行政法試験問題集・その80

 

国学院大学法学部「行政法1B」2019年度期末試験問題〔2020年1月17日出題〕

 

  ●次の問題の中から1題だけを選択し、解答しなさい(2題以上について解答した場合には採点しません)。

 T 公認会計士のXは、株式会社Aの平成29年3月期、平成30年3月期および平成31年3月期における監査に際して、財務書類に重大な虚偽があるにもかかわらず故意に虚偽のないものと証明したとして、聴聞手続を経て、令和元年1220日、公認会計士法第30条に基づき、内閣総理大臣から登録抹消の懲戒処分を受けた。しかし、Xは、この処分が行政手続法第14条に違反するものとして、令和2年1月20日に処分の取消を求めて出訴した。さて、Xの主張は認められるべきか。認められるとしたら、いかなる場合であるか。判例、学説の動向に照らしつつ、論じなさい。なお、懲戒処分については処分基準が存在します。

 行政手続法第14条第1項:「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。」

 同第2項:「行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。」

 同第3項:「不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。」

 U 國學院大學の学生Aは、通学のためにB鉄道C線を利用している。B鉄道は、消費税率の引き上げ、および同社の経営状態の悪さから、平均10%の運賃値上げを内容とする認可の申請を行い、国土交通大臣から2019年中に認可を得て、同年10月から実施した。Aはこの認可が違法であると考え、認可の取消を求めて出訴しようと考えている。裁判所はいかなる判断を下すべきか。判例、学説の動向に照らしつつ、論じなさい。

 行政事件訴訟法第9条第1項:「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。」

 同第2項:「裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。」

 V 国家賠償法第2条第1項は、「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」と定める。この「公の営造物の設置又は管理」の瑕疵はいかなる場合に認められるか。学説、判例の動向に留意しつつ論じなさい。

  

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