行政法試験問題集・その77

 

大東文化大学法学部「行政法1」・「行政法1A」2019年度前期末試験問題〔2019年7月25日出題〕

 

 ●次の問題の中から1題だけを選択し、解答しなさい(2題以上について解答した場合には採点しません)。

 1.パチンコ屋やゲームセンターなどを経営するXは、A市にY競輪場(Y市が運営している)の場外車券売場を建設する計画を建てた。この場外車券売場は、Xが所有する土地の上にXが所有する建物を建て、それをY市に賃貸し、Y市が車券を販売するというものである。競輪事業の売上減少と赤字に苦しむY市は、このXの計画に期待をかけ、自らY競輪場A場外車券売場設置計画を立てた。その内容は、Xに対して場外車券売場の建物を賃借し、そこで車券を販売し、売上の5%ほどをXに賃借料として支払うというものである。また、Xは、経済産業大臣から場外車券売場設置許可を得た。しかし、A市が場外車券売場設置計画に反対し、経済産業大臣を相手取って場外車券売場設置許可の取消を求める訴訟を提起したこと、Y市で市長選挙が行われ、場外車券売場設置計画を推進してきた現職市長が敗れたことなどから、新市長は、この計画の推進を白紙に戻すこととした。A市やA市民からは歓迎されたが、場外車券売場設置の準備を進め、一部着工していたXは、結局中止せざるをえなくなったなどとして、Y市に対して損害賠償を請求する訴訟を起こした。

 Xの請求は認められるべきか。判例・学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

 2.国家公務員のXは、勤務時間外である休日に、某所にある防衛省公務員宿舎へ行き、某政党の機関紙を宿舎に居住する者の郵便受けに投函して配布した。これが国家公務員法第102条第1項、人事院規則147などに違反するとして起訴された。

 この事件の行政法上の問題について、判例・学説の動向に留意しつつ、論じなさい。

 参照

 国家公務員法第102条第1項:「職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」

 人事院規則147(政治的行為)第6項(政治的行為の定義):「法第102条第1項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう。

 (第1号から第5号まで略)

 六 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。

 七 政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。

 (第8号以下略)」

 3.Xは平成元年からY市内にA土地を所有しており、Y市に対して固定資産税を納めていた。ところが、平成301115日にY市の職員が調査したところ、A土地の評価を誤ったために固定資産税の徴収額が過多になっていたことが判明した。そこで、Y市は、地方税法第417条に基づき、平成301130日付で、平成26年度から平成30年度までの各年度分の固定資産課税台帳に登録された評価を減額修正し、その旨をX社に通知した。また、この5年分については過納金を返還し、または徴収額を減額した。しかし、Y市は、平成25年度以前の固定資産税等に係る賦課決定については同法第17条の5第5項によって期間制限を受けるために修正できず、従って課税処分を取り消すことができないこと、および、過納金については根拠規定を欠くので返還できないという旨も通知した。

 X社は、Y市を被告として、平成元年度から平成25年度までの過納金相当額の支払を求める国家賠償請求訴訟を提起しようと考えている。この分の課税処分の取消は求めないものとして、X社の国家賠償請求は認められるべきか。学説・判例の動向に留意しつつ、論じなさい。

  

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