サテライト日田(別府競輪場の場外車券売場)建設問題・第18編

  

 いよいよ、別府市がサテライト日田設置を本格的に進めようとしております。2月1日付の大分asahi.com/ニュースは、別府市議会の与党最大会派である自由民主党議員団が、サテライト日田設置関連議案について、2月1日に開催される別府市議会観光経済委員会において可決する意思を確認した、と報じました。同委員会は9人の議員から成りますが、過半数の5人が自由民主党議員団に所属していることから、可決は確実とみられておりました。事実、2月1日18時50分からのNHK第一放送大分ローカルニュースは、同委員会が議案を可決したと報じております。「ひたの掲示板」には、早速、別府市議会観光経済委員会による今回の議決を批判する投稿がなされておりました。

 今回は、今後とも日田市側の同意を得る努力を怠らないことという旨の附帯決議もなされております。いずれにせよ、これを受けて、2月8日には臨時市議会本会議が開かれ、本会議で可決されることとなるでしょう。1992(平成4)年度をピークにして別府競輪の売上は下降線をたどっていることからすれば、この状態を打開するためには、何としても、年度内予算執行の関係もあり、急がなければならないということなのでしょう。また、日田市という場所は福岡県や佐賀県にも近いことから、別府市にとってみれば絶好の場所です。そのため、サテライト宇佐よりも高い集客力が予想されます。競輪事業の建て直しを目論見る別府市にとっては、サテライト日田の設置、そして成功が、競輪事業継続の一つの鍵であると考えられます。

 昨年12月の市議会において、サテライト日田設置関連議案は「継続審査」とされておりました。しかし、問題解決の糸口が全くつかめない状況では結論を先送りできないということが、可決への理由となっています。また、競輪開催都市の与党会派という立場からすれば、議案に反対するという訳にもいかないのでしょう。しかし、前回にも記しましたが、別府市議会でも批判や要望が相次いでいる状況であり、別府市民の中からも批判の声が(少しずつですが)強くなっております。そればかりでなく、私の知人などからも、別府市の対応には問題があるという声が上がっておりますし、TBS系の番組「噂の! 東京マガジン」で報道されたこともあり、日田市民への応援の声が「ひたの掲示板」にも届いておりますし、別府市には、別府競輪ホームページの「質問コーナー」を始め、抗議の電話やメールが集まったという話もあります。

 一方、日田市は、やはり2月1日に臨時の市議会を開き、別府市報掲載記事の訂正を求める訴訟の議案を諮りました。この議案は全会一致で可決され、日田市は、週明けにも訴訟を提起するとのことです(日本経済新聞2001年2月2日付朝刊西12版39面の記事です)。実際に法廷の場において争われた場合、時間的な都合をつけて大分地方裁判所にて傍聴しようかと考えております。

 なお、この日田市の議案については、既に、1月31日、19時45分からのNHK第一放送九州ローカルニュースでも報道されておりました(「ひろば」107番にも記した通り、経済産業省を相手取った行政事件訴訟の件であると聞いた記憶がありますが、正確でなかったかもしれません)。なお、そのニュースによれば、例の通商産業省(現在の経済産業省)の通達に示された基準に従っていない設置許可はサテライト日田のみで、その理由として、日田市内の4つの町内会が一旦同意したものの、その後の反対運動の高まりを受けて同意を撤回した(一般用語です)ことによるというのです。

 こうした経緯をみると、サテライト日田設置許可は違法ではないのかという疑問を持たれる方もおられるでしょう。通達は外部的効力を持ちませんので、通達に従っていなかったから直ちに許可の効力に影響があるという訳ではありません。しかし、他の場外車券売場設置許可が通達に示された基準に従ってなされたのに1件だけが従っていないということであれば、平等原則違反などの問題が生じます。しかし、地元の同意が一時的であれ得られたということであれば、その同意の撤回がどのようにして示されたかということも問題となります。

 日田市民の方からの情報によれば、サテライト日田設置反対連絡会議のチラシが配られました。その内容は、設置反対の意思を、葉書やファックスにより、溝江建設、別府市役所、別府市議会議長、そして経済産業省に届けようというものであるとのことです。

 今週、或る学生(宮崎県出身)が私の研究室を訪れました。話をしている間にサテライト日田問題に関する質問を受けました。その学生は、この問題をあまりよく知らなかったらしいのですが、出身地の宮崎県でも公営カジノ設置に積極的なことに、相当な批判的意見を持っているようでした。私が、時折、講義の中でサテライト日田問題について話をすることもあり、何人かの学生から質問を受けます。以前、大分大学事務官の某氏からも、質問を受け、話をしました。

 いずれにせよ、別府市議会の動きに対して、日田市が態度をさらに硬化させることは、間違いありません。「第15編」にも記しましたが、経済産業省は、この問題の解決に向けて動き出したはずなのですが、本当のところはどうであるのか、疑問が生じてきます。今回の別府市議会の動きは、経済産業省が具体的な策を示さなかった、あるいは、策を示したとしても失敗したということを意味します。既に遅きに失している感もあるのですが、これ以上、問題を深刻化させないためには、2月8日に開かれる別府市議会の臨時本会議までに、経済産業省が具体的かつ有効な解決策を、両市に示す必要があります。

 (なお、今回の記事は、2月1日に作成しましたが、日田市臨時市議会が提訴の議案を全会一致で可決したことが2月2日付朝刊において報道されたため、内容を一部変更しました)。

 

(2001年2月1日作成、2月3日修正)

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