ドイツの電子申告制度 

 

  この論文は、19991224日、日本税務研究センターから日本税理士会連合会に提出された『「電子申告制度について」に関する報告書』に掲載されたものです。そのため、内容は1999年当時のままです。

  なお、この論文の注には、幾つかのURLが登場しますが、既に内容が変更されているもの、全く参照しえないものもありますので、御注意下さい。

 

ドイツの電子申告制度

  序.

  情報技術の発展、パソコンさらにはインターネットの普及などにより、日本においても電子申告制度の導入に向けての動きがみられる。既に国税庁の国税総合管理システム(KSKシステム)が稼動しており、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(電子帳簿保存法)も制定・施行された。税務会計における電子化(コンピューターによる作成・管理)が進展し、定着するならば、情報通信網によるペーパーレスの納税申告に至ることは、当然であると言えよう(1)

  電子申告制度は、アメリカ、オーストラリア、イギリスなどにおいて採用されている。また、ドイツにおいても、後に述べる通り、既に専用回線を用いる電子申告制度(DATEV方式)が導入されているが、これとは別に、本年(1999年)1月より、試験的ではあるが、インターネット網およびダイアル・イン・サーバー(テレボックスを利用した専用回線(2))による電子申告制度(ELSTER方式)が運用されている。

  これまで、ドイツの電子申告制度の詳細について日本で紹介されたことはほとんどない。また、ドイツにおいても、電子申告制度に対する関心は必ずしも高いものでないようである。そのためもあり、現在のところ、資料を入手するには―ホームページを参照する以外に―困難な状況にあると言いうるが、本稿は、現在判明している限りにおいて、および、私の能力の及ぶ限りにおいて、ドイツにおける電子申告制度を概観し、問題点などを探ることを目的とする(3)

  〔なお、以下において、ホームページから引用・参照した文献については、初出の場合にのみ注に記し、以後は明示を省略することがある。〕

 

  T.ドイツの課税方式―確認の意味をこめて―

  周知のように、ドイツにおいては賦課課税資料申告方式が採用されている。納税申告(Steuererklaerungen)は、租税通則法(Abgabenordnung.以下AO)第149条第1項により、個別の法律が規定する場合に義務づけられることになる(例、法人税法第49条、売上税法第18条など)。そして、納税者による申告は、課税庁側の基礎資料として利用されるに留まる。従って、納税者が納付すべき税額が納税者の申告によって確定されるのではなく―納税申告は意思表示でなく、認識の表示にすぎない(4)―、納税者が提出した申告書を課税庁が受理し、課税庁側の租税確認を通じて租税決定(Steuerbescheid)が送付される(AO第169条第1項第1号)という経過をたどることとなる。租税決定は行政行為であり(AO第155条第1項第2文、第122条第1項)、これが通知されることにより効力が生じ(AO第124条第1項)、権利救済手続のための期間が経過することにより形式的確定力が生じ、確定期間の経過により実質的確定力が生ずることとなる(AO第172条以下を参照)。

  このことから、ドイツにおいて、納税義務者は、電子申告を利用したとしても、単に課税庁側に租税決定のための基礎資料を伝送するにすぎないということになる。但し、AO第150条第1項第2文により納税申告の一種とされるSteueranmeldung(en)(5)は、売上税(売上税法第18条第1項・第2項を参照)、給与税(Lohnsteuer. 所得税法第38条以下)、資本収益税(Kapitalertragsteuer. 所得税法第43条以下)などにおいて採られる方式であり(6)、納税義務者自身が納税額を計算しなければならないというものである。この場合、原則として課税庁による特別の租税確認(AO第155条)は不要とされる(AO第167条第1項)。その意味において、Steueranmeldung(en)は日本の申告納税制度と類似することとなる。

 

  U.税務行政のコンピューター化―一般論として―

  ドイツにおいても、行政のコンピューター化が進んでいる(7)。このことは、市民生活にも大きな影響を与えるばかりでなく、行政法理論(とりわけ行政法総論)にも少なからぬ影響を与えるものと思われる。

  税務行政についても同様である。AOにも、税務行政のコンピューター化に対処したと考えられる規定が存在する。同第150条は納税申告の形式に関する規定であるが、その第6項に、19851219日の法律および19931221日の法律により変更が加えられ(8)、次のような規定となっている。

  「自動化された課税手続の軽減および簡素化に向けて、連邦大蔵省は、連邦参議院の同意を要する法規命令により、納税申告、またはその他の課税手続のために必要な情報が、全部または一部、機械により利用しうる情報記憶媒体、または情報遠隔伝送より、伝送されうることを定めうる。その際、とりわけ、次の各号のことが規律されうる。

