サテライト日田(別府競輪場の場外車券売場)建設問題・第10編

 

 これまで9回にわたり、この問題を取り上げて参りました。別府市は、あくまでもサテライト日田建設を進めるという立場を崩さず、一方、日田市は断固反対の姿勢を堅持してきました。

  しかし、ここに来て、別府市側に新たな展開がありました。以下、主に毎日新聞平成12年12月13日付朝刊大分版21面によりつつ、同日付の大分合同新聞朝刊なども参考にしながら、記していきます(なお、以下の引用は毎日新聞の記事によりますが、適宜修正しております)。

  別府市議会観光経済委員会は、12日、サテライト日田建設関連の予算について継続審議とする動議を、賛成多数(賛成8、反対1)で可決しました。その理由として、「日田市民の理解を得るよう努力すると約束しながら、9月以降一度も(日田市へ)出向いていない。議会でも十分な質疑がなされておらず、(採決は)時期尚早」であること(これは、動議を提出した自民党議員によるもの)、「法的に問題なくとも日田市の理解は得られていない」こと、「別府市民に対しても説明不足」であることなどがあげられています。

  この動きに対し、日田市長の大石昭忠氏は、「別府市議会の良識ある判断を高く評価したい。18日の最終本会議の結果を見極めた上で、円満解決に向けて、改めて市議会を含めて両市の話し合いを持ちたい。 溝江建設にも問題が決着するまでの工事の中断を申し入れる」と語りました。また、通商産業省へも抗議するとのことです。折りしも、12日の日田市議会で、日田市長は「日田のまちづくりの基本理念に合わない上、別府市の財源確保のために犠牲になる計画は認められない」として、別府市議会の最終本会議の動向次第では法的手段をも辞さないと表明、市議会も、発券計画の中止まで反対運動の手を緩めないとして「徹底抗戦の構え」をとることを確認しておりました。

  一方、溝江建設は、別府市議会の動向を見据えながら最終的な判断を下すが、現在のところ、あくまでも建設を進めるという旨を示しています。

  別府市議会で最終的な建設中止が議決された訳ではありませんので、問題が長期化するということも考えられるのですが、少なくとも、サテライト日田の営業開始が遅れることには間違いなく、別府市側は再検討を求められることになります。何故なら、別府市と日本自転車普及協会は、発券機器などのリース契約を結んでいるのですが、これにより支出される最高限度額3億2100万円(特別予算)は、地方自治法第214条および第215条による債務負担行為として、予算に定められなければならないからです。従って、議会の議決を経なければ支出が認められないこととなります。

  今回の事態は、やはり、12月9日の反対デモに象徴される日田市側の長期間にわたる抵抗(別府市側にとっては、予想以上のものであったものと思われます)が大きいものと思われます。しかし、それのみならず、別府市民にも、やはり市側にとっては予想以上に反対意見が少なくなかったことも、原因の一つであろうと考えられます。さらに、別府市議会で議論される前に、設置業者の溝江建設が起工式をして着工したことも、議会軽視として別府市議会議員の態度を硬化させる結果を招きました。

  実際、両市の態度は、ホームページにも現われています。別府市のホームページではこの問題が一切取り上げられていません。これに対し、日田市のホームページでは、最近になって、日田市議会での反対決議が同議会のページに掲載されており、さらに、おそらく市町村のホームページに設置されている例としては数が少ない掲示板(大分県内では、他に中津市しかありません)に、日田市民はもとより日田市出身者などから多くの反対意見が載せられているところです。

 実を言うと、私は、この事態を全く予想していなかった訳ではありません。お断りしておきますが、「日田市公営競技の場外券売場設置等による生活環境等の保全に関する条例」について、条例制定権との関連において問題が残るという私の行政法学的見解は、現在も変わりません。しかし、このことは、例えば住民投票条例などについても妥当しうるのです(少なくとも、そういう部分があることを否定できません)。地方行政あるいは地方政治としての現実をみるならば、今回の場合のように、他の市町村に場外券売場を設ける場合、地元住民の同意を十分に考慮に入れていない現行法に問題がある、ということも言えるのではないでしょうか。日田市はISO14001を取得しているのですが、それとの関連もあり、まちづくりについて明確な方針を打ち立てています。市町村によってまちづくりの方向が異なることは当然です。以前、私は、朝日新聞1999年6月12日付朝刊大分版13版27面(住民参加の行政推進を)において、「国の権限が地方に下りてくると、住民と都道府県や市町村のかかわりが強まる。今後は、住民がもっと関心を持って行政を監視し、自治体も住民参加を進めることが必要だ。地方分権は、それがあって初めて完成すると言える」と述べました。市町村間の関係においては、このことが一層妥当するのではないでしょうか。

  古川氏から御教示をいただいた「長沼答申」、「吉国答申」、「場外車券売場の施設の規模、構造及び設備並びにこれらの配置の基準を定めた件に関する告示」および「場外車券売場の設置に関する指導要領について」に関する検討は、第11編において行います。

 

(2000年12月14日)

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