行政法小演習室・その1

 

国学院大学法学部・演習(行政法)問題演習〔2004年7月22日実施〕

 

 T.行政行為の効力に関する以下の記述のうち、誤っているものを1つ選びなさい。また、その理由を答えなさい。〔2004年度法学検定試験3級行政コース。大幅に改めた。〕

  @違法な行政行為でも、それが無効でない限り、権限のある者が取り消すまでは有効なものとして扱われる。これが、行政行為の公定力として説明されるものである。

 A地方公務員であるAが地方公務員法第28条に違反する分限免職処分を受けた場合、これが処分庁または裁判所によって取り消されなければ、Aが身分確認訴訟や俸給支払請求訴訟を提起しても却下される(但し、分限免職処分が無効でないと仮定する)。

 B(自力)執行力は行政行為の効力として説明されるが、行政行為に当然に付随する効力であるという訳ではない。

 C一定期間が経過すると国民の側から取消しを求められなくなるのが、不可争力である。このため、これが伴う行政行為については、行政の側から職権で取り消すこともできない。

 D裁決や審決という名称の行政行為にはしばしば不可変更力がともなう。

 

 U.公法関係と私法関係について。

  (1)それぞれはどのような性質を有する法的関係なのか。また、公法関係はさらに二つに分類されるが、それはいかなるものであるのか。

 (2)判例によると、農地買収処分については民法第177条が適用されないから、その処分は登記簿上の名義人Aに対してではなく、真の所有者Bに対して行われるべきである(最大判昭和28年2月18日民集7巻2号157頁)。また、土地収用裁決についても、登記簿上の名義人Cに対してなされたものは一応適法であるが、真実の権利者Dの存在が判明した場合には、Dに対してなされなければ違法となる(大判大正7年7月31日行録29輯871頁)。このような判断に至った理由はいかなるものと考えられるか。

 (3)また、租税滞納処分としての公売処分に関して、判例は、民法第177条の適用についていかなる判断を示しているか(最一小判昭和35年3月31日民集14巻4号663頁を参照)。

 

 V.次の二つの事案に共通するのは、いかなる問題か。そして、判例は、それぞれについてどのような判断を示しているか。結論が異なるとすれば、その理由を何に求めるべきか。

  (1)税務署長が或る物件(土地および建物)を固定資産税非課税物件として取り扱うことを決定し、その決定を相手方たる私人Xに通知した。そのため、Xがこの物件について申告などをしなかったところ、数年後に同税務署長がこの物件を非課税物件にあたらないとして、数年前の分まで遡って税金賦課処分をなし、その上で差押処分をした。Xは差し押さえ処分の取消を求めて出訴した。

 〔文化学院非課税通知事件に関する東京地判昭和40年5月26日行裁例集16巻6号1033頁および東京高判昭和41年6月6日行裁例集17巻6号607頁を参照。なお、最三小判昭和621030日判時126291頁も参照。〕

  (2)乙村では、地域活性化のために工場を誘致する施策を展開していた。乙村議会は、この施策を実施するため、甲社に村有地を譲渡するという議決を行い、これに従って乙村長は準備措置を進め、甲社も補償料の支払いや機械設備の発注などを完了した。しかし、これについては住民の間で反対意見が強く、村長選挙では誘致反対派の候補が勝利した。新村長は、工場の建築確認に不同意である旨を述べた。そこで、甲社は、新村長の協力拒否によって工場の建設ならびに操業が不可能になったとして、乙村に対して損害賠償を請求した。

 (最三小判昭和56年1月27日民集35巻1号35頁を参照。)

 

 W.行政裁量について。

 (1)要件裁量とは何か。また、効果裁量とは何か。

 (2)判例・学説は、どのような場合に裁量の踰越(逸脱)や濫用を認めるのであろうか。

 

 付記:当日の「演習」においては、時間の都合により、Wを省略しています。

問題の解説など

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