第21回    即時強制

 

 

 即時強制とは、義務の履行を強制するためにではなく、目前急迫の行政法規違反の状態を排除する必要上、義務を命ずる余裕のない場合、または、性質上義務を命じることによっては目的を達成しがたい場合に、直接、私人の身体または財産に実力を加え、これによって行政上の目的を実現することをいう。

  実力を加える対象として、身体(警察官職務執行法第3条ないし第5条など)、家宅・事業所など(警察官職務執行法第6条、国税犯則取締法第2条など)、財産(銃砲刀剣類所持等取締法第11条など)がある。但し、上記の定義の中には行政機関による情報・資料収集活動も含まれている。

 行政法学においては、別に即時執行という概念を用いる。即時執行とは、即時強制のうち、行政機関による情報・資料収集活動を除外したものである。従って、「相手方に義務を課すことなく行政機関が直接に実力を行使して、もって、行政目的の実現を図る制度」に限定されることとなる

 ※塩野宏『行政法T』〔第五版補訂版〕(2013年、有斐閣)252頁。

 即時強制・即時執行のいずれについても、法律の根拠を必要とする。

  公共の安全と秩序の維持に関する事柄には、行政上の強制執行とは異なった法理が適用される。但し、よく指摘されていることであるが、即時強制・即時執行と直接強制との区別は、実際のところつきにくく、即時強制・即時執行が直接強制の代替として用いられる傾向にあるとも言われる。

 即時強制について一般的に取り上げられる例が、警察官職務執行法である。ここでも、同法の定める即時強制を概観しておく。

 個人の生命・身体・財産の保護:保護措置(第3条)。24時間が限度とされるが、延長許可も認められる。

  避難などの危害防止:「警告」→「引き留め」・「避難」。第4条に認められた権限である。措置は公安委員会に報告される。他の公的機関に共助が求められる。

  犯罪の予防・制止:第5条。生命・身体の危険または財産の重大な侵害を生ずるおそれがある場合に、犯罪を制止できる。

  立入権:第6条により認められた権限である。

 武器の使用:第7条。但し、人に危害を加えることができるのは刑事訴訟法第213条・第210条、警察官職務執行法第7条、刑法第36条・第37条の場合に限定される。

 その他にも、行政法令の定める即時強制が存在する(例.消防法第1条)。個々の国民・住民の生命・身体の保護その他公衆衛生上の理由によるもの、風俗警察上の規制権限を行使するためのものなどがある。立入権限は、国税犯則取締法第2条・第3条、労働基準法第101条など、認める法令も多い。

 行政機関が行う事実行為の中でも、即時強制に対する作用(例、法律に基づいて実施する身柄の拘束、物の領置)は、強制的に人の自由を拘束し、継続的に受忍義務を課す作用である。よって、これは公権力の行使にあたる行為(処分)である。これに不服があれば、行政不服申立て・行政訴訟の手続で救済を求めなければならない(参照、行政不服審査法第2条第1項)。なお、この場合、出訴機関の制限を認めて、その起算点を身柄などの拘束時間とみるべきか、拘束時間が継続している間は、出訴期間とは無関係に随時不服申立てないし抗告訴訟を提起できるとすべきか、争いがある。

 

(2013年4月23日掲載)

(2013年12月26日修正)

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