完全に独立した行政機関は、憲法の下では全く存在しない。

    C日本において最初に権力分立主義(三権分立)を定めた憲法は大日本帝国憲法である。

    D行政活動には(大別して)規制行政と給付行政があり、前者(規制行政)は行政が自ら公的役務や公的施設の提供主体となって国民の生活基盤を形成するという性質を有する。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれを、正しい文章に直しなさい。

  (3)次の@〜Bについて、2、3行程度で説明しなさい。

    @行政作用法        A行政組織法        B行政救済法

 

2.〔年度不明、国家T種。設問形式などを改変〕

  (1)行政上の法律関係に関する次の記述のうち、判例に照らして妥当なものはどれか。

    @いわゆる4現業に勤務する一般職の国家公務員には公共企業団体等関係法およびいわゆる労働三法の適用があるから、その勤務関係は国家公務員法の適用される非現業の一般職の国家公務員のそれと異なり、基本的には私法上の労働契約関係である。

    A恩給法は公権たる恩給権の保護を目的としてこれを担保に供することを禁止しているものであるから、恩給権者たる債務者が債権者に恩給金の受領を委任し、債権者をしてその受領した恩給金を債務の弁済に充当させる契約は、実質的に恩給権に質権を設定する契約と同視されるべきものであり無効である。

    B国が国税滞納者の財産を差し押さえた場合における国の地位は民事執行法における差押債権者の地位に類するものであり、租税債権が公法上のものであることは国が一般私法上の債権者より不利益な取扱いを受ける理由とはならないから、国税の滞納処分による差押の関係においても民法177条の適用がある。

    C村民が村道を通行することができるのは、村民が村道通行権と称する公権を有するからではなく、村がこれを村道として開設していることの反射的効果であるから、個々の村民はたとえ第三者の不法な行為により村道の利用を継続的に妨害されても、当該第三者にこの妨害の排除を請求することはできない。

    D市議会の議員の報酬については市が議員に対してこれを支給しなければならない義務を負うものであって、これを受ける権利は公法上の権利であるから、条例に譲渡禁止の規定がなくとも、あらかじめこの権利を任意に譲渡することはできない。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

3.〔1995年国家U種。設問形式などを改変〕

  (1)法律による行政の原理に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

    @法律の法規創造力の原則とは、法律のみが法規を創造することができるという原則であり、これによれば、国民の権利義務に関する行政立法は、法律の授権なしに行われてはならないということになる。

    A法律の優位の原則とは、行政活動は法律の定めに違反して行われてはならないという原則であり、この原則はあらゆる行政活動について妥当するものとされている。したがって、法律の定めよりも厳しい内容の行政指導をすることは、すべてこの原則に反し許されないこととなる。

    B法律の留保の原則とは、一定の行政活動が行われるためには法律の根拠を必要とするという原則であり、その妥当する範囲については多くの考え方があるが、国民主権原理に立つ現行憲法の下では、すべての行政活動について法律の根拠を要すると解する全部留保説が通説である。

    C公務員の勤務関係、国立学校の利用関係のようないわゆる特別権力関係においては、法律による行政の原理がそのままでは適用されず、特別権力関係内部における処分の相手方は、当該処分について裁判所に救済を求めることができない。

    D違法な行政行為の取消しは、法律による行政の原理の要請するところであるから、それが不利益的処分であると授益的処分であるとを問わずに、処分庁は当該違法な処分を直ちに取り消さなければならない。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

4.〔2002年国家T種。設問形式などを改変〕

  (1)法律の留保に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

    @行政が私人の自由と財産を侵害する行為のみ法律の根拠を必要とする侵害留保説は、自由主義的イデオロギーに奉仕するものである一方で、実質的には国家の広範な活動を認めるものであるが、明治憲法下において通説となった見解であった。

    A行政の民主的コントロールを重視する権力留保説からは、非権力的行為であっても受益性の高い行政作用については法律の統制の下におく必要があるとされ、補助金の交付、福祉活動・文化活動の実施についても、それが国費の支出を要するものであるとする限りは法律の根拠が必要となる。

