サテライト日田(別府競輪場の場外車券売場)建設問題・第14編

 

 第二部が始まってから僅か一日で続編を公表することに、若干の戸惑いもあります。しかし、いよいよ、この問題が法廷で争われる可能性が高くなってきました。そこで、第14編をお届けいたします。

 今回は、大分合同新聞2001年1月13日付朝刊朝F版25面の記事を基にしつつ、記していくこととします。

  1月10日に別府市の大塚茂樹助役が日田市役所を訪れたのに続き、12日、別府市の首藤広行観光経済部長など競輪事業担当者が、日田市役所と日田商工会議所を訪れました。目的は事務的協議でした。しかし、この時、日田市側の担当者が会議中で面会できず、日田商工会議所で反対住民(市民団体)に対する説明会を開きたいと要請し、今後も説明のために訪問を続けるという意向を伝えました。

  前述の会議がいかなるものであったのかはわかりません。しかし、12日、日田市側は、改めて市報べっぷ11月号に掲載された記事の訂正を求める「再通告書」を、別府市長井上信幸氏に宛てて、内容証明郵便にて送付していました。既に昨年の11月7日に、やはり内容証明郵便にて同旨の要求がなされております。

  日田市の首藤洋介助役によれば、今回の「再通告書」には、回答期限を明示していないとのことです。その理由としては、提訴をにらんで明確な意思表示をしておきたいということがあげられております。別府市が日田市の要求に応じない場合には、早ければ1月第3週に訴状の作成に入り、2月ごろに臨時の市議会を開いて訴訟手続の準備を整えるという見通しを立てております。訴訟での請求は訂正記事の掲載ですが、損害賠償金については検討中とのことです。

  これに対し、別府市は、市報掲載の記事に誤りがなく、訂正には応じないとの立場を崩していません。そのため、現状のままでは、訴訟に至ることは確実です。

  そこで、訴訟の提起についてですが、おそらく、日田市は、民法第709条・第710条に基づき、市報べっぷ11月号掲載の記事によって日田市の名誉を害されたとして訴え、同時に、第723条に基づく「適当ナル処分」(この場合は市報べっぷなどへの訂正記事の掲載)を裁判所が命ずるように請求するものと思われます。

  まず、訴訟要件の点ですが、問題はないものと思われます。管見の限りにおいて、或る市町村が別の市町村に対して民事上の損害賠償を請求して提訴したという例を聞いたことがありませんが、市町村は普通地方公共団体ですから法人です(地方自治法第2条第1項)。従って、名誉権も認められます。別府市がサテライト日田設置を断念した場合には、日田市の訴えの利益がなくなりますが、そうなれば日田市は訴えを取り下げるでしょう。

  次に、本案の点です。日田市の論証次第ではありますが、市報べっぷ11月号に掲載された記事が、いかなる根拠に基づいて書かれたものであるかが最大のポイントとなります。仮に、別府市の主張が正しいと認定されるならば〔別府市が逆提訴(反訴)することも考えられます〕、当然、日田市の請求は棄却されることになります。また、別府市の主張が誤っていて、日田市の名誉を害したとしても、別府市に故意も過失もなければ、日田市の請求は認められませんが、このようなことは、余程の場合でなければ考えられません。現在の私には、訴訟が提起された場合にどちらが勝訴するかについて、判断するに足りる材料もありませんし、判断する資格もありません。しかし、日田市が提訴をする構えを見せているのは、勝訴への見込みがあるからでしょう。仮に日田市が敗訴したとすれば、日田市長をはじめとした政治問題に発展することになるからです。

  ここで、民法の条文を示しておきます。

  第709条 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス 

  第710条 他人ノ身体、自由又ハ名誉ヲ害シタル場合ト財産権ヲ害シタル場合トヲ問ハス前条ノ規定ニ依リテ損害賠償ノ責ニ任スル者ハ財産以外ノ損害ニ対シテモ其賠償ヲ為スコトヲ要ス

  第723条 他人ノ名誉ヲ毀損シタル者ニ対シテハ裁判所ハ被害者ノ請求ニ因リ損害賠償ニ代ヘ又ハ損害賠償ト共ニ名誉ヲ回復スルニ適当ナル処分ヲ命スルコトヲ得

  実は、1月13日、サテライト日田建設予定地を訪れました。昨年の12月4日に起工式が行われたことは知っています。鉄板による囲いが一部消滅していましたが、元の駐車場に戻ったかのようで、数台の車が停められており、何の工事も行われていないように見えました。やはり、別府市議会が「継続審査」を決定したことによるかと思われます。

 

(2001年1月14日)

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