  1.手続の利用のための諸前提

  2.伝送すべき情報の形式、内容、処理および確保に関する詳細

  3.情報の伝送の様式および方法

  4.伝送すべき情報の受領のための権限

  5.不正な処理または情報の伝送に基づいて短縮され、または延長された、租税または租税利益(Steuervorteile)に対する第三者の責任

  6.この手続のために必要な、納税義務者の特別の申告義務の範囲および形式

  情報伝送の規律のために、法規命令において専門的知識を有する部署の刊行物の参照が指示されうる。この際、刊行物の日付、購入源、および、刊行物が公文書保管所のように安全に保管される部署が記述される」

  この改正の後、1994年より、DATEV方式による電子申告の運用が開始されている。

  また、1998年、連邦大蔵省は連邦参議院の同意を得て「税務行政における自動化:納税情報の呼び出しに関する行政規律」(9)、「機械的に利用しうる情報記憶媒体によるSteueranmeldungの伝送に関する命令(Steueranmeldungの情報伝送に関する命令)」10、「税務行政における自動化:Steueranmeldungの情報伝送に関する命令」11を制定している。連邦大蔵省によれば、これらの行政規律・命令はELSTER方式の「法的条件」であるという12。そのため、ELSTER方式はこれらの行政規律・命令に従って運用されなければならないということであろう13

  ドイツの場合、後に概観するように、電子申告制度の導入状況は州により異なっている。少なくとも報告者が情報を収集した限りにおいて、導入に最も積極的であるのはバイエルン州であると思われる。

  既に示したように、ドイツの場合、まずDATEV方式が運用を開始した。DATEVがいかなる組織であるかについては後に述べるが、そのDATEVによれば、同方式の開発は、バイエルン州大蔵省との共同作業である旨が述べられており、同方式が最初に運用されたのもバイエルン州であった14。しかし、電子申告に対するバイエルン州の意気込みは、これに留まらず、ELSTER方式につながることになる。

  1998年1月10日、大蔵次官(当時)のAlfons Zeller氏は、社団法人バイエルン州給与税扶助(Die Lohnsteuerhilfe Bayern)代表者会議の席において「数年で、電子納税申告は日常に欠かせなくなる」旨を述べている15。同氏は「数年前には、書類のやり取り(Briefverkehr)が、なおも不可欠な伝送手段として通用していたところで、今、文書およびその他の記録を電子的に送達することが通例になっている。こうした発展は、課税手続においても到来している」と述べた上で「統一的で、しかも税務署の特殊性に適合した記録送達を確保すべき、税務行政のソフトウェアモジュール」の存在に触れ、このソフトウェアモジュールがテストされ「電子的記録交換に参加することを望む全員の自由な使用に委ねられ」、「その間に、納税申告の送達を電子的形態のみにおいて可能にし、今日でも不可欠であるような、それ[電子的形態による送達]と並んで紙の書類形式における申告を必要としないという法律上の根拠が作られる」と述べる。

  もっとも、同氏は、自筆署名に代わるべき電子署名について「目下のところなおも存在していない証明の官署を必要とする」こと、および「納税申告の電子送達だけで事が済んだ訳ではない」ことを認めている。しかし、将来的には、少なくとも給与税について「電子的給与税票」が登場し、「労働者に、使用者は、彼が電子的な、またはもしかしたらなおも紙の書類による納税申告において持ち出す暗証番号を通知する。そうして、税務署は、暗証番号に基づき、使用者によって通知された記録を引き出すことができる」ようになり、「ゲマインデも、対応する暗証番号(Schluesselnummern)を与えるような状況に置かれなければならな」くなると述べている。

  また、同年4月20日には、大蔵大臣(当時)のErwin Huber氏が、アムベルクにて開催されたニュルンベルク上級財政管理局(Oberfinanzdirektion)所轄の税務署長会議において「未来は電子納税申告のものである」と表明している16

  同氏は、1994年に開始されたDATEV方式に触れ、「1997年、12万件を越す納税申告が電子的に税務署に伝送された。このことは、二つの中規模のバイエルン州税務署の場合に相応する」として「税務行政は、私的申請者を税務行政の申告ソフトウェアに統合することを必要とするモジュール17を設置した。新たな手続の最初の試験(Erprobungen)は、既になされていることであろう。将来、各税理士および各市民は、パソコンおよびモデムを用いて、納税申告を電子的に行いうることとなろう」と述べる。

  また、Huber氏は、「税務署の出先機関(Ausenstellen)は、それ自体として存続する」とした上で、電子申告が税務行政における人的費用の削減および処理の質の向上にも資することを示唆する。また、電子申告制度の導入との関連は必ずしも明らかでないのであるが、次のようなことも述べられている。

