サテライト日田(別府競輪場の場外車券売場)建設問題・第4編

 

  これまで、3回にわたり、本ホームページでは、サテライト日田建設問題を取り上げ、考察を加えて参りました。年末を控え、新たな動きがあるようなので、朝日新聞2000年11月26日付朝刊13版34面の記事を参照しつつ、たどってみたいと思います。

  同記事によれば、サテライト日田が営業を開始すると、車券売上分の4%は、設置を申し出た建設会社に家賃として支払われます。また、1%は「環境整備費」として日田市に交付されます。

  しかし、日田市では、まず市民団体がサテライト日田建設に反対し、1996年には日田市議会も反対決議をしたのですが、1997年7月に建設会社が設置許可申請をしており、今年の6月に許可が出されました。

  これに対し、別府市は、既に2000年2月、通商産業大臣に確約書を提出しており、あくまでも設置を実行する構えです。

  同記事にも別府市幹部の言葉として掲載されているのですが、もし、別府市が設置計画を白紙に戻した場合、設置許可を申請した建設会社から、信義誠実の原則(民法第1条第2項を参照)に違反するとして、国家賠償法または民法に基づく損害賠償請求を請求される可能性もあります。

  このような損害賠償請求は、熊本地裁玉名支部昭和44年4月30日判決(判例時報574号60頁)、最高裁第三小法廷昭和56年1月27日判決(最高裁判所民事判例集35巻1号35頁)などにおいて認容されております。その理由として、市町村の行政計画を変更すること自体は適法であるが、この変更行為はその計画に従っていた業者などの信頼を破壊することにもなる、ということがあげられます。

  そうなると、別府市としては、サテライト日田建設計画を着実に進めざるをえなくなります。事実、別府市は、12月の市議会にサテライト日田設置に関連する補正予算案を提出する構えを見せております。一方、日田市は、11月25日、市議会議員の一部が別府市議会に反対を申し入れ、27日には、設置反対に向けた市民参加の総決起集会を開催することを計画していると伝えられております。

  ここで、同記事に載った私のコメントを、紹介しておきます。

  「自転車競技法では地元市長の同意は要件としていない。また、地方自治法は『条例制定は法令に反しない限り』としており、条例は制定権の範囲を超えていると思う。ただ、住民意思をくみ取る日田市の姿勢は評価でき、この問題は地方公共団体の権能をうたう憲法にもかかわる。今後も成り行きを注目したい」

  さらに、日田市は、同記事ではあまり明らかにされておりませんが「法廷闘争も辞さない構え」をとっております。日田市側が提訴するとすれば、別府市報11月号の記事に虚偽があるなどの理由により、記事の訂正を求め、別府市を被告とする裁判を提起することなどが考えられます。

  また、地方自治法第251条の2に基づき、日田市、別府市のいずれかが、大分県知事に自治紛争処理委員による調停を申し出ることが考えられます。しかし、自治紛争処理委員の調停による解決の見込みがない場合には、同第5項に基づいて、調停を打ち切ることになります。

  訴訟などについては、機会を改めて検討することとしまして、今は、経緯を見守るしかないと思われます。

  なお、第3編においても述べましたが、サテライト日田問題について、皆様からの御意見や御質問などを承りたいと思います。電子メールか郵便でお願いします。電話およびファックスでの申し出はお断りいたしますので、御了承下さい。

  電子メールの場合:kraft@d1.dion.ne.jpまたはtosmori@oita-cc.cc.oita-u.ac.jp

  郵便の場合:〒870−1192  大分大学教育福祉科学部法律学教室

  なお、皆様からの御意見、御質問などにつきましては、このホームページで公表させていただくことも考えておりますので、非公表を希望される方は、その旨をお知らせ下さい。本名、メールアドレスなどの公表を望まれない方についても同様です(住所、年齢、職業などについては非公表とします)。

  また、本ホームページにおきましては、現在のところ、掲示板などを設置する予定はございません(平成12年12月10日深夜より、掲示板を設けました)。

 

(2000年11月26日。12月11日に修正)

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