行政法試験問題集・その71

 

大東文化大学法学部「行政法1」・「行政法1A」2018年度前期末試験問題〔2018年7月26日出題〕

 

●次の問題の中から1題だけを選択し、解答しなさい(2題以上について解答した場合には採点しない。なお、解答用紙に選択した問題番号を記すこと)。

 1.XはA社から甲土地を購入したが、何らかの事情により登記を移さなかった(従って登記簿における所有者の名義はA社のままであった)。A社は元々経営状況が芳しくなく、ついに法人税を滞納するに至った。そこで、A社の本社所在地を所轄するY1税務署長は、国税徴収法第47条以下に従い、甲土地をA社が所有する物件として滞納処分を行い、次いで換価・公売を行った。その結果、Y2が甲土地を競落し、登記名義もY2となった。これに対し、Xは、甲土地の本来の所有者がX自身であるとして、Y1に対して滞納処分などの一連の処分等の無効確認を求め、Y2に対して所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴訟を提起した。

 Xの請求は認められるべきか。判例・学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

 参照 民法第177条:「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 2.行政規則の法的性質について、判例・学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

 3.Xは平成元年からY市内にA土地を所有しており、Y市に対して固定資産税を納めていた。ところが、平成30年5月10日にY市の職員が調査したところ、A土地の評価を誤ったために固定資産税の徴収額が過多になっていたことが判明した。そこで、Y市は、地方税法第417条に基づき、平成30年5月17日付で、平成26年度から平成30年度までの各年度分の固定資産課税台帳に登録された評価を減額修正し、その旨をX社に通知した。また、この5年分については過納金を返還し、または徴収額を減額した。しかし、Y市は、平成25年度以前の固定資産税等に係る賦課決定については同法第17条の5第5項によって期間制限を受けるために修正できず、従って課税処分を取り消すことができないこと、および、過納金については根拠規定を欠くので返還できないという旨も通知した。

 X社は、Y市を被告として、平成元年度から平成25年度までの過納金相当額の支払を求める国家賠償請求訴訟を提起しようと考えている。この分の課税処分の取消は求めないものとして、X社の国家賠償請求は認められるべきか。学説・判例の動向に留意しつつ、論じなさい。

 4.某省の職員Xは、部下のAに対する度重なるセクハラ行為のために懲戒免職処分を受けた。Xは、事実誤認がある、仮に事実誤認がないとしても懲戒免職処分は重きに失するとして出訴した。Xの請求は認められるべきか。学説・判例の動向に留意しつつ、論じなさい。

 参照 国家公務員法第82条第1項:「職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

 一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合

 二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

 三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」

 

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