  「公役務の領域において、改革は、変化した事情への必要な反応であ」り、「そうして、職務法(公務員法)改革が始められ、職務能力段階命令(Leistungsstufenverordnung)が導入された。評価制度および昇進指針は改められることになる。あらゆる改革に際して、既存の構造を、公的手段が、責任を持つように、そして効率的に投入されるように形成することが問題である。ヨーロッパの共同発展は、単に、企業間のより先鋭な競争にのみならず、異なる行政システムの競合にも至る。国民経済のためのより良い所在地条件(Standortbedingungen)を巡る闘争において、枠的条件が最善化されなければならない。そのことを、整然とした経済生活のためには不可避な公法上の下部構造を〔国民からの〕信用を得るように用意することを任務とする公役務も、必要としている」。そして「公役務、その質、およびその業務の質は、全く本質的な所在地要素なのである」。

  また、Huber氏は「税務行政においてソフトウェアシステム『ウニファ』(UNIFA)が導入されるべきである」と述べる。同氏によれば「エーベルスベルクおよびバムベルクの税務署において、パイロット企画がウニファの利用とともに実施されている。既に1998年末までに、12のバイエルン州税務署において、査定領域における新たな手続が導入されている」とのことである18

  しかし、税務行政のコンピューター化は、従来からの税務行政(とくに税務行政手続)に変更を加えることになるものと思われる。とくに、電子申告の場合、その方式の別を問わず、幾つかの問題が存在する。

  まず、導入の必要性そのものが問題となる。ドイツ以外に電子申告制度を導入している国々において、実際には、電子申告は還付申告のために使われることが多いようである。また、導入の契機の一つとして、ドイツにおいても税務行政の合理化・コスト削減があげられており19、日本においてもその点が期待されているものと思われるが、完全な電子化(ペーパーレス化)を達成しうるか否かについて疑問が残るだけでなく、合理化・コスト削減がどの程度まで実現するかについても、楽観視をしえないのではなかろうか20。また、電子申告の導入により、納税申告の伝送および処理がこれまでより迅速化するとも言われるが、この点についても問題が残る。ドイツ納税者同盟(Bund der Steuerzahler)は、後に扱うELSTER方式に関連して、納税申告の伝送および処理の迅速化などに対して疑問を投げかけ、「期待されている改善をすぐにもたらすか否かが、むしろ疑われざるをえない。そのため、納税申告情報を電子的方法により伝送するに際しても、紙の形式における(圧縮された)納税申告が、なおも必要なのである。さらに、証拠書類(Belege.とりわけ給与税票)が郵送により提出されなければならないので、簡素化の効果は控えめなものである」と述べる21。AO第150条第4項によれば、納税申告には、租税法律により示される証拠書類(Unterlagen)が添付されなければならない。第三者は、このために必要な証明書(Bescheinungen)を発行する義務を負う」。このため、電子申告をするとしても、税務行政庁の側はともあれ、納税義務者または税理士の負担はそれほど軽減されないということになるのではなかろうか。

  次に、納税義務者が伝送する納税情報の保護がなされなければならない。AOは、第30条に「租税の秘密」に関する規定を置いており、同第6項は電子情報処理(EDV)のための規定となっている22。また、ドイツにおいては、連邦情報保護法23との関連が問題となろう(この点については、資料および時間の関係もあり、検討できなかった)。DATEV方式およびELSTER方式が、それぞれ、納税情報をいかに保護しようとしているのか、検討の必要がある。ドイツ納税者同盟も「租税の秘密」が保障されなければならない旨を述べている。

  そして、電子申告が導入された場合における税務調査のあり方が問題となろう。残念ながら、現段階において、この点に関する資料を十分に見出せなかったが、ドイツにおいて、納税者および税理士の側から、電子申告の普及に伴う税務調査の強化が懸念されている24。この点につき、ELSTER方式に関してではあるが、Roman G. Weber氏は、市民から伝送された申告の内容が誤っていた場合に、その内容自体が脱税調査官庁(Steuerfahndungsbehoerden)による捜査の端緒となりうることを指摘して「誤った伝送を手続(―税務調査や脱税捜査を指す。引用者注)の着手のための唯一の根拠にしないという要請」を求めている25。電子申告を利用しようとする市民または税理士の側からすれば、当然の要請であろう。利用者全てがコンピューターに関する十分な知識(あるいは技術)を有し、法的な知識を有するとは限らないし、操作ミスなどの過失による誤った申告も、これまでの紙による申告以上に増えることも考えられるからである。ただ、上記の要請が税務調査や脱税捜査にあたっての基礎になると、意図的に誤った申告(すなわち、不正な申告)に対する税務行政側の対応はどのようになるのか、とくに、いかなる時点において税務調査や脱税捜査を開始すべきであるということになるのか、必ずしも明らかではない。

