インターネット広報

 

  はじめに:これは、2001年6月29日、地方職員共済組合別府保養所「つるみ荘」において行われた「平成13年度大分県広報広聴研修会」第2部会「インターネットを使った広報」において行った講演の草稿です。時間的余裕がなかったこともあり、途中、メモ程度のままという箇所もあります。

  予定項目など

  T  はじめに

  U  インターネットによる広報の意義

    (1)e-Japan構想との関連

      電子政府・電子自治体構想→電子行政手続(電子申請、電子申告)

    (2)情報公開との関連

      ホームページを使った積極的な情報公開→自治体の外部的評価

    (3)行政改革との関連

    (4)住民参加、他地域住民との交流

      北海道ニセコ町町長・逢坂町長のホームページ:ニセコ町総合計画など

  V  何を目的とするのか、誰を対象とするのか

    これまでのホームページ:観光協会のホームページ?(自治体の姿が見えない)

    観光だけの内容では、積極的な評価を受けない?(誰を対象にしているのか)

    自治体の取り組みを積極的に示す必要性

    (例)行政改革、環境対策、入札情報、都市計画

    住民に向けた自治体サービスの広報→利用手続の簡便化など

  W  メールマガジン(メール配信サービス)の活用

    例.財務省、川崎市、三重県、臼杵市長のホームページ

    ホームページの更新状況を示すとともに、広報誌に代わり得る手段としても活用可能

    課題:予算、技術

  X  電子掲示板の活用

    直接的な広報活動ではないが、補助的手段としての活用

    住民、出身者などとの交流の場、意見表明の場

    住民のニーズを知る手段(電子メールを送るよりも、掲示板への書き込みのほうが楽)

    観光向けの宣伝手段としても活用できる

    パブリック・コメント制度の活用へ(発展段階)

 

T  はじめに

  この度、大分県企画文化部広報広聴課の西本泉氏より、当研修会に関する御依頼を受けた。その趣旨として、インターネット網を利用した自治体の広報活動、その一般的潮流や傾向の解説があげられていた。私は、広告プランナーでもなければデザイナーでもない。自らのホームページを運用しているとはいえ、技術的なことについては全くの素人である。単に、行政法学を専攻し、大分大学に勤務して法律学関係の講義を担当するという立場にあるにすぎない。しかし、仕事柄、国の省庁をはじめ、行政関係のホームページを利用する者として、一般人的な観点に立って電子的広報活動に関する意見を述べることはできる。

  また、今年度、財団法人ハイパーネットワーク社会研究所からのお誘いを受け、共同研究員として、電子自治体構想に関する研究に取り組むこととなった。

  昨今、国の省庁が運営するホームページを参照すると、内容の充実度に驚かされることがある。審議会の議事録、法令などの資料が幅広く公開されるようになっており、政府の政策・取り組みの一端を知ることができるようになっている(しかし、日本は遅れているほうである)。また、経済産業省は、既に電子的行政手続(電子申請)に着手しており、国税庁も、試験段階を経て、ようやく電子納税申告を来年度からスタートさせる。

  それに対し、自治体のホームページを参照すると、自治体の活動、政策、基本理念が明確に示されているものから、単なる観光情報などに終わっているものもあり、千差万別である。しかし、広報という点からすれば、多くの市町村のホームページが住民向けの広報という要素を持ち合わせているとは言えないのが実情である。少なくとも、私が大分県内の市町村のホームページを参照する限り、そのように思われる。あるいは、住民に向けて発信していると思われるページがあったとしても、構造上、参照しにくいという難点を抱えているものもある。

  しかし、後に述べるように、国は、e-Japan戦略を打ち立て、電子政府構想を前面に出している。ここには、「電子商取引」や「教育及び学習の振興並びに人材の育成」などとともに、「行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の促進」があげられている。これには行政改革、さらには構造改革との関連もあるが、行政情報化の先進国であるアメリカ、スウェーデン、シンガポールの例を見ていると、行政サーヴィスに一層の(と記しておく)利便性が求められているからであると言いうる〔IT戦略研究会編『「eジャパン戦略」で日本はこう変わる!』(2001年、オーエス出版社)43頁にも、「行政サービスのIT化は、情報公開、国民や住民の利便性が行政機構の合理化から強く求められているものです」と記されている〕。ホームページなどを利用する自治体の広報活動のあり方を検討する場合、電子政府構想を念頭に置かなければならない。国だけの問題ではないからである。地方自治体についても、電子自治体構想の導入が求められている。これからの広報活動は、電子政府・電子自治体と無関係ではありえない。しかし、多くの自治体のホームページを見る限り、「住民サイドからみると役所のIT化の利便性は感じられません。窓口業務や我々がインターネットを通じて役所の連絡や何らかの申し込みができるかというと、そうした具体的なインターネット活用は行われていません。インターネットの活用で積極的な市長さんが市長宛の電子メールを受け付けているくらいです」という指摘には、同感せざるをえない〔IT戦略研究会編・前掲書44頁〕。勿論、この点については、法律的な整備も必要である。そうであるとは言え、地方分権改革が曲がりなりにも進展している現在、インターネット広報についても、単に法律の整備を待つばかりでなく、積極的な、かつ独自の取り組みが求められると思われる。

