行政法小演習室・その13
国学院大学法学部・行政法T(2008年10月17日出題、10月24日締切)
1.(平成3年度国家U種)
行政強制に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
@行政上の強制執行は、義務の履行を強制するために人の身体または財産に対し新たな侵害を加えることを内容とするものであるから、法律の根拠に基づいてのみこれをすることができる。
A行政上の即時強制とは、行政法上の義務違反があり、しかも執行罰や代執行等他の強制手段によっては目前に迫った障害を除く暇のない場合に、直接に人の身体または財産に実力を加え、もって行政法上の義務の履行を強制する作用である。
B行政代執行法上の代執行とは、行政法上の義務違反がある場合に、行政庁がその義務の履行を求めて裁判所に訴えを提起し、それを認める確定判決を得た後、行政庁自らが義務者本人に代わってその義務を履行することをいう。
C行政上の即時強制は急迫の不正を除くことが目的であるが、人の身体または財産に強制を加えるものであるから、それがいかなる即時強制であっても、これを行なうには裁判官の発する令状によらなければならない。
D行政代執行法上の代執行の対象となるのは、行政法上の義務違反のすべてに及び、その義務の種類が作為義務であるか不作為義務であるかを問わず、また、義務者本人しか履行しえない義務であるかを問わない。
2.(平成16年度東京都)
行政上の強制執行に関する記述として、妥当なのはどれか。
@行政上の強制執行を行う権限は、代執行、執行罰、直接強制、強制徴収の4種類に整理され、その手続については、いずれも行政代執行法で定められている。
A代執行とは、他人が代わって履行できる義務を義務者が履行しない場合に、行政庁又は行政庁の指定する第三者が、義務者がしなければならない行為をして、行政庁がその費用を義務者から徴収する手続である。
B執行罰とは、他人が代わって履行できない義務の不履行がある場合に、一定の期限を示して義務者に義務の履行を促し、それまでに履行しないときには、一定額の科料を科するもので、行政罰の一種である。
C直接強制とは、目前急迫の行政違反の状態を排除するために緊急の必要がある場合に、あらかじめ国民に義務を課することなく、行政庁が国民の身体や財産に実力を加えて行政目的を実現することである。
D強制徴収とは、金銭給付義務が履行されない場合に、義務者の財産に実力を加えて、義務の履行を強制的に実現する手段であり、国や地方公共団体の金銭債権であれば、個別の法律による授権がなくとも行うことができる。
3.(平成16年度特別区)
行政代執行法に規定する代執行に関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか。
@行政庁は、代執行を行う場合、義務者に対し、相当の履行期限を定め、その期限までに義務が履行されないときには代執行をなすべき旨をあらかじめ必ず戒告しなければならないが、この戒告は口頭で行えば足りる。
A行政庁は、他の手段によって義務の履行を確保することが困難でない場合でも、その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、代執行を行うことができる。
B行政庁は、第三者に代執行を行わせることができ、その費用を義務者から徴収することができる。
C行政庁は、事前に裁判所から代執行令書の交付を受けなければ、代執行を行うことができない。
D行政庁は、義務者が代替的作為義務を履行しない場合だけでなく、代替的不作為義務を履行しない場合でも、代執行を行うことができる。
4.(平成4年度地方上級)
次に掲げる事例のうち、行政庁甲が代執行を行うことが可能なのはどれか。
@甲は老朽化して危険な乙所有の木造住宅について、建築基準法上の権限に基づき取壊しを命じたが乙はそれを拒否した。
A甲は乙の営業する店舗につき、公衆衛生上問題があるとして法令に基づかない行政指導として、1ヵ月の営業停止を勧告したが、乙は営業を継続中である。
B甲は政治団体たる乙に、公道上のデモ行進についての許可をなしたが乙は許可の条件であった「他の交通を阻害しないこと」に著しく反したため、甲はデモ中止を命令したが、乙は行進を継続中である。
C乙は公務員を退職したにもかかわらず、公務員宿舎を継続して使用しているので、甲は立ち退きを要求したが、乙はなお居座っている。
D甲は要綱によって市街地建築物のネオン規制を行っているが、乙は長年の指導勧告にもかかわらず、要綱に違反しており、甲は改めて期間を定めて撤去を要求したが、乙は撤去を拒否している。
5.(平成元年度国家T種)〔やや発展的な問題。〕
行政強制に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
@監督行政庁が、法令に基づいて適法に営業停止処分を行ったにもかかわらず、業者がこれに違反して営業を継続している場合には、当該行政庁は代執行によって営業所を閉鎖することができる。
A旧性病予防法による強制検診や、廃止されたらい予防法による国立療養所への強制入所などは、即時強制の例である。
B代執行を行うには義務者が単に義務を履行しないことのみでは足りず、他の手段によってその履行を確保することが不可能であることを必要とする。
C国税は、国民の憲法上の義務とされる納税の義務に基づいて徴収されるものであるから、一般債権に優先する効力を有し、滞納処分による差押えに関して、民法177条の適用される余地はないとするのが判例である。
D違法建築物の所有者を相手として建築除去の代執行をする際に、当該建物に賃借人として入居している者の家財道具を搬出する行為は違法ではない。