  電子帳簿との関連も重要な課題である。これについても十分な検討をなしえなかったが、1976年の商法改正を受け、AOは、制定当初から第146条第5項に電子帳簿の法的根拠を置いている。これに従って、1978年に「正規のコンピューター簿記の諸原則」(Grundsaetze ordnungsmassiger Speicherbuchfuhrung)、1995年には「正規のコンピューター簿記システムの諸原則」(Grundsaetze ordnungsmaessiger DV-geschtuetzter Buchfuhrungssysteme)が制定されている26。従って、ドイツにおいてはAOにより、電子帳簿および電子申告に関して一応の法的整備がなされていると言いうる。

  勿論、電子申告といえども、その様式はAO第150条第1項第1文にいう「官公署により規定された書式」に従う必要がある27。また、同第2項が規定するように「納税申告における言明(Angaben)は、事実通りに、最善の知識および良心により、なされなければならない。このことは、書式用紙がこのことを予定している場合に、書面により保証されなければならない」ということになる。

  また、同第3項は「納税義務者が納税申告書に自筆で署名しなければならないと租税法律が命じている場合には、納税義務者が身体的なもしくは精神的な状態の故に、または長期の不在状態により署名をしえない場合にのみ、代理人による署名が許容される。自筆による署名は、それを妨げる理由が消滅した場合には、事後的に要求されうる」と定める。この署名が電子申告においてどのように扱われるかということも問題とされよう。

  Huber氏の発言からも明らかであるように、電子署名は未だ解決されていない問題である。ノルトライン・ヴェストファーレン州大蔵省も、「コンピューターでの署名が法的に承認されるまで、完全に電子化された署名は、なおも未来の音楽である」と述べる28。しかし、これに対し、Roman G. Weber氏は、電子署名を「ドイツの署名法(Signaturgesetz)により提供する若干の製品が市場に現れている」と指摘する29。このことは、電子署名が技術的に可能であるのみならず、法的にも可能であることを示唆するものと思われる。

  なお、ドイツ納税者同盟は、直接的にはELSTER方式について「これまで所得税納税申告を紙の形式で申告してきたような納税者が、電子申告による場合よりも長い処理時間で『処罰される』というようなことになってはならない」と述べている30

 

  V.DATEV方式

  本稿において既に何度か登場しているDATEVは、Datenverarbeitungsorganisation des steuerberatenden Berufs in der Bundesrepublik Deutschland eGの略語である。

  DATEVは、1966年2月14日に税理士の自治的組織として設立された。現在は、税理士、公認会計士などから成る協同組合組織となっている。1971年に最初の情報センターを設立し、1974年に情報遠隔伝送システムの導入、1975年に租税法データバンクの解放、1976年には情報遠隔伝送網の設立を行っている31。このように、設立当初から電子計算機に関わる業務を行っており、国内課税および国際課税、経済情報などの提供も行う(オンラインまたはCD-ROMによる)など、幅広い業務を行っている。ここでは、主題に即して、電子申告のみを扱うことにする32

  既に記したように、DATEVは、バイエルン州を皮切りに1994年より電子申告を扱うようになった。最初は所得税の申告に限られていたが、1997年から営業税および売上税に関しても電子申告を扱うようになった。DATEVによれば、法人税に関しても電子申告を扱う予定であるとのことであり、既にプログラムを開発しているようであるが、実施されている州は(199911月の時点において)まだ存在していない。

  DATEV方式は、電子申告の一方式ではあるが、専用回線を用いるシステムであり、電話回線によるインターネット網を用いていない33。この点がELSTER方式と異なる。

  DATEV方式の概要は、次の通りである。まず、加入者(例、税理士)は、申告情報を、専用回線を通じてDATEVの電子計算機センターに伝送する。伝送された申告情報は、やはり専用回線を通じて上級財政管理局または税務署に伝送される。これに対し、上級財政管理局または税務署は、DATEVの専用回線を通じて電子計算機センターに租税決定情報を伝送する。この租税決定情報は、やはり専用回線を通じて加入者の端末機(パソコン)に伝送されることになる。加入者による申告は、DATEVが提供する申告用プログラムを利用することにより行われる。

