行政法試験問題集・その29

 

国学院大学法学部「行政法T」2010年度期末試験問題〔2011年1月28日出題〕

 

 ●次のT〜Vから1つだけを選択し、解答しなさい(2問以上回答した場合は0点とします)。

T.次の事例を読み、Xの主張が認められるべきであるかにつき、判例、学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

  A橋では、とくに忘年会シーズンになると飲酒運転をする者が多く、それが原因の交通事故も多発している。そこで、県警はA橋で交通違反取締りを目的とする自動車検問を行った。運転手Xは、警察官の合図に従って車を停止させた。その際、Xは運転免許証を警察官に呈示したが、酒の臭いがするので警察官はXに降車を求め、交番にXを同行させたところ、飲酒検知によってXが酒気帯び運転を行っていたことがわかり、Xは検挙された。これに対し、Xは、この検問が何の法的根拠もなく行われた違法なものであるから、飲酒検知によって得られた証拠は証拠能力を欠いている、などとして無罪を主張している。

  さて、この事件について、Xの主張は認められるべきであろうか。判例、学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

U.行政行為の理由の提示について論じなさい。

  参照:行政手続法

  (理由の提示)

  第八条 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。

  2 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。

  (不利益処分の理由の提示)

  第十四条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。

  2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。

  3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。

V.次の事例を読み(参照条文も読むこと)、判例、学説の動向に照らしつつ、要件裁量、効果裁量について論じなさい。

  国家公務員のTは、六本木の某店で酒を飲み、同じ店で飲んでいたタレントのMを殴り、顔面などに全治2か月の重傷を負わせた。このため、Tは懲戒免職処分を受けた。これに対し、Tは、Mが皿を投げつけたりジョッキを持って殴りかかってきたから応戦したのであって正当防衛であったと主張し、懲戒免職処分は重すぎ、違法であると主張している。

  参照:国家公務員法第82条第1項    職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

  一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合

  二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

  三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

 

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