  そこで、拙いながらも、インターネットを利用した広報活動について、私なりの意見を述べて参りたい、と考える次第である。

 

U インターネットによる広報の意義

  (1)e-Japan構想との関連

  電子政府・電子自治体構想→電子行政手続(電子申請、電子申告)

  (2)情報公開との関連

  ホームページを使った積極的な情報公開→自治体の外部的評価

  (3)行政改革との関連

  (4)住民参加、他地域住民との交流

  北海道ニセコ町町長・逢坂町長のホームページ:ニセコ町総合計画など

 

V 何を目的とするのか、誰を対象とするのか

  行政法学を専攻し、地方自治などの研究をする者の立場から見ても、そして一住民の立場からしても、インターネット網を活用する広報活動という場合、目的と対象が重要な問題となる。しかし、先にも述べたように、多くの市町村のホームページ(場合によっては都道府県のものを含む)からは、自治体の姿が見えてこない。もっと記すならば、自治体が誰に対していかなる情報を発信しようとしているのか、見えてこないのである。

  このことと関連して、私は、昨年(2000年)12152139分付で、岐阜県が主宰する「全国地域情報化懇談会」のホームページ〔http://mmcf.softopia.pref.gifu.jp/〕にある「自治体ホームページ品評会」のコーナーに「市町村ホームページの意義は?」という題で投稿した。私の問題意識などを示しておく意味で、以下、抜粋しておく。

  「『自治体ホームページ研究の理論的基礎』と関連するかどうか自信がないのですが、以前から気になっていることを記します。/仕事柄、大分県内市町村のホームページを参照する機会が多いのですが、若干の例外を除いて、判で押したように観光案内しかなく、失望しています。/市町村がホームページを公開しているのですから、やはり、住民向けの情報、統計、市町村政の方向が見えるものを作って欲しいと思っています。人口統計が載っていればましなほうかもしれません。/また、条例を掲載しているホームページが少ないのも考え物です(大分県内で条例のページを設けている市町村はありません)。川崎市、京都市などが条規集ホームページを持っておりますが、せめて情報公開条例くらいは載せて欲しいものです。/やはり、ホームページは市町村の「顔」になるのですから、観光案内だけでなく、市町村の取り組みや姿勢などを積極的に見せるような内容を期待します。」(/は、原文改行箇所)

  上記コーナーは、「ほとんどの地方自治体がホームページを開設する今日、分かりやすい行政情報の提供の手法はどのようなものがあるのか。魅力ある自治体ページを紹介しながら、よりよい情報提供のあり方を検証します」ということを目的にしているが、その後の投稿がないことから、魅力ある自治体のページが僅少である(あるいは、皆無である?)ことを示しているのかもしれない。そうであるとすれば残念なことである。

  とくに過疎地域と言われる市町村にとって、ホームページの内容が観光協会と見紛うようなものとなることは、或る意味においてやむをえないかもしれない。しかし、広報という点から考えるならば、むしろマイナスである。「この自治体には行政能力がない」という偏見を助長する結果に終わる危険性が高くなるからである。実際、大分県内でも、教育や福祉の面などで注目に値する制度を運用する自治体があるのに、こうしたことがホームページに掲載されていない。これでは、住民に利用されない、評価されないという結果が生じても当然であろう。

  それどころか、自治体の住民が生活する上で必要な情報、例えば救急病院の位置、電話番号などが掲載されていないというような例もある。ごみの収集日や捨て方など、掲載して欲しいものの一つであると思われるが、こうしたものも掲載されていないような例が多い。