  DATEV方式の長所として上げられているのは、税務署における申告把握の失敗を回避しうること(従って納税義務者側からの異議件数も減らすことができる)、税務署側が租税決定記録を返送することによる合理化機能、および、税務署側の処理期間の短縮により租税の還付手続も迅速化することである34。しかし、納税者および税理士側にとっての長所が他に存在するか否かは問題である。現に「基本的には今まで通り署名した申告書を提出しなければならない。電子申告で認められるのは付加価値税の仮申告と賃金税の申告だけであ」り、「税理士のメリットとしては、送り返されたデータを再入力する必要がない、せいぜいそれだけのことであ」って「税理士はそれによって余計に仕事が増え、税務署は仕事が減る」という意見がある35。税理士側には、少なくとも現在の段階において(方式の如何を問わず)電子申告を不要と考える意見、これまでよりも仕事の負担を重くするだけであるという意見が根強いようである36

  個人情報の保護(セキュリティなど)についてであるが、DATEV方式はインターネット網を利用しないため、外部からの侵入の可能性はELSTER方式よりも低いものと考えられる。申告情報は、税理士事務所から申告情報を伝送する際に暗号化される(方式などの詳細は不明)。暗号化された情報を読み取る際には鍵番号を要する。この鍵番号は「申告書に記載されているもので、税務署も申告書を見なければデータを読めないようになっている」37。しかし、このようにしても、税理士側の心理的抵抗は容易に拭い去れない。のみならず、この鍵番号の存在は、電子申告とはいえ、結局のところ紙による申告を併用せざるをえないということを意味し、証拠書類を郵送しなければならないこととあいまって、電子申告を導入する意義を減殺しているのではないかと思われる。今後―と言っても、すぐ後に述べるように、DATEV方式の存続期間は短いものと予想される―、DATEV方式がいかなる発展を遂げるか、注目される。

  なお、税務当局は、将来、DATEV方式とELSTER方式とを統一するという意向を有する。これについて、「DATEVと税務行政との間における、電子的納税申告の記録交換という領域的試み(Feldversuch)は、税務行政によって開発されたELSTERのモジュールがDATEVによって試行された方式の機能に到達した後、18ヶ月で、最も早ければ20011231日で終了する」という申し合わせが、DATEVと税務当局との間においてなされている38。このことは、機能面においてELSTER方式がDATEV方式に追いつくならば39DATEV方式はその役目を終える、ということを意味する。

  ここで、DATEV方式による電子申告の実績などを概観しておく。

  所得税の電子申告:毎年約300万件にのぼり、バイエルン、ヘッセン(一部)、ノルトライン・ヴェストファーレン、ラインラント・プファルツ、ザクセン、ザクセン・アンハルト、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン、テューリンゲンの各州において行われている。ヘッセン以外の州においては所得税課税の租税決定も電子的に伝送される。

  売上税の電子申告:バイエルン、ヘッセン(一部)、ラインラント・プファルツ、ザクセン、ザクセン・アンハルト、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン、テューリンゲンの各州において行われている。やはりヘッセン以外の州においては売上税課税の租税決定も電子的に伝送される。

  営業税の電子申告:バイエルン、ヘッセン(一部)、ノルトライン・ヴェストファーレン、ラインラント・プファルツ、ザクセン、ザクセン・アンハルト、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン、テューリンゲンの各州において行われている。ヘッセンおよびラインラント・プファルツ以外の州においては営業税課税の租税決定も電子的に伝送される。

  法人税の電子申告:まだ実際に利用されていない。

  なお、DATEVは、相続税および贈与税の申告のためのソフトも開発している。しかし、このソフトが電子申告に生かされるか否かは不明である。

 

  W.ELSTER方式

  ELSTERは、ドイツ語のelektronische Steuererklaerung(電子納税申告の意)から作られた略語である。

  ELSTER方式は、連邦大蔵省の関与の下、同省の言葉を借りるならば諸州の税務行政当局により開発された―但し、実際にはミュンヘン上級財政管理局のソフトウェア開発部門であるミュンヘン電子情報処理局(EDV-Stelle Muenchen)が開発したようである40―、連邦全体に向けた統一的な方式であり、具体的には納税申告(所得税、売上税、営業税など)および事前申告(Voranmeldung.売上税法第18条第1項・第2項、所得税法第41a条第1項第1号を参照)のためのソフトウェア、およびDATEV方式と異なる情報伝送方式を指す。

  この方式のソフトウェアは、納税申告の表示および電子伝送を可能とするものであり、ソフトウェア提供者に無料で配布される41。また、ELSTER方式のソフトウェア(プログラム)が市販されている42