    B自由主義とともに民主主義をその重要な憲法原理とする日本国憲法下においては、権力的行政作用は国会のコントロールの下に置かれるべきであると解するのが通説であり、実際にも、このような権力留保説の考え方が行政においては徹底されている。

    C相手方の抵抗を排して実力を行使するような行政調査については、侵害留保説によっても権力留保説によっても法律の根拠が必要とされるが、相手方の任意の協力を待って行われる行政調査については、侵害留保説では法律の根拠は不要であるとされるが、権力留保説では法律の根拠が必要であるとされる。

    D自由主義的イデオロギーを重視する侵害留保説によっても、民主主義的イデオロギーを重視する権力留保説によっても、権力的行政作用については、その要件と効果について、法律で定める必要があるとされる。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

5.〔担当者作成。オリジナル問題〕

  (1)一般に政令指定都市という言葉が使われる。この政令指定都市についての根拠となる法律の条文を、●●法第▲▲条というように答えなさい(なお、政令指定都市は、この法律の条文では単に指定都市と表記されている)。

  (2)(1)で答えた条文によると、政令指定都市となるための人口要件はどのようなものであるか。■■人以上という形で答えなさい。

  (3)2009年8月1日現在で、政令指定都市とされている都市の名前を全てあげなさい。また、どこの都道府県にあるかも併せて答えなさい。

  (4)政令指定都市には区が置かれることとなっているが、この区と特別区とはどのように異なるのか。2、3行で説明しなさい。

 

6.〔1999年度国家U種。設問形式などを改変〕

  次の文章を読んで、設問に答えなさい。

  伝統的な行政法理論では、国は【A】という性格において、私人と相対立する1個の法人格と考えられる。しかし、現実には、この行政主体の権利義務の行使は数多くの【B】の手によって行われる。この【B】とは、伝統的な行政組織法理論においては、【A】の内部組織の構成員のそれぞれに法令によって与えられている各種の権限と責務の帰属点、すなわち行政組織内部の各種のポストのことを意味する。そしてこれらの【B】の中で、特に法令上、【A】のために自己の名において【A】の具体的意思を決定し表示する権限を与えられているもののことを、地方公共団体などをも含めて広く【A】 一般についていう場合には【C】とよんできた。

  従って、【C】とは、たとえば、法律上課税処分を行う権限を与えられた税務署長や、営業許可を与える権限を有する都道府県知事がこれにあたる。

  ところで、【C】は、財務省、税務署、県庁といった、いわゆる行政官署とは意味を異にする。これらの行政官署は、通常その長を【C】とし、その職務を助ける多くの【D】を含めて構成される、1つの事務配分の単位としての性質を持っている。

  国家行政組織法では、このような行政官署のうち一定のものが、法律上【B】の名でよばれているが、この法律でいう【B】の概念は、伝統的な理論でいう【B】の概念とは意味合いを異にするから、通常次に「国家行政組織法にいう【B】」と称して理論的に区別している。

  (1) 上の【A】、【B】、【C】、【D】に適切な言葉を入れなさい。

  (2) 上の【A】、【B】、【C】、【D】のそれぞれについて、教科書などを参照して、2行か3行程度で説明しなさい。

 

7.〔2004年度特別区。設問形式を改めた〕

  (1)行政庁の権限の委任、権限の代理又は専決に関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか。

    @権限の代理のうち、授権代理は、本来の行政庁が授権行為を行うことによって代理関係が生じるもので、権限全部の授権代理は認められない。

    A行政機関は、自己の権限のうち、主要な権限部分を下級行政機関又はその他の行政機関に委任することができる。

    B権限の代理では、代理機関が本来の行政庁の権限を自己の権限として行使し、その行為は当該代理機関の行為として効果を生じる。

    C権限の委任は、法律上の権限の分配を変更するものではないので、法律の根拠がなくても可能である。

    D専決は、本来の行政庁が補助機関に決済の権限を委ねるもので、対外的には当該補助機関の名で権限が行使される。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