  東京都は、外形標準課税導入の際、ホームページでかなり詳細な情報を公開した。ここで示された条例案の概要などには批判が寄せられたが、逆にいえばそれだけ注目を浴びたのであり、或る意味では良い宣伝になった。また、北海道ニセコ町の場合、後にも取り上げるが、逢坂誠二氏(北海道ニセコ町長)のホームページにおいて条例案が公開されていた。しかも、改訂される度に情報が追加され、意見が寄せられたのである。この他、千葉県市川市のように、市長の交際費をホームページで公開することによって、交際費に対する住民の理解を得ようとする努力をしているところもある。或る自治体がいかなる政策に取り組んでいるのか、可能な限り積極的に公開する必要性があるのではなかろうか。

  また、定住促進条例のあらましを掲載している自治体もいくつか散見されるが、実際に移住しようと考える者が参照しても、必要かつ十分な情報が提供されているとは言い難いように思われる。もう一つあげるならば、情報公開条例である。ホームページを参照しても、制度の存在自体は理解できるとは言え、具体的にどのような手続をとる必要があるのか、ということなど、肝心なことが、住民から見てわかりやすいとは思えない。そもそも、情報公開条例が掲載されていない場合が多い。これでは情報公開制度自体の意味が半減する。この他の点についても同様である。

  川崎市や京都市などの場合、条規集のページがあり、これを上手く利用することにより、あらゆる行政情報の、少なくとも基礎的な部分を得ることができる。勿論、住民の全員が条規集を使いこなせるとは言いえない。しかし、将来的には電子自治体構想などの際に役に立つ。

  断っておくが、私は、自治体ホームページで観光情報を一切扱うな、と主張している訳ではない。しかし、このような話は、住民にとってはどうでもよいようなものである。少なくとも、利用者は観光情報だけを仕入れたいがためにホームページを参照しているのではない。要は、ホームページというものが多面的かつ双方向的なものであり、それを活かさない手はない、ということである。住民は、行政の側が思っている以上に進んでいる、と考えておいたほうがよい。そうでないと、手痛い目に遭うかもしれない。

  いくつかの自治体のホームページにおいては、独自の政策が積極的に公開されている。直接的にはその自治体の住民に向けられた情報である。例えば、臼杵市のバランスシートの公開である。細かいことを言うならば、バランスシートの内容に批判があろうが、住民に対して自治体自身の経営努力を積極的に示すものとして、大分県外からも高い評価が与えられている。この他、環境対策、入札情報、都市計画などが公開されているという自治体が存在するが、こういうところほど、外部からの利用者も多く、自治体自身の活性化にもつながっている。

  行政改革に率先して取り組んでいる自治体のホームページは、そうでないホームページよりも全体的な魅力が高い。行政に関する情報が多く、国民・住民にとって使いやすいホームページほど、利用者が多い。情報化は、必然的に情報公開を要請する。秘密主義は通用しない。情報量が少ないページは、利用者も減る。ホームページの利用者数が多いからといって、直ちに観光など経済面においてプラスの影響が現れる訳でもないが、長期的視点に立てば、自治体の評価を高めることになるであろう。市町村合併の関係もあり、一概に言えないのであるが、地方分権改革においては、各自治体間における行政サービスの競争による住民生活の向上が予定されている。この点も、念頭に置いてよいであろう。

  多くの自治体がホームページを開設する場合、広報の一環として、あるいは一手段として位置づけているはずである。そうであるとするならば、インターネットという、基本的には全世界に開放されている空間であるとは言え、まず対象とされるのはその自治体の住民である。この点において、従来の広報誌と変わるところはない。相違があるとすれば、住民だけではなく、その自治体に居住しない者からも絶えず利用なり監視なりがなされるということである。広報は行政サービスの一環としてなされるはずであるから、他の行政サービスにむすびつかないようなものであるとすれば、十分な役割を果しているとは言い難い。

  現在、多くの自治体がホームページを開設している。しかし、これは第一段階にすぎない。とりあえず開設したというだけのことである〔白井均=城野敬子=石井恭子『電子政府』(2000年、東洋経済新報社)259頁も参照〕。例えば、公民館の予約などをホームページから行えるようにする、役所・役場から遠い所に住んでいる住民のために、可能な限り役所・役場に出向かなくても行政手続を行えるようにする。これは電子自治体の目標であるが、いきなりここまで行かなくても、申請書をダウンロードできるようにするなど、住民に向けての自治体サービスの広報が充実する必要があると思われる。