  このソフトウェア(テレモジュールとも言われている)の機能などについて、連邦大蔵省は次のように説明している。

  「テレモジュールは、これまでよりも多くの機能を有する(――DATEV方式のソフトウェアなどよりも、ということか。引用者注)。第一に、テレモジュールは、既に納税者または税理士により行われた蓋然性審査(Plausibilitatsprufung)の後に、暗号化された申告情報の具体的な伝送を引き受け、受理された決定情報の暗号を解除する。第二に、テレモジュールにより、移行段階の間―紙による申告が署名とともになおも必要とされる限り―いわゆる「圧縮された納税申告」(komprimierte Steuererklaerung)が表現される。その際、租税通則法(AO)第150条第1項にいう官署により定められた書式用紙の新たな形態が重要である。その内容は、本質的に、その時々の場面における課税根拠のための申告に制約され、そのことによりこれまでよりも紙を必要としない。その上、この方法で、電子的に伝送された情報と納税義務者により署名された紙の申告が一致しているということが保障される」

  さらに、ドイツ納税者同盟によれば「『圧縮された納税申告』の内容は、本質的に、その時々の場面における課税根拠のための申告に制約される。租税の秘密を保護するために、申告情報は、暗号化され、連邦構成諸州の計算センターに転送される」。

  このELSTER方式の開発に、とくに積極的であったのは、DATEV方式の場合と同様にバイエルン州であったようである。前述の通り、ミュンヘン電子情報処理局が開発の主体となっているし、バイエルン州大蔵省も「パソコンで納税申告」(Steuererklaerung mit dem PC)という記事をホームページで公開し、ELSTER方式の宣伝に努めている43。また、先に引用したHuber氏の発言も、このELSTER方式を念頭に置いている。

  それでは、何故、既にDATEV方式が存在するドイツにおいて、ELSTER方式が開発され、運用され始めたのであろうか。

  その理由として、まず、EUに象徴されるヨーロッパ統合への動向、さらに経済の国際化(および規制緩和)との関連があるものと思われる。残念ながら、私は、この点について明言する資料を見出せなかった。しかし、敢えて推測するならば、税務行政には、段階的に進むヨーロッパ統合、さらに経済の国際化により、経済(取引活動など)のボーダーレス化が進行すれば、DATEV方式のような「会員限定」システムでは対応できない、という思惑があるのではなかろうか。インターネット網を活用した電子納税申告システムが開発された理由の一つはここにあるものと思われる。

  次に、納税義務者の全てが納税申告に際して税理士に依頼する訳ではない、という事情がある。DATEVもこの点を認めている。当初、税務行政は、DATEV方式による電子申告のプログラムを自ら利用し、他のソフトウェア提供者にも利用させ、電子申告を利用する者の範囲を拡大することを考えていたようである。しかし、DATEVの規約によれば、業務活動はDATEVの会員のみに許される。「税務行政には、納税申告の比較的多くの部分が、税理士の助言を受けない納税申告者に由来することが明らかであった。従って、税務行政はこの領域において効果的に合理化の作用に到達することを志向するのであれば、税務行政は、あらゆる納税義務者によって利用可能であり、税理士だけが利用しうるのではない方式を提供しなければならなかった」44

  既に述べたように、ELSTER方式はインターネット網およびダイアル・イン・サーバー(テレボックスを利用した専用回線)によるものである。DATEV方式がDATEV加入者以外に利用されないのに対し、ELSTER方式はインターネット網をも利用することから、パソコンを所持し、インターネット網を利用しうる者であれば、あとはソフトウェアをパソコンに組み込むだけでよいということになる。連邦大蔵省によれば、ELSTER方式は「納税申告の提出および処理を、現代的な通信手段の投入により、市民にこれまでよりやさしく、しかも行政にとってこれまでより費用のかからないものに形作ろうという目的を追求した」ものであるから45、インターネット網の利用は当然の帰結であろう。

  税理士の場合は、ダイアル・イン・サーバー(テレボックスを利用した専用回線)、またはインターネット網を利用し、納税申告および事前申告をパソコンで行い、伝送する。伝送された申告情報は、ダイアル・イン・サーバーの場合にはテレボックスを経由し、インターネット網の場合にはウェブ・サーバーを経由して、税務行政の電子計算機センターに送られる。家庭において申告をする納税義務者はインターネット網のみを利用することになるが、その他の点については税理士の場合と同じである。税務行政からの租税決定は、テレボックスもしくはウェブ・サーバーを経由して税理士に送られ、またはウェブ・サーバーを経由して上記の納税義務者に送られる。

  一般的に、インターネット網を利用する場合、個人情報の保護(セキュリティなど)が問題となる。ELSTER方式の場合には、納税申告の情報は連邦構成諸州の電子計算機センターに移送される。その際、情報は、3-DES型(鍵の長さは112Bit)およびRSA型(鍵の長さは1024 Bit)を利用した「ハイブリッドな暗号化」を施される46。情報は、少なくとも15年間保管されなければならない47。しかし、暗号化によってセキュリティなどの程度を高めるとしても、DATEV方式のように専用回線のみを用いる訳ではないから、納税申告記録の伝送先を誤るということも起こりうるし、何よりも第三者による納税申告記録の「横取り」(Abfangen)が生じうる。DATEV側はこうした点を問題視して、DATEV方式の優越性(の一つ)を主張する48

