行政法小演習室・その11

 

国学院大学法学部・行政法T(2008年10月10日出題、10月17日締切

 

1.(担当者作成。オリジナル問題)

以下の設問に答えなさい。

(1)公定力の定義はいかなるものか。2、3行程度で答えなさい。

(2)公定力の法的根拠は何か。法律の名称を記しなさい。

(3)公定力と国家損害賠償請求との関係、および公定力と刑事訴訟との関係について、通説・判例はどのような見解を示しているか。2、3行程度で答えなさい。

(4)行政行為の不可争力(形式的確定力)とはいかなるものであるか。また、法的根拠は何か。2、3行程度で答えなさい。

 

2.(平成14年度国家U種)

行政行為の瑕疵に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

(注意:この種の問題の常識として、答えを一つだけ選ぶこと。)

@違法な行政行為があったとしても、当然に無効になるわけではなく、その違法が重大又は明白であるときに無効となるとするのが判例である。

A行政行為に違法があるとして取消訴訟を提起しても、当該行政行為が無効でなければ、裁判所は当該行政行為を取り消すことはできない。

B無効な行政行為とは初めから実体的法律効果を全く生じ得ない行為をいうが、当該行政行為の名あて人は、当該行政行為の無効確認判決を得なければ、これに従わなければならない。

C違法な行政行為によって損害を受けた者は、当該行政行為の取消しの判決を得ることなく、国家賠償を請求することができるとするのが判例である。

D行政庁が行う行政行為はすべて法律に従ってなされるべきであるから、法律上、明文で瑕疵ある行政行為を当該行政庁が取り消すことができる旨が規定されていなければ、当該行政庁はその行政行為を取り消すことはできない。

 

3.(担当者作成。オリジナル問題。参考:地方上級1998年)

次の事例を読み、判例に照らして妥当な記述を、次の@〜Dから一つ選びなさい。

  原告X1の姉の夫Aは、X1およびその夫X2からの借金の担保とするために、また、自らが経営する会社の債権者からの差押えを回避するために、自らが所有する土地および建物について、X1およびX2に無断で登記の名義を変更した。しばらくして、Aの事業経営が不振となったため、Aはこの土地の売却を思い立ち、売買契約書などを偽造した上で土地を第三者に売却した。Y税務署長は、調査をした上でX1に建物の譲渡に関する所得が、X2に土地の売買による譲渡所得があったものとして課税処分を行い、さらに滞納処分を行った。X1およびX2は、この課税処分の無効を主張して出訴した。

@このような課税処分は、その処分の存在ないし存続を信頼する第三者の保護の要請を伴うから、瑕疵の明白性が証明されない限り、当然に無効であるとは言えない。従って、X1およびX2による無効の主張は正当でない。

Aこのような課税処分が違法である以上、当然に無効であり、裁判所が瑕疵の重大性などを考慮する必要はない。

Bこのような課税処分は、課税要件の根幹に関して重大な瑕疵があるとは言えないから、無効であるとまでは言えない。従って、裁判所は課税処分の無効を確認することはできず、取り消すことができるにとどまる。

C課税処分は課税行政庁と被課税者との間のものであって第三者を考慮する必要がないから、課税処分がもたらす不利益を甘受させることが著しく不当であると認められるような例外的な事情がある場合には、課税処分を当然に無効であると解すべきである。

D上のような事例に限らず、判例は、瑕疵の重大性を無効の要件としているのであって、瑕疵の明白性については要件にしていない。

 

4.(平成12年度労働基準監督官)

講学上の職権取消に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

@行政庁が職権で瑕疵ある行政行為を取り消すためには、法律による行政の原理から、当該行為が相手方に対して授益的行政処分であるか侵害的行政行為であるかにかかわらず、取消しについて法律上の独自の根拠が必要である。

A瑕疵ある行政行為に対する行政庁の職権取消の効果を遡及させることは、相手方及び第三者の信頼を著しく害することになるから、法律上、遡及効果が発生する旨明文で定めているもの以外、行政行為の取消しの効果は、将来に対してのみ発生させる。

B上級行政庁による下級行政庁の権限の代替執行禁止という行政組織法上の原則から、およそ上級行政庁が監督権の行使として下級行政庁の行政行為を取り消すことを明文で認めている法律はない。

C異議申立てに対する決定や審査請求に対する裁決のように、事実関係や法律関係についての争いを公権的に裁断することを目的とする行政行為については、当該行政行為を行った行政庁が職権で取り消すことはできない。

D行政行為を取り消すに当たっては、適正手続の保障を定めた憲法31条の精神から、事前に相手方に意見開陳の機会を保障するために、必ず聴聞手続を経なければならないと解されている。

 

5.(平成11年度東京都)

行政行為の撤回に関する記述として妥当なのはどれか。

@行政行為の撤回は、当該行政行為を行った行政庁の監督官庁に限り行うことができる。

A侵害的行政行為の撤回は自由に行うことができ、懲戒免職のような確定力を生じる処分も自由に撤回することができる。

B授益的行政行為の撤回は許されず、相手方の同意があった場合でも自由に撤回することはできない。

C行政行為の撤回は撤回理由が相手方の責に帰すべき事由があるときは、遡及効を有するが、公益上の必要によるときは将来に向かって効果を生じる。

D授益的行政行為の撤回にあたる許認可の取消しについては、行政手続法において聴聞の手続を経ることが規定されている。

 

問題の解説など

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