  また、後の問題とも関連するが、広報と表裏一体にあるのが、住民などからの質問や意見などへの対応である。利用者の側から指摘されるのが、対応の遅さである。住民が求めるものは、迅速かつ的確な回答である。的確さが重要であることは当然であるが、電子情報化により、迅速さの価値がこれまで以上に高まってくる。自治体によっては、掲示板システムを利用した「質問コーナー」を置いていることもあるが、遅い回答、さらに無回答は、対応の誠実さなどが疑われる原因にもなるし、さらには利用者が減る可能性が高い〔別府競輪場のホームページにある「質問コーナー」が典型的である。なお、この注は、講演の時には読み上げていない〕。結局、ホームページ全体の評価や利用率を下げることになり、広報としての意義を損なわせる。

 

W  メールマガジン(メール配信サービス)の活用

  或る論者によれば、「ゆりかごから墓場までノンストップ・ワンストップのサービス提供」が電子政府・電子自治体の目標の一つである〔詳細は、白井=城野=石井・前掲書257頁を参照〕。これには5段階がある。第一段階は、先に記したホームページの開設である。それから「双方向のコミュニケーションの開始」→「掲載情報量やサービスの質向上」→「ワンストップ・ノンストップ化」→「届け出や申請手続きの受付け」となる。電子政府・電子自治体構想は、この5段階を短期間で達成しようとするものであるが、意外に見落とされやすいのが第二段階の「双方向のコミュニケーションの開始」ではないか、と思われる。しかし、広報という点からすれば、この第二段階こそ、避けて通れないものである。双方向性というところに注目していただきたい。

  広報の手段として、メールマガジン(メーリングリストのシステムを用いることが多い)またはメール配信サービスの活用も考えられる。というより、各家庭に配布される広報誌に最も近い電子的手段は、メールマガジンまたはメール配信サービスである。これらは、ホームページの更新状況を示すとともに、広報誌に代わり得る手段としても活用可能である。勿論、ホームページとの連携が必要である。

  既に、私の知る限り、財務省、川崎市、三重県、臼杵市長のホームページが、メールマガジンまたはメール配信サービスを行っている。財務省の場合は、大臣会見の概要、様々な統計資料などの新たな情報が、ほぼ毎日のように配信される〔メールで送信できる容量には限りがある。また、受信者側にとっても、あまりにバイト数の多いメールは、無駄な時間を必要とするなど、望ましいものではない。そこで、全ての資料をメールで送付するのではなく、多くの場合は追加された情報が掲載されているページのアドレスが記載される。そのアドレスをクリックすることにより、情報を得ることができる〕

  川崎市の場合は、審議会の情報、入札情報など、かなり多くの内容が配信される(現在は1か月に1回の割合)。三重県の場合は、民間のメールマガジン「まぐまぐ」を利用したものであるが、川崎市と比べれば情報量が少ない。また、臼杵市長のホームページの場合は「週間うすき市長」として、原則として毎週月曜日に配信される。こちらは、「コアラ大分」のシステムを利用しており、トップページそのものが配信される。

  課題は、予算と技術、そして頻度であろう。まず、予算についてであるが、メールマガジンまたはメール配信サービスについては、無料とするのが望ましいであろう。広報の一環、情報公開・情報提供の一環なのであるから、当然である。現に、財務省、川崎市、三重県、臼杵市長のホームページは、いずれも無料である。そのため、自治体側は一定の負担を覚悟しなければならない。もっとも、一定の機材さえあれば、印刷などの手間を省けるので、費用の問題はそれほど大きいものでもないものかもしれない。また、技術については、三重県のように民間のサービスを用いるという手もある。さらに、頻度であるが、ホームページ自体の更新との関係からしても、情報の新鮮さが鍵である。

 

X 電子掲示板の活用

  電子掲示板は、住民、出身者などの交流の場であり、意見表明の場、情報交換の場でもある。また、住民のニーズを知る手段としても活用できるであろう。また、自治体の側による直接的・主体的な広報活動ではないが、補助的手段として活用でき、比較的費用のかからない観光向けの宣伝手段としても活用できる。

  多くの自治体ホームページには、意見募集として電子メールのアドレスを記し、電子メールソフトを起動して意見を聴取する方法が採用されている。また、大分県庁、大分市、日田市のように、電子メール送信用のページによるアンケート方式を採用しているところもある。この方法であれば、電子メールソフトを起動する時間などが不要となるために、意見聴取には都合がよい。基本的には電子掲示板と同様のシステムを用いるため、CGIスクリプトなど、設定に問題があるが、単にメールアドレスを記入し、利用者のパソコンでメールソフトを起動させるよりはよいサービスと言いうる(電子メールを送るよりも、掲示板への書き込みのほうが楽だからである)。また、電子メール送信用のページによるアンケート方式は、パブリック・コメント制度の活用にも発展させることができる。

