行政法試験問題集・その51
大東文化大学法学部「行政法1」2015年度後期試験問題〔2016年1月28日出題〕
●次の中から一題のみを選択し、解答しなさい。
T.次の事例を読み(別紙参照条文も読むこと)、判例、学説の動向に留意しつつ、要件裁量、効果裁量について論じなさい。
Y市に勤務する職員Xは、部下のAおよびBに対してセクハラ行為などを繰り返していたとして、Y市長から懲戒免職処分を受けた。Xは、事実誤認があるなどとして懲戒免職処分の取消を求めて出訴した。なお、Xは、AがXからセクハラを受けた旨の虚偽の記事をブログに掲載したとしてAに対し損害賠償などを求める訴訟を別に提起したが、AはXから実際にセクハラを受けたとして反訴し、Xの主張は認められず、Aの主張が認められ、XがAに対して損害賠償を支払うように命ずる判決が出されている。
参照条文 地方公務員法第29条第1項:(職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
U.水道法第15条第1項は「水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない」と定める。この「正当の理由」について、判例、学説の動向に留意しつつ、論じなさい。
V.行政手続法第8条および第14条を読み、判例、学説の動向に留意しつつ、行政行為の理由の提示について論じなさい。
(理由の提示)
第8条 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。
2 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。
(不利益処分の理由の提示)
第14条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。
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