行政法試験問題集・その72

 

筑波大学大学院ビジネス科学研究科法曹専攻(法科大学院)「地方自治」2018年度期末試験〔2018年9月19日出題〕

 

 〔問題〕 以下の事案について、次の設問に答えなさい。

 A市は、A市立甲小学校校舎の上水道配管が老朽化していることから、その更新工事を行うこととし、平成25年9月29日に指名競争入札を行った。その結果、B社が落札し、翌日にA市とB社との間で同工事の請負契約が締結された。しかし、この入札に際してはB社をはじめとする複数の会社の間で談合が行われており、平成27年1月に報道会社がこの問題を大きく報じた。これにより、同年12月には公正取引委員会がB社などに対して課徴金納付命令を発した。A市住民らのXは、本件談合によって工事の費用が(一般競争入札の結果として支出されるよりも)著しく高いものになったため、A市がB社など4社に対して1億円以上の損害賠償請求権を有するにもかかわらず、A市がこれを行使しないとして、平成28年2月23日、A市監査委員に対して監査請求を行ったが、A市監査委員は同年4月15日付で監査請求を却下した。そこで、Xは、A市長がB社など4社に対して損害賠償請求を行うことを求める住民訴訟を、A市の領域を管轄するC地方裁判所に提起したが、C地方裁判所はXの請求を却下したため、XはD高等裁判所に控訴した。

 <設問1>(配点25

 Xが住民監査請求および住民訴訟を提起するにあたり、A市のいかなる行為を違法であるとして争いうると考えられるか。地方自治法の規定に定められる期間制限に留意しつつ、答えなさい。

 <設問2>(配点25

 C地方裁判所がXの請求を却下した理由として、いかなるものが考えられるか。<設問1>を踏まえつつ、A市監査委員がXの住民監査請求を却下した理由も考慮に入れ、かつ、地方自治法の規定に留意しつつ、判決の理由を書くつもりで答えなさい。

 <設問3>(配点50

 あなたがD高等裁判所で本件を担当する裁判長裁判官であるとして、口頭弁論や合議を経た結果、Xの控訴に理由があると判断したとする。この場合にいかなる判決を下すべきであるか。<設問1>および<設問2>を踏まえつつ、論じなさい。なお、<設問2>で答えた理由を採りえないことについて、地方自治法の条文の解釈論を十分に展開すること。

 

採点基準など

戻る