  自治体のホームページで掲示板を設けている例は少ない。大分県内では中津市と日田市、臼杵市長のホームページだけであるし、他の都道府県をみても、岐阜県の全国地域情報化懇談会のような例を除けば、逢坂氏のホームページ、鹿児島県名瀬市などしかない。

  この意味において、神奈川県藤沢市役所が財団法人藤沢市産業振興財団などと共同で運営している「電縁都市ふじさわ」〔http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/〕は、注目に値する。このホームページには、市報「広報ふじさわ」や「図書館蔵書検索」、「診療情報案内」など、市民生活に必要な情報を盛り込んだコンテンツが存在する他、「藤沢市市民電子会議室」が存在し、市役所側が提示した政策などについて市民が意見を述べ、市側と意見交換をしたり、提言を行ったりすることができる。発言するためには登録が必要であるが、藤沢市民に限定されていないので、誰でも参加できる。

  この市民電子会議室が、「藤沢市地域IT基本計画」〔http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/~denshi/〕の策定にも関与していることは、特筆に価する。

  また、もう一つの例として、逢坂誠二氏のホームページをあげておく。ニセコ町は、町長、行政職員、そして住民の協力が協力し合うことにより、画期的とも言いうるまちづくり基本条例を作り上げた。この条例が制定されるまでの間、逢坂氏が自身のホームページにおいて条例案の作成状況などを公開していたことを忘れてはならない。これは、住民、さらには外部の者からも積極的に意見を聴取し、交換していたということを意味する。このホームページには実名投稿を原則とする掲示板が備えられており、観光客による町営施設への苦情なども書き込まれる。また、ニセコ町総合基本計画の策定に関しても専用の掲示板を設け、住民や行政、さらに外部の者と意見交換をしている。このような姿勢が、先進的な行政を推進するのに役立っているとともに、外部からの評価を高くし、例えば観光の促進にも役立っているということを記しておきたい。

  大分県では、やや形を異にするが、日田市のホームページにある掲示板が同様の役割をしている。サテライト日田問題で俄然注目を浴びた同市の掲示板であるが、同市を訪れようと考えている者もこの掲示板を利用している。ここで、市民などが意見を記し、観光客が帰宅後などに印象を書くことによって、他の利用者にも宣伝的な効果をもたらすのである。勿論、行政上の問題を論議するのでもよい。場合によっては、住民でない者からも意見などを聴くことができるであろう。

  また、最近、旧自治省が市町村合併に関して行っていたように、パブリック・コメント制度が注目されている。これについても、電子掲示板システムの応用により、比較的容易に導入しうることを指摘しておきたい。

  但し、掲示板には、幾つかの問題点があることも否定できない。

  最も大きな問題は、いわゆる荒らし行為など、悪質な投稿であろう。これについては、あらかじめ、削除基準などを或る程度明確に示すとともに、管理者による断固たる措置が求められる。しかし、基準の策定には困難が伴う場合がある。投稿に対する削除行為が法的にどのようなものであるのかという点も問題となりえよう。しかし、掲示板利用者にとって、よほどの例外を除けば、悪質な投稿を除外することは、必要である。藤沢市市民電子会議室や全国地域情報化懇談会〔ここの掲示板に書き込まれた内容は、メーリングリストの形態で登録者全員に送付される〕のように、閲覧は自由であるが発言の際には登録をしておくという制度、実名記入を義務づけておき、ハンドルネームの使用については内容の如何に関わらず削除するという制度も一法である。ただ、これらの方式を採用すると投稿数が減少することも否めない。

  また、CGIなどの技術的側面である。この設定については、少々の技術的知識を要する。また、サーバーによってはCGIの使用が制限されている場合もある。掲示板の様式によっては、かえって使いにくく、逆効果ということもある。

  さらに、過去ログの問題もある。サーバーの容量、保存の手間などである。実際、電子掲示板は、一定の投稿数を超えると、古いものから自動的に削除されていくので、掲示板への書き込みの頻度に応じて、絶えず過去ログを保存しなければならない。しかし、これは或る意味でやむをえないことである。

 

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(2001年7月4日掲載)