行政法試験問題集・その28

 

国学院大学法学部「行政法T」2010年度夏季休暇課題〔2010年7月22日出題。但し、早めに掲載〕

 

  ●次の〔1〕および〔2〕に記されている事例を読み、後の設問に答え、論じてください。なお、設問の全てに解答すること。

  〔1〕Pは、大学卒業後、父親Qが六本木で経営するライブハウスに勤めており、しばらくしてからQの病気のためにPが実質的に経営をするようになった。或る日、Qが死亡し、Pが完全に経営を行うようになった。

  Qが死亡するまで、事業所得に関する青色申告はQの名義で行われていた(所轄税務署長の承認を受けている)。Qの死亡後、Pは自己の名義で青色申告を行った。Pは青色申告の承認を受けていなかったが、どういう訳か所轄税務署長はP名義の青色申告書を受理していた。これが数年間続いたのであるが、所轄税務署長は、或る年になって、 Pが提出した2年分の青色申告の効力を否認し、白色申告とみなして更正処分を行った。Pは、この更正処分の取消を求め、審査請求などを経て出訴した。

  〔2〕パチンコ屋やゲームセンターなどを経営するTは、B市にA競輪場(A市が運営している)の場外車券売場を建設する計画を建てた。この場外車券売場は、Tが所有する土地の上にBが所有する建物を建て、それをA市に賃貸し、A市が車券を販売するというものである。競輪事業の売上減少と赤字に苦しむA市は、このTの計画に期待をかけ、自らA競輪場B場外車券売場設置計画を立てた。その内容は、Tに対して場外車券売場の建物を賃借し、そこで車券を販売し、売上の5%ほどをTに賃借料として支払うというものである。また、Tは、経済産業大臣から場外車券売場設置許可を得た。

  しかし、B市は場外車券売場設置計画に反対し、経済産業大臣を相手取って場外車券売場設置許可の取消を求める訴訟を提起した。また、B市民の多くも場外車券売場設置に反対し、A市内での抗議活動なども行われた。おりしもA市で市長選挙が行われ、場外車券売場設置計画を推進してきた現職市長が敗れた。新市長は、この計画の推進を白紙に戻すこととした。B市やB市民からは歓迎されたが、場外車券売場設置の準備を進め、一部着工していたTは、結局中止せざるをえなくなったなどとして、A市に対して損害賠償を請求する訴訟を起こした。

  設問1  〔1〕の事例と〔2〕の事例は、或る原則の適用の有無という点において共通する部分がある。それは何か。

  設問2   〔1〕の事例、〔2〕の事例のそれぞれについて、何故、或る原則の適用が問題となるのか。

  設問3  〔1〕の事例について、最高裁判例によれば、或る原則が適用されるためにはいかなる条件が必要か。その条件を示している最高裁判所の判決を見つけ、出典を明示した上で(例:最判平成21年1月15日民集63巻1号46頁)正確に引用しなさい。

  設問4  〔1〕の事例について、最高裁判例によれば、或る原則は適用されるか。また、それに対してあなたはどのように考えるか。

  設問5  〔2〕の事例について、最高裁判例によれば、或る原則は適用されるか(参考となりうる判決を示すこと)。適応の有無について〔1〕の事例と結論が異なる場合には、その理由は何処に求められるか。

  設問6  〔2〕の事例について、あなたはどのように考えるか。

  ●字数・枚数:全体で3000字以上とします。設問ごとの字数制限は設けません。

  なお、次の点に注意してください。

  1.パソコン、ワープロでレポートを作成する際には、A4の用紙を使用してください(その他の用紙では受け取れないことがありえます)。また、1行あたりの字数と1頁あたりの行数を明示してください(1頁について40字×40行が望ましいです)。

  2.パソコン、ワープロを使用しない場合には、必ず原稿用紙を使用してください。レポート用紙、ルーズリーフなどを使用した場合には採点しません。また、万年筆かボールペンで記すこと。鉛筆は御遠慮願います。

  3.参考文献を明示してください。なお、六法などの法令集、辞書、判例集などは参考文献にならないので注意してください。

  ●提出方法

  @K-SMAPYのレポート提出機能を原則とします。9月24日(金)の1430分を締め切りとします。

  A但し、この機能を使えない場合には、9月24日の講義の際に提出していただきます。教卓の上に置いてください。

  ●その他の注意

  レポートの提出がない場合には、単位の認定をしません。また、教科書や参考文献、さらにホームページなどの丸写しなどで終わっているものは未提出とみなします。

  自分の力で考え、表現してみましょう。

 

戻る