8.〔2004年度東京都。設問形式などを改変〕

  (1)法規命令又は行政規則に関する記述として、妥当なのはどれか。(平成16年度東京都)

    @現行憲法では、法規命令として、法律を実施するための執行命令、法律の委任に基づく委任命令の他、行政機関が法律に基づくことなく独自の立場で制定する独立命令が認められている。

    A法規命令が有効に成立するためには、その主体、内容及び形式について、法の定める要件に合致していなければならないが、公布はその要件とされていない。

    B執行命令を制定するには、法律の一般的な授権だけでは足りず、法律の個別具体的な授権が必要である。

    C行政規則は、告示、訓令、通達のうちいずれかの形式により発しなければならず、他の形式で発することはできない。

    D最高裁判所は、墓地・埋葬等に関する通達の法的効力が争われた事件で、通達は原則として法規の性質を有するものではなく、国民は通達の取消訴訟を提起することはできないと判示した。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

9.〔1996年度国税。設問形式などを改変〕

  (1)行政立法に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

    @執行命令は委任命令と異なり、権利義務の内容を新たに定立するものではなく、具体的な法律の根拠も必要でないとされていることから、法規としての性質を有しない。

    A法令の解釈基準として上級行政機関から発せられた通達は、下級行政機関を拘束するものであり、通達に示された解釈に従ってなされた行政処分の適法性の判断にあたっては、裁判所は当該通達の内容を考慮する必要がある。

    B通達は原則として法規の性質をもつものではないが、通達の内容が国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、その法規性が認められる余地があるとするのが判例である。

    C監獄法は被勾留者の外部のものとの接見を原則として許し、例外的に合理的な制限を認めているにすぎず、同法の委任を受けた監獄法施行規則が原則として幼年者との接見を許さないとしたのは、その委任の範囲を超え無効であるとするのが判例である。

    D学校教育法施行規則に基づいて作成される学習指導要領は、教育における機会均等の確保の全国的な一定水準の維持の目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的基準にすぎず、法規としての性質を有しないとするのが判例である。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

10.〔2004年度国家T種〕

  法規命令に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみをすべてあげているのはどれか。

  ア  判例は、銃砲刀剣類登録規則は銃砲刀剣類所持等取締法の執行命令であり、その制定に当たって、行政庁の専門技術的な裁量権を認めることはできないから、同規則において同法の登録の対象となる「美術品として価値のある刀剣類」を日本刀に制限することは許されないとした。

  イ  判例は、銃砲刀剣類登録規則が銃砲刀剣類所持等取締法の登録の対象となる刀剣類を日本刀に制限したことについて、登録の対象範囲という登録制度の基本的事項については法で定めるべきものであって、同法が外国製刀剣類を除外していない以上、鑑定基準として登録の対象範囲を日本刀のみに限定することは、法による委任の趣旨に反するといわざるを得ないとした。

  ウ  判例は、14歳未満の者と在監者との接見禁止を定めた監獄法施行規則は、被勾留者の接見の自由を著しく制約するものではあるが、監獄の長に幼年者と被勾留者との接見を制限する権限を与えたものにすぎないから、同規則に基づき、接見を不許可とした拘置所長の裁量権の逸脱・濫用の有無が問題になることは格別、同規則が監獄法第50条による委任の範囲を超えるものとまではいえないとした。

  エ  「規則の制定又は改廃に関する意見提出手続」(平成11年3月23日閣議決定)によれば、行政機関が規制の設定又は改廃にかかる政省令等を策定しようとする場合に、当該政省令等の案を広く利害関係人に知らせるものとし、その上で、各行政機関は、当該政省令等の案に関して述べられた利害関係人の意見を斟酌しなければならないものとされている。

  オ  「規則の制定又は改廃に関する意見提出手続」(平成11年3月23日閣議決定)によれば、行政機関が規制の設定又は改廃にかかる政省令等を策定しようとする場合に、当該行政機関は、最終的な決定を行う前に広く国民に対してその案を公表して意見の募集を行った上で、提出された意見を考慮して意思決定を行い、提出された意見に対する当該行政機関の考え方を取りまとめ、提出された意見と併せて公表するものとされている。

