サテライト日田(別府競輪場の場外車券売場)建設問題・第55編

 

  第54編において、11月10日の控訴審第2回口頭弁論、および、日田市による訴えの取り下げの模様を報告しました。この記事を作成していた11月18日の時点において(掲載は11月19日)、経済産業省側が訴えの取り下げに同意したという情報は得られていなかったのですが、20日、原告弁護団のうち、寺井弁護士と桑原弁護士が所属するリベルテ法律事務所より、国(経済産業省。行政事件訴訟においては経済産業大臣)が訴えの取り下げに同意するという書面を福岡高等裁判所に提出したという情報を得ました。

  これは、新聞記事のコピーとともに、私の自宅に封書で届いたものです。開封したのは、11月21日の午前1時頃です。20日、朝の1限から講義などの仕事を抱え、他にも仕事があったため、帰りが21日の午前中になったのでした。そこで、今回の第55編を作成したという次第です。

  また、別府市のほうも、市長が市議会に対してサテライト日田設置断念(正確には、設置された場合の車券販売の断念)を報告したとのことです。これで、サテライト日田問題は、損害賠償などの問題を別とすれば、全てが終わったということになります。

  前回、弁護団声明を引用させていただき、また、今回も勝手に引用させていただきますが、リベルテ法律事務所よりいただいた寺井弁護士の名前による文書によりますと、「私どもは、本件について最高裁判所の憲法判断を求めたいと考えていたところでしたが、実質的に『サテライト日田』の設置がなされなくなった現状を踏まえ、この段階でひとまず終止符を打つことがベターであろうと決断致した次第であります」とのことでした。この点については、様々な考え方がありうると思います。しかし、私は、個別の問題の解決を優先すべきであるという考え方を採ります。地方自治、地方分権、地方自治体の出訴資格および原告適格、まちづくり権などの問題は残されてしまいましたが、具体的な問題を離れて、純粋にこれらの問題だけについて裁判所の判断を求めることが適切か否かについては、疑問を付けざるをえません。今の最高裁判所の判例が示す傾向から考えると、最高裁判所第三小法廷平成14年7月9日判決(これについては、さしあたり、法令資料解説総覧250号88頁に掲載されている金子正史教授による解説を参照して下さい)が示すように、裁判所法第3条第1項にいう「法律上の争訟」に該当しないという理由づけがなされるなど、地方自治体に不利な判断がなされる可能性があります。それでは薮蛇になりかねません。勿論、我々が確固とした理論を組み立てれば、別の可能性が開かれます。

  情報をお届け下さったリベルテ法律事務所の皆様に、ここで改めて御礼を申し上げます。私も、何度か、東京都新宿区四谷にある事務所にお邪魔しました。このことは、この不定期連載にも記しております。

  これまで、寺井弁護士を初めとして、原告・控訴人側弁護団の皆様、日田市役所の皆様、日田市民の皆様、そして全国で応援されていた皆様(このホームページを御覧いただいた方々を初めとして)には、色々とお世話になりました。この場を借りて御礼を申し上げます。

  何度も記しておりますように、サテライト日田問題に取り組むことで、私自身の立場、あるいは足元を見つめなおすこともできました。その一方、地方自治のあり方、まちづくり権のことなど、課題もできました。寺井弁護士も、記者会見の場などにおいて述べられております。今後、私自身が、こうしたことについてさらに研究を深めなければなりません。大分大学に勤務する者として、この問題に関わることは、大げさかもしれませんが職業的な使命感によるものでした。

  本来は、11月10日に提出された準備書面について検討をすべきですが、これについては、別の機会に行うこととします。よほどのことがない限り、12月中に掲載できるでしょう。

 

(2003年11月21日)

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