  また、ELSTER方式による電子申告の際、給与税票などの証拠書類はどのように扱われるのか。この点について、ELSTER方式を推進する側の説明は歯切れが悪い。証拠書類を電子的に伝送するということも断念されてはいないとのことであるが、現段階において、証拠書類は郵送により提出されなければならない。但し、この点は、今後の情報技術の発展などに負うところが大きいであろう。

  さらに、電子申告の情報が多岐にわたる場合、または誤っている場合には、電子申告ではなく、紙による申告のほうが標準とされる。

  ELSTER方式は、昨年(1999)年1月1日より試験段階としての運用を開始した。当初――1999年は1998年度の所得に関する査定年である――は所得税法第25条および同法施行令第56条に基づく所得税申告のみについて運用され、本年(2000年)から売上税および給与税などについても運用されるとのことである49

  ELSTER方式は、本年に入ってから全ての州において運用されるようになった。その内訳をみると、1999年1月1日から運用されているのは、バイエルン、ラインラント・プファルツ、ザールラント、ザクセン、ザクセン・アンハルト、テューリンゲンの各州である(全税務署)。その後、ブランデンブルク州(2月2日より。全税務署)、メクレンブルク・フォーアポメルン州(2月2日より。当初は一部の税務署においてのみであったが、月1日より全税務署)、バーデン・ヴュルテムベルク州(6月7日より。当初は一部の税務署においてのみであったが、1129日より全税務署)、ノルトライン・ヴェストファーレン州(6月15日より。全税務署)、ニーダーザクセン州(7月1日より。ヒルデスハイム税務署のみ)、ヘッセン州(9月20日より。一部の税務署のみ)、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州(12月1日より。全税務署)、ベルリン州(12月1日より。全税務署)、ハンブルク州(12月1日より。全税務署)において運用されている。ブレーメン州については「1999年後半の経過において、全税務署とともに」運用が開始されるとのことであったが502000年になってから運用が開始された。

  このようにみると、南ドイツおよびベルリン州を除く旧ドイツ民主共和国領の州における導入が早いのに対し、旧来からの連邦構成諸州、とくに北部の州における導入が遅れたという結果になる。また、DATEV方式が運用されている州のうち、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州において、ELSTER方式の運用開始が遅れた。連邦大蔵省の説明によれば「とくに情報保護法上の、および技術上の理由から、連邦全体において、従って全ての州において、しかも全ての税務署において行われているのではない」とのことであるが、詳細は説明されていない。また、ケルン税理士会副会長氏(1998年当時)は、DATEV方式についてではあるが「導入の遅れは、税務署側の問題で、州のコンピューターと適合させなければならず、」ELSTER「方式の動向を見ているところでは導入が遅れている」と述べているが51、これも、ELSTER方式の導入過程をみる限り、不正確である。

 

  X.税理士業務への影響

  この点については、資料の関係上―多分に収集上の問題に帰せられる―不明な点が多いが、推測などを交えつつ、若干の考察をしてみたい。

  DATEV方式の場合、DATEV自体が、前述のように税理士などからなる業界団体的性質を有しており、加入者でなければこの方式を利用できないことになるので、税理士業の存在そのものを脅かすものではないと思われる52。しかし、この方式は、電子申告とはいえ、完全にペーパーレス化を果たすシステムではない。むしろ、紙による申告との並存を前提としている。そのため、税務行政の側はともわれ、税理士側の業務(ないし負担)は増える可能性もある(現にそのように指摘されている)。

  それでは、ELSTER方式についてはどうであろうか。この方式は、構造上、納税義務者自身が(税理士に依頼することなく)納税申告をなしうるために、税理士業の存在に多少とも影響を及ぼしかねないものであろう。パソコンに親しんでいる市民であれば、ソフトウェア販売会社を通じて提供されるELSTER方式のソフトウェアを利用して納税申告を容易になしうる。そうであれば、とくに申告額が多くない者の場合、わざわざ税理士に依頼する必要などない。

