行政法試験問題集・その50

 

大東文化大学法学部「行政法1」2015年度前期試験問題〔2015年7月30日出題〕

 

 

●次の中から一題のみを選択し、解答しなさい。

 1.平成2311月1日、大東文化大学の学生Aは某駅付近で自転車を運転していたが、四つ角で出会い頭に歩行者Bと衝突し、Bに大怪我を負わせた。BはX市立市民病院に搬送され、一週間の入院治療を受けた。Bの診療費等の負担について、X市に提出された入院証書の連帯保証人の欄にはAの親であるYの印影が示されていた。そこで、X市は、Yに対して診療費等の支払を請求する訴訟を、平成27年6月1日に提起した。これに対し、Yは、東松山市の診療費請求権が時効により消滅するとして、消滅時効の援用を主張した。この事件で、X市の請求は認められるべきか。学説・判例の動向に照らしつつ、論じなさい。

 【参照条文】 地方自治法第236条第1項:「金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、五年間これを行なわないときは、時効により消滅する。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。

 地方自治法第244条第1項:「普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。」

 民法第170条:「次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。

  一 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権

  二 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権」

 2.Y市は、倉庫業を営んでいるX社が所有する倉庫のうちの二軒(以下、本件倉庫)を一般倉庫として扱い、平成7年度よりX社に対して固定資産税等納税通知書を送り、固定資産税および都市計画税(以下、固定資産税等)を課していた。ところが、平成26年にY市の職員が再調査したところ、本件倉庫が一般倉庫ではなく冷凍倉庫であることが判明した。そこで、Y市は、地方税法第417条に基づき、平成26年7月15日付で、平成22年度から平成26年度までの各年度分の固定資産課税台帳に登録された評価を減額修正し、その旨をX社に通知した。また、この5年分については過納金を返還した。しかし、Y市は、平成21年度以前の固定資産税等に係る賦課決定については同法第17条の5第5項によって期間制限を受けるために修正できず、従って課税処分を取り消すことができないこと、および、過納金については根拠規定を欠くので返還できないという旨も通知した。

 X社は、Y市を被告として、平成7年度から平成21年度までの過納金相当額の支払を求める国家賠償請求訴訟を提起しようと考えている。この分の課税処分の取消は求めないものとして、X社の国家賠償請求は認められるべきか。学説・判例に照らしつつ、論じなさい。

 3.行政行為の無効と取消について、学説や判例の動向に照らしつつ、論じなさい。

 

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