  @ア、エ

  Aイ、ウ

  Bウ、オ

  Cエ

  Dオ

  〔参考〕

  ●監獄法

  第50条  接見ノ立会、信書ノ検閲其他接見及ヒ信書ニ関スル制限ハ法務省令ヲ以テ之ヲ定ム

  ●銃砲刀剣類所持等取締法

  (登録)

  第14条  都道府県の教育委員会は、美術品若しくは骨とう品として価値のある火縄式銃砲等の古式銃砲又は美術品として価値のある刀剣類の登録をするものとする。

 

11.〔1999年度特別区。設問形式などを改変〕

  (1)行政法学上の行政規則についての記述で妥当なものを選べ。

    @行政規則は地方公共団体の長が、法律上定められた長の専決事項について定めたものである。

    A行政規則は国民の権利や義務に直接法的影響を及ぼすもので、その制定に関し法律の授権を必要とする。

    B行政規則は法条の形式に定められた告示、訓令および指令のことで、それぞれ公示しなければ効力を得ない。

    C政令は行政規則に属するもので、国会の制定する法を法律とよぶのに対し、行政権の定立するものの総称をよぶ。

    D通達は行政規則に属するもので、行政機関が通達に反する行為を行っても、それだけで直ちに違法・無効ということにはならない。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

12.〔2001年度国家T種。設問形式などを改変〕

  (1)行政規則に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

    @行政規則とは、行政機関の定立する定めで外部効果を有しないものというのが本来の定義であるが、現実にはこの定義に反して行政規則が相当程度の外部効果を有する場合も多いため、その定立にはすべて個別の法律の根拠が必要とされる。

    A国立大学の学生が学則違反により退学処分に付された場合には、当該処分は司法審査の対象となるが、当該処分の根拠となった学則は大学内部においてのみ効果を有するものであるから、裁判所が、当該処分の違法性を判断するに当たり、当該学則をその評価基準とすることはできない。

    B行政庁に一定の裁量権が与えられている場合には、その行使に当たり内部的な基準を設けることがあるが、これに強い拘束性を認めることは実質的に法律の委任なくして委任立法と同じ効果を有することとなるから、行政機関がこのような内部的基準と異なった判断をすることは全くの自由であり、そのことをもって違法性の問題が生ずることはない。

    C住宅建築や宅地開発の適正化を図るに当たって、現行法令に基づく規制では十分でない場合には、地方公共団体は行政指導に頼ることとなり、指導要綱と呼ばれる基準を定立することがあるが、この要綱は行政指導の基準にすぎず、権力的な法行為の根拠となるものではないから、その要綱から逸脱した行政指導が違法であるとして損害賠償を求めることはできない。

    D行政の統一性を確保するために、上級行政機関は、下級行政機関に対する通達という形式で法令解釈の基準を定立することがあるが、このような基準定立権は、行政組織法論上、上級行政機関の有する指揮監督権に当然含まれるものであり、現行の国家行政組織法第14条第2項は確認規定にすぎない。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

13.〔2003年度国税。設問形式などを改変〕

  (1)行政上の計画に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。(平成15年度国税)

    @行政上の計画の策定は、専門技術的知識を要すること、社会情勢の変化に応じて変更され得ることなどから、行政機関の裁量にゆだねられることが多いが、国民に対し、権利制限的な法効果を有する計画の策定については法律の根拠が必要である。

    A行政上の計画の策定には、行政機関に広範な裁量が認められることから、計画の策定手続において利害関係を有する住民の意見を聞く等、計画の策定手続に参加させることが重要であり、このような利害関係者の参加手続を経ない計画は、行政手続法に反し無効となる。

    B都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業計画の決定は、公告された後においても、施行地区内の土地の所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものではないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないとするのが判例である。

   C土地区画整理法に基づく土地区画整理事業計画が公告されると、施行地区内において宅地、建物等を所有する者は、土地の形質の変更、建物等の新築、改築、増築等につき一定の制限を受けることから、当該事業計画は、公告された段階で抗告訴訟の対象となる行政処分となるとするのが判例である。

