行政法試験問題集・その36

 

大東文化大学法学部法律学科「行政法1」2012年度前期試験問題〔2012年7月27日出題〕

 

  ●次の中から1問だけを選択し、解答しなさい。

   1.下に掲げた建築基準法第65条と民法第234条との関係について、判例・学説に照らしつつ、論じなさい。なお、民法第236条にいう「慣習」は存在しないものとしてください。

  建築基準法第65  防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。

  民法第234条第1項  建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。

  同第2項  前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

   2.東松山市に住む国家公務員の甲は、休日に自らが支持する政党の機関紙を自宅付近の町で配達していた。この件で、甲は国家公務員法第102条第1項(罰則は同第110条第1項第19号)および人事院規則14-7(政治的行為)に違反するとして逮捕された。甲は、国家公務員法第102条第1項が憲法に違反するから自分は無罪であると主張している。果たして、この主張は認められるか。判例・学説に照らして論じなさい。但し、あくまでも行政法の問題として論じること。

  国家公務員法第102条第1項  職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

   3.仏教のA宗派とB宗派の間で激しい対立があり、A宗派の寺院が経営・管理する墓地への埋葬の請求に対し、その請求者がB宗派の信者であることを理由に拒否するという事例が多発した。そこで、或る年に、K省公衆衛生局環境衛生部長は各都道府県指定都市衛生主管部に対し「通達」を発した。その内容は、埋葬の請求者が他の宗派の信者であることが墓地、埋葬等に関する法律第13条にいう「正当の理由」に該当しないというものである。A宗派のX寺院は、この通達によって異宗派の埋葬を受け入れざるをえず、これに従わなければ埋葬が刑罰によって強制されるなどとして、新たな通達の取消しを求めて出訴した。

   X寺院の請求は認められるべきであろうか。判例・学説に照らしつつ、論じなさい。

  墓地、埋葬等に関する法律第13  墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。

  同第21条第1項  左の各号の一に該当する者は、これを千円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

    一  第三条、第四条、第五条第一項又は第十二条から第十七条までの規定に違反した者

     (第二号は略)

  4.行政行為の公定力について、判例・学説に照らしつつ、論じなさい。

 

 

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