税法・財政法試験問題集・その72  解説など

 

 

 今回は設問1についてのみ、解説を行う(設問2については「租税法講義ノート」〔第2版〕の「26 贈与税」を参照されたい)。

 まずは基礎控除の額を算定しておこう。Aの遺族は4人であるから、基礎控除の額は、

 3000万円+600万円×4=3000万円+2400万円=5400万円

となる。

 次に、Aの遺産のうち、合計課税価格(これは、遺族全員が相続する財産の価額の合計である)が2億2800万円であるとされているから、この合計課税価格から先の基礎控除の額を差し引くと課税遺産額がわかる。従って、

 2億2800万円−5400万円=1億7400万円

 ここで、この課税遺産額から相続税の総額を算出する訳であるが、ここで相続税については法定相続分課税方式による遺産取得税方式が採用されていることに注意しなければならない。レポートの中には、このことを忘れたのか、あるいは講義を聴いていなかったのはわからないが、いきなり課税遺産額を遺産取得割合で分割し、相続税法第16条に規定される税率を適用して相続税額を算出しているものが散見されたが、勿論、このような解答は「不可」である。正しくは、一旦、実際の取得割合などを無視して、全員が法定相続分に応じて相続財産を取得したと仮定して相続税額を計算していくのである。つまり、一旦、仮の相続税額を計算し、これらを合計して相続税の総額を算出する訳である。

 さて、Aの遺族の場合、仮に全員が法定相続分に従って相続財産を取得したとすれば、配偶者のBが2分の1を取得し、残り2分の1を実子のC、DおよびEが平等に取得することとなるから、仮の税額は次のようになる。

 B:1億7400万円÷2×0.3700万円=1910万円

 C:1億7400万円÷6×0.1550万円=385万円

 D:385万円

 E:385万円

 これで全員について仮の税額が算出されたので、これらを合計すれば相続税の総額を求められる。

 従って、

 1910万円+385万円×3=1910万円+1156万円=3065万円

 この総額を、今度は実際の取得割合に応じて按分するのである。B:C:D:E=3:4:2:1であるから、

 B:3065万円×0.39195000

 C:3065万円×0.41226万円

 D:3065万円×0.2613万円

 E:3065万円×0.13065000

 但し、Bについては、全相続財産に対する取得財産の割合が法定相続分以下であるために、配偶者軽減控除が適用され、結局は0円となる。

 また、本設問においては何も記していないが、C、D、Eのそれぞれについて、未成年者控除、障害者控除などが適用される場合には、その分を減じて得られた額が相続税額となる。

 

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