サテライト日田(別府競輪場の場外車券売場)建設問題・第53編

 

  今から3年ほど前の2000年6月27日、日田市議会は日田市公営競技の場外券売場設置等による生活環境等の保全に関する条例案を可決しました。この条例は、即日公布・施行されています。この条例について大分合同新聞社からコメントを求められ、その一部分が同年7月2日付の朝刊に掲載されました。元々は偶然だったのですが、一種の職業的な勘というべきか、これは地方分権改革が進められる中での大問題となる可能性があると判断し、コメントを求められたはいいが条例を読まなければ話にならないということで、ファックスで送っていただき、目を通した上で意見を述べました。それが、この問題に私が取り組むようになったきっかけでした。

  その後、秋には、日田市と別府市との対立が激しくなりました。当時の別府市などの対応については、どちらの市にも居住していない私にも不満が残るものでした。当事者という意識がまるで感じられなかったからです。

  翌年には、日田市対別府市の裁判、そして日田市対経済産業大臣の裁判が始まりました。私は、よほどのことがない限り、大分地方裁判所に足を運びました。日田市対別府市の裁判のほうは、昨年の11月19日に日田市が勝訴し、この判決が確定しましたが、日田市対経済産業大臣の裁判のほうは、今年の1月28日に日田市敗訴の判決が出され、現在、福岡高等裁判所で控訴審が続けられています。

  このまま、日田市と別府市は、この問題についてお互いの主張を平行線に乗せたまま対立の道を進み続けるかと思われました。少なくとも、私はそのように考えていました。

  しかし、今年になってから、どうやら、風向きが変わったようです。この問題が解決されるかもしれないという期待感が膨らんでいるようです。

  きっかけは、今年(2003年)4月27日に行われた別府市長選挙でした。4氏が立候補する大乱戦になりましたが、当時の現職であった井上信幸氏以外は、サテライト日田計画推進について否定的あるいは懐疑的な意見を述べていました。選挙の結果、井上氏が落選し、浜田博氏が当選しました。既に第51編において紹介しているように、浜田氏は、サテライト日田問題を「円満」に解決したいという意向を示しています。5月2日に別府市役所にて行われた別府市長(浜田氏)と日田市長(大石昭忠氏)の会談において、浜田氏は、設置業者と話し合いを進める意向を明らかにしていました。

  その後、別府市側のほうではとくに表立った動きはなかったようでしたが、8月29日になって、別府市と設置業者との話し合いが行われたことが報じられました。

  私も知らなかったので驚いたのですが、毎日新聞2003年8月29日付朝刊19面(大分)に掲載された「サテライト日田問題  解決方針、理解された  設置業者との面会で別府市」という記事によると、別府市の大塚助役と担当課長が、福岡にある設置業者を訪問し、「円満解決」の方針について話し合いを行ったとのことです。このことは、28日に行われた別府市長の定例記者会見で明らかにされました。ただ、現在、日田市対経済産業大臣訴訟が続けられているので、今後も慎重に協議を進めていくとのことです。なお、浜田氏が市長に就任してから、別府市が設置業者と接触したのは、この時が初めてのことだったそうです。

  この「円満解決」は、具体的に何を意味するのでしょうか。常識的に考えれば、設置断念でしょう。設置を推進するのであれば、わざわざ別府市と設置業者が折衝する必要などない訳ですし、「円満解決」という言葉自体が相応しくありません。

  サテライト日田の場合、何度も記しておりますように、別府市自身が設置許可を受けているのではありません。設置業者が建物などを立て、別府市が賃借します。設置業者が車券を販売できる訳ではないからです。つまり、設置業者が場外車券売場を設置しても、車券を販売する別府市が賃借しなければ、場外車券売場の意味がないのです。おそらく、別府市は、設置業者の建物を賃借してサテライト日田で別府競輪などの車券を販売するということを断念する、という方針を伝えたのでしょう。これに対し、設置業者の側はどのように反応したのか、記事ではあまり明確にされていませんが、記者会見の席で大塚助役が「相手方もこちらの言うことに賛同してくれた。市の姿勢を理解してもらった、と考えている」と語ったそうです。もっとも、西日本新聞2003年8月30日付朝刊30面(大分)に掲載された「別府市と建設業者協議  サテライト日田  円満解決目指す」という記事によると、やはり大塚助役は、両者の間に具体的な話がなかったということを述べたそうです。

  また、西日本新聞の記事「別府市と建設業者協議  サテライト日田  円満解決目指す」によれば、7月の下旬に、別府市の担当職員が九州経済産業局を訪れています。記事には「同問題に関する意向も伝えた」としか記されていないので、具体的なことは不明です。しかし、状況からすれば、設置に向けて努力するという意向ではなかったでしょう。

  仮に、別府市がサテライト日田での車券販売計画を断念するということになれば、経済産業大臣は許可の撤回をなすことができます(この許可が違法だというのであれば取消で、適法だというのであれば撤回です。効力の性質が違ってきます)。しかし、いずれにしても、設置許可の効力が失われることになる可能性も出てきました。

  最近、公営競技の苦しい現状に関する記事が増えています。地方競馬でも、大分県中津市では既に廃止されていますが、本来ならば一般会計を潤すはずの特別会計が、一般会計からの持ち出しで支えられているという現状は、多くのところで見受けられます。私自身は、競輪も競馬も、公営競技の一切をやりませんし、宝くじもやりませんし、最近ではパチンコもやりませんので、よくわからないのですが、少なくとも大分大学では、男子学生でもギャンブルにはまっているような人はあまりいません。私の出身地である神奈川県でも公営カジノ構想がありますが、国や地方公共団体がこんなものをやりだそうということ自体、モラルが失われかけているような気がしてならないのです。実際、公営カジノ構想を表明している地方公共団体の内部をみると、東京都といい、別府市といい、宮崎県といい、静岡県といい、公共事業のやりすぎによる財政難など、あまりに色々な問題を抱えているような気がしてなりません。

 

(2003年9月3日)

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