    D地方公共団体の計画した施策により、特定の者に、当該施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的具体的な勧告、勧誘があったとしても、当該施策が変更されることは社会情勢の変動等によりあり得ることであり、当該施策への信頼に対しては、およそ法的な保護を与える必要はないとするのが判例である。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

14.〔1991年度国家U種、設問形式などを改変〕

  (1)行政行為の概念に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

    @行政行為であるか否かはその対象が一般的であるか個別的であるかによって決まるから、一般的・抽象的な行政立法でもその対象が特定範囲の人に向けられた場合には行政行為に含まれる。

    A行政行為は行政庁のなす行為で法的効果を伴うものであるから、国民と行政庁が協議し両者の合意によって権利・義務について取り決める公法上の契約も含まれる。

    B行政行為は行政庁が国民の権利・義務を一方的判断で決定する行為であるから、営業免許のように私人の申請を待って免許の付与を決定する行為は行政行為に含まれない。

    C行政行為は国民の権利・義務に影響を与えるものであるが、必ずしも法的効果を伴うものに限られないから、国民に対し任意的な協力を求める行政指導であっても、国民の権利・義務に事実上の影響を与える場合は行政行為に含まれる。

    D行政行為は行政主体と国民との間の権利・義務に直接かかわるものであるから、国などの行政機関相互の協議、同意などの内部的行為は行政行為に含まれない。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれを、正しい文章に直しなさい。

 

15.〔2002年度特別区。設問形式などを改変〕

  (1)行政法学上の法律行為的行政行為である命令的行為又は形成的行為に関する記述として、妥当なのはどれか。

    @命令的行為である下命は、一定の作為、給付又は受忍を命じる行為であり、その例として農地法による権利移動の許可がある。

    A命令的行為である許可は、作為、給付又は受忍の義務を特定の場合に特定人に解除する行為であり、その例として医師法による医師免許がある。

    B命令的行為である免除は、一般的禁止を特定の場合に特定人に解除する行為であり、その例として学校教育法による就学義務の猶予・免除がある。

    C形成的行為である特許は、一定の権利又は権利能力を設定する行為であり、その例として公有水面埋立法による公有水面の埋立免許がある。

    D形成的行為である認可は、第三者の法律行為を補充してその法律上の効果を完成させる行為であり、その例として道路交通法による自動車運転免許がある。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれを、正しい文章に直しなさい。

 

16.〔1992年度国家U種。設問形式などを改変〕

  (1)講学上の許可、特許および認可に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

    @認可は、他の法主体の法律的行為の効果を補充し、これを完成させる行為であり、認可を受けないでした行為は原則として無効である。

    A許可を受けるべき行為を許可を受けないでした場合は、禁止違反として強制執行または処罰の対象となるのみならず、当該行為は原則として無効である。

    B特許は、公権力により権利能力、行為能力、特定の権利または包括的な法律関係を設定するものであるから、私権を設定する行為は特許の対象とはならない。

    C許可は、一種の命令的行為で、一般的な禁止を特定の場合に解除し、適法に一定の行為をする自由を回復する行為であり、その対象は事実的行為に限られる。

    D認可は、他の法主体の法律的行為の効力を補充し、これを完成させる行為であるから、認可の対象となる行為に取消原因がある場合でも、当該行為の効力は認可により確定し、当該法主体は取り消すことができない。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれを、正しい文章に直しなさい。

 

17.〔2003年度国家T種、設問形式などを改変〕

  (1)行政行為の効力に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

    @行政行為は、たとえ違法であっても、取消権限のある行政機関によって取り消されるまでは効力を否定されない公定力を有しているとされ、当該行政機関の基幹的な要件ないし内容に誤りがあるだけでは無効とならず、無権限の国家機関が発した行政行為及び内容が不明確で実現不可能な行政行為に限り、無効となるにすぎない。

