行政法試験問題集・その57

 

大東文化大学法学部「行政法1」・「行政法1B」2016年度後期末試験問題〔2017年1月26日出題〕

 

 

●次の中から一題のみを選択し、解答しなさい。

 一 産業廃棄物処理業者のYは、X市内に廃棄物処理施設(本件施設)を設置し、使用を開始した。X市とYは、平成17年に本件施設に関し、使用期限を平成251231日までとすること、Yはこの期限を超えて産業廃棄物の処分を行ってはならないこと、などを内容とする公害防止協定を締結した。しかし、Yは平成26年になってからもなお本件施設を使用していたので、X市は、Yの本件施設使用の差止を求める訴訟を提起した。X市の請求は認められるべきであろうか。学説や判例の動向に照らしつつ、論じなさい。

 二 Xは、某郡某村A地区で小規模ながら入院可能な設備を有する内科医院を経営している。或る日、このA地区がY県告示により、工業地域に指定された。これを知ったXは、都市計画法第9条第11項、建築基準法第48条第11項、同法別表第二(る)により、A地区に病棟などを建築することができなくなるとして、工業地域の指定の無効確認などを求める訴訟を提起した。Xの請求は認められるべきであろうか。学説や判例の動向に照らしつつ、論じなさい。

 三 P市は、パチンコ屋やラブホテルなどを開業するには市長の同意を必要とするという内容の条文を盛り込んだ条例を制定し、施行している。業者Qは、P市内にパチンコ屋を開業しようとして、県公安委員会から営業許可を得て、また、P市建築主事から建築確認を得て、P市長の同意を得ないままに建設を開始した。P市は業者Qに対して建設中止命令を発したが、業者Qは建設を続行している。さて、P市は、業者に対して強制執行をなしうるか。なしえないとしたら、いかなる措置を執ることが可能か(なお、法律によれば、執行罰も直接強制もなしえないと解されることとする)。学説や判例の動向に留意しつつ、論じなさい。

 参照 行政代執行法より 

第1条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。

第2条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

 四 以下に示す条項を読み、判例、学説の動向に留意しつつ、行政行為の理由の提示について論じなさい。

 行政手続法第8条第1項:「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。」

 同第14条第1項:「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。」


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