行政法試験問題集・その32

 

大東文化大学法学部法律学科「行政法1」2011年度期末試験問題〔2012年1月27日出題〕

  

●次の中から1問だけを選択し、解答しなさい。

  T  坂戸市に住むXは鶴ヶ島市に本店を置くA社から土地を購入したが、諸事情により、所有権移転登記を済ませていなかった。A社の経営状態は不安定な状態が続き、ついに法人税などを滞納するに至った。川越税務署長は滞納手続に入り、A社の機械を差し押さえようとしたが、A社の社長Bは、Xに売却したはずの土地の登記の名義がA社のままであったことに気がつき、この土地を差し押さえるよう、川越税務署長に懇願した。これを受けて同税務署長Yはこの土地を差し押さえ、さらに、ふじみ野市に住むZを競落人とする公売処分を執行した(登記の名義人もZに変更されている)。そこで、Xは、Y(国)を相手取り、滞納処分(滞納手続)・公売処分の無効確認を求めるとともに、Zを相手取り、本件土地の所有権返還を求める訴訟を提起した。この事件について、Xの主張は認められるべきであろうか。判例、学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

  〔参照条文〕民法第177  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

  U  銃砲刀剣類所持等取締法第14条第1項は「都道府県の教育委員会は、美術品若しくは骨とう品として価値のある火縄式銃砲等の古式銃砲又は美術品として価値のある刀剣類の登録をするものとする。」と定める。これを受けて、銃砲刀剣類登録規則(文部科学省令)第4条第2項は「刀剣類の鑑定は、日本刀であつて、次の各号の一に該当するものであるか否かについて行なうものとする。」と定める(第1号ないし第4号は省略)。規則の第4条第2項は法律の第14条第1項に照らし、問題はないのであろうか。判例、学説の動向に照らしつつ、論じなさい。

  V  行政事件訴訟法第30条は「行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。」と定める。判例や学説の動向に留意しつつ、行政庁の裁量処分に対する司法審査の方法について論じなさい。

  W  水道法第15条第1項は「水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。」と定めている。この「正当の理由」とはいかなる場合を指すのか。判例、学説の動向に照らしつつ、論じなさい。

 

 

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