行政法小演習室・その9

 

大東文化大学法学部・行政法1(2008年6月26日出題、 7月3日締切)・国学院大学法学部・行政法T(2008年 6月27日出題、7月4日締切)共通問題

 

1.(平成18年度新司法試験短答式)〔各5点。計20点〕

  通達の法的性質等に関する次のアからエまでの各記述について、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。

  ア.通達は上級行政機関が関係下級機関・職員に対してその職務権限の行使を指揮する等のために発するものであるから、当該職務権限の行使を規律する法令の中に通達を発することができる旨の規定がない場合には、下級行政機関はこれを発することができない。

  イ.裁判所は、法令の解釈適用に際しては、通達に示された法令の解釈に拘束されない。

  ウ.事務処理の全国的な統一のために発せられた通達に反する措置を税務署長が行った場合、その措置は、他の税務署長が通達に準拠して行った措置との関係において、平等原則違反を理由に違法と判断される余地がある。

  エ.複数の行政機関が同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導を行う場合に、これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項を上級機関の通達により定めることは許される。

 

2.(2005年度法学検定試験3級行政コース。複数の問題をまとめ、設問形式を改めた。)〔各5点。計60点〕

  行政計画に関する以下の記述について、それぞれ正しい場合には1、誤っている場合には2を選びなさい。

  A.対象領域によって、経済計画、国土開発計画、防災計画等、多くのものに分けられる。

  B.期間の長さによって、長期計画、中期計画、短期計画に分けられる。

  C.対象領域に応じて、全国計画、地方計画、地域計画等に分けることができる。

  D.私人に対して法的拘束力をもつ計画の例としては、国土開発計画や市町村の基本構想が挙げられる。

  E.行政計画は、行政の整合性を確保するために有効な手法である。

  F.いったん策定された行政計画は終了まで改定できない。

  G.行政計画はすべて法律の根拠に基づいて策定される。

  H.行政計画の策定に関する行政機関の裁量の幅は一般に狭い。

  I.行政事件訴訟法は、行政計画に関する訴訟の提起を可能にするために特別の訴訟制度を設けている。

  J.土地区画整理事業計画は取消訴訟の対象にならないとする最高裁判所の判決がある。

  K.行政計画の変更や中止が違法であれば、それにより損害をこうむった者は国家賠償を請求できる場合がある。

  L.行政計画の変更や中止が違法でなくても、それにより損害をこうむった者は損失補償を請求できる場合がある。

 

3.(2003年度国税専門官)〔5点〕

  行政上の計画に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

  @行政上の計画の策定は、専門技術的知識を要すること、社会情勢の変化に応じて変更され得るなどから、行政機関の裁量にゆだねられることが多いが、国民に対し、権利制限的な法効果を有する計画の策定については法律の根拠が必要である。

  A行政上の計画の策定には、行政機関に広範な裁量が認められることから、計画の策定手続において利害関係を有する住民の意見を聞く等、計画の策定手続に参加させることが重要であり、このような利害関係者の参加手続を経ない計画は、行政手続法に反し無効となる。

  B都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業計画の決定は、公告された後においても、施行地区内の土地の所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものではないので、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないとするのが判例である。

  C土地区画整理法に基づく土地区画整理事業が公告されると、市構築内において宅地、建物等を所有する者は、土地の形質の変更、建物等の新築、改築、増築等につき一定の制限を受けることから、当該事業計画は、公告された段階で抗告訴訟の対象となる行政処分になるとするのが判例である。

  D地方公共団体の計画した施策により、特定の者に、当該施策に適合する特定内容の活動を促す個別具体的な勧告、勧誘があったとしても、当該施策が変更されることは社会情勢の変動等に伴いあり得ることであり、当該施策への信頼に対しては、およそ法的な保護を与える必要はないとするのが判例である。

 

4.(担当者作成。オリジナル問題)〔(1)は両方正解で5点。(2)は10点〕

  次の文章を読み、後の設問に答えなさい。

  最三小判平成14年7月9日民集56巻6号1134頁(6月19日に配布した資料Nr. 5で紹介した)は、民事事件で裁判所が対象としうるのは【】にいう「【】」に限られるとして最判昭和56年4月7日民集35巻3号443頁を引用し、「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものではあって、自己の権利利益の保護救済を求めるものということはできないから、【B】として当然に裁判所の審判の対象となるものではな」いと述べた。そして、行政代執行法が認めるのは基本的に代執行のみであること、行政事件訴訟法などの法律にも「一般に国又は地方公共団体が国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟を提起する特別の規定は存在しない」などとして、宝塚市の訴えを不適法とした。

(1)上の【A】および【B】に入る言葉を記しなさい。【A】については●●法▲▲条■■項と答えること(なお、いずれも正しい場合にのみ5点とする)。

(2)【B】については、事件性の要件として二つの要件が必要とされる。どのような要件か、事件性の要件T、事件性の要件Uとして説明しなさい(順序などをよく考えること。なお、憲法学の教科書も参照すること)。

 

問題の解説など

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