    A行政行為については、取消訴訟の排他的管轄が行政行為一般に通じる制度として設定されており、当該行政行為を原因とする国家賠償請求訴訟についても、行政行為の違法性の審理、判断がなされるため、先に行政行為の取消訴訟を提起し、当該行政行為の違法を確認した後でのみ国家賠償請求訴訟を提起することができる。

    B行政行為の内容を早期に実現することは公益に適合するものであるため、行政行為には一般的に自力執行力があると解されており、行政行為の自力執行について特段の法律上の根拠がない場合であっても、相手方の意思に反して行政行為の内容を実現することができる。

    C行政行為には、その効果の早期確定のため、一定期間を経過すると私人の側から裁判上争うことができないという不可争力を法律により付与することができるが、当該期間が極端に短い場合は当該法律が憲法第32条に定める裁判を受ける権利を侵害するものとして違憲になることもあり得る。

    D行政行為には、これを行った行政機関の側においても変更することができない不可変更力があるものと解されているが、公共の利益に適合した行政行為の実現の観点から、不可変更力はあくまで例外的に認められるにすぎず、例えば審査請求に対する裁決のような争訟裁断作用として行われる行政行為については、不可変更力は認められないとする点で学説は一致している。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

18.〔2001年度国家T種。設問形式などを改変〕

  (1)行政行為の効力に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

    @行政行為に公定力が認められるのは、法律による公権力の行使であるという理由で適法性が推定されるためであるが、国家賠償請求には行政行為の公定力は及ばないとされており、違法な行政行為によって損害を受けた者は、当該行政行為の取消しを経なくとも、損害賠償を請求することができる。

    A周辺住民が、施設の設置に関する許認可等の取消を経ずに、当該施設の設置について民事上の訴えによって差止めを求める余地はないが、施設の設置に関する許認可等の効力に反する行為をして刑事訴追を受けた者が、刑事訴訟において、当該許認可等の取消しを経ずに、その違法を理由として無罪を主張することは許される余地がある。

    B義務を課す行政行為には、行政目的の早期実現を図る観点から、執行力が認められており、相手方がその義務を履行しない場合には、強制執行を認める特別の規定がないときであっても、裁判を経ずに、行政庁の判断において行政行為の内容を実現することができる。

    C行政事件訴訟法に定められた出訴期間を経過すると、法律関係の早期安定を図る観点から、私人の側が裁判上行政行為の取消しを求めることはできなくなるが、行政庁が職権でこれを取り消すことは妨げられない。

  D行政不服審査法上の不服申立てに対する裁決のように実質的に法律上の争訟の裁判の性質を有する行政行為は、裁決庁が自らこれを取り消すことはできず、裁決庁がこれを取り消したとしても、その取消行為自体は当然に無効となる。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

19.〔年度不明、国家T種。設問形式などを改変〕

  (1)行政行為の効力に関する次の記述のうち、通説に照らして妥当なものはどれか。

    @行政行為は公定力を有するから、行政行為に重大かつ明白な違法がある場合にその無効を主張するためには、まず、行政事件訴訟によって無効の確認を得なければならないが、その際に出訴期間の制限はない。

    A行政行為は公定力を有するから、違法な行政行為によって損害を受けた場合でも、当該行政行為の取消を得た後でなければ損害賠償請求をすることはできない。

    B行政行為は、行政事件訴訟法に定められた出訴期間を過ぎれば不可争力を生ずるから、その期間の経過後には行政庁も行政行為を職権で取り消すことができなくなる。

    C行政行為は不可変更力を生ずる場合があり、実質的にみて法律上の争訟の裁判の性質を有する裁決のような行政行為は、特別の規定がない限り、裁決庁は自ら職権でこれを取り消すことはできない。

    D行政行為は執行力を有するから、法律上特別の規定がなくても、行政庁はその判断に基づき、聴聞等の手続を経て自力で行政行為の内容を実現することができる。

  (2)上の選択肢で妥当なものとして選んだもの以外の選択肢のそれぞれについて、妥当でないと考えられる理由を2、3行程度で記しなさい。

 

戻る