  しかし、ELSTER方式は、現在、所得税申告についてのみ利用されているにすぎない。そして、今後も所得税、売上税、営業税などについて運用されるものの、導入される範囲はそれほど大きなものではないであろう(前述のように、DATEVは相続税および贈与税向けのソフトウェアを開発しているが、ELSTER方式については不明)。また、証拠書類、署名、情報保護(セキュリティなど)の問題が残されている。証拠書類などについても完全に電子申告をなしうるようになれば、自ら電子申告をなす納税義務者は増加するであろうが、まだそのような状態には至っていない。しかも、電子申告が普及するとしても、そのためのソフトウェアが普及し、発展するとしても、申告の際に生じる法律上の疑義などをソフトウェアが完全に解消してくれることにはならないであろう。その意味において、電子申告の導入は、納税義務者の選択の幅を拡大することにはなるが、税理士業の存在そのものを脅かすものではないと思われる。

 

  (1)  日本税理士会連合会情報システム委員会「電子申告制度の研究について(中間答申)」(平成11年5月11日)1頁も参照。

  (2)  ドイツ・テレコム社のX-400

  (3)  ドイツの電子申告制度については、税理士界平成111115日付8面に掲載された記事「報告:ドイツにおける電子申告の現状」も参照。なお、現在判明している限りのことであるが、ヨーロッパ大陸、とくにEU加盟国において電子申告制度が導入されているのは、フランス、ドイツおよびオランダである。フランスにおいては、1991年から電子申告制度が実施されている(速報税理平成11年7月11日付10頁を参照)。また、オランダについては、東京税理士会ドイツ・フランス視察団編『1998 ドイツ・フランス視察報告書――EU市場統合における職業専門家の現状――』(1999年、東京税理士会)54頁を参照。フランスおよびオランダの電子申告制度について触れる日本語文献は、前記のものしか参照しえなかった。いずれも、その存在が指摘される程度であり、詳しい内容は紹介されていない。本稿においては、私の能力および資料の関係もあり、フランスおよびオランダの電子申告制度を扱わないこととする。Vgl. dazu "Kanzlei und Technik, Elektronische Steuererklaerung, Gegen die Papierflut", DATEV-Magazin 2-99, S. 29.

  (4)  Wolfgang Jakob, Abgabenordnung, 2. Auflage, 1996, §7 Rn. 3.

  (5)  Steueranmeldung(en)を直訳すると「納税申告」となるが、Steuererklaerungenと区別がつかなくなる。適訳を見出せなかったので、ここでは原語のままとする。

  (6)  所得税法施行令(EStDV)第56条も参照。

  (7)  Vgl. etwa "Pass der Festplatte", Der Spiegel, 16 Maerz 1998, S. 214.

  (8)  Siehe dazu "Kanzlei und Technik", a. a. O., S. 28.

  (9)  Automation in der Steuerverwaltung : Steuerdaten-Abruf-Verwaltungsregelung, 24. September 1998, BStBl. 1998, Teil T, Nr. 20, S. 1205.

  (10  Verordnung ueber die Abgabe von Steueranmeldungen auf maschinell verwertbaren Datentraegern und ueber Datenfernuebertragung (Steueranmeldung-Datenuebermittlungsverordnung - StADUV) von 21. Oktober 1998, BStBl. 1998, Teil T, Nr. 21, S. 1292. これは、BGBl. 1998, Teil T, S. 3197に掲載されているとのことであるが、事情により参照できなかった。

  (11  Automation in der Steuerverwaltung : Steueranmeldung-Datenuebermittlungs- Verordnung ? StADUV ? von 21. Oktober 1998, BStBl. 1998, Teil T, Nr. 21, S. 1295.これは、前注に掲げたものを施行するための命令である。

  (12  Bundesministerium fuer Finanzen, ELektronische STeuerERklarung (ELSTER) ? Steuererklaerung via Internet, aus: http://www.bundesministerium.de/fachveroeff/AbtIV/elster.html.同ページにおいて、ELSTER方式の法的条件は「納税申告書式用紙を利用するための諸原則」および「納税申告情報を電子的に伝送するための諸原則」に関する、連邦大蔵省の手による二つの文献に要約され、連邦租税官報(Bundessteuerblatt)において公表されている」と記されている。

  (13)  「機械的に利用しうるデータ記憶媒体によるSteueranmeldungenの伝送に関する命令(Steueranmeldungの情報伝送に関する命令)」第1条第1項は、売上税法第18条に基づくSteueranmeldungen、所得税法第41条に基づくSteueranmeldungenについて電子申告をなしうる旨を規定する。

  (14  "Kanzlei und Technik", a. a. O., S. 28. なお、DATEV方式が最初にバイエルン州において運用されたことは、税理士界前掲記事においても述べられている。

  (15)  Bayerisches Staatsministerium der Finanzen, Pressemitteilung 008/98 vom 10. 01. 1998, "Zeller:In wenigen Jahren gehort die elektronische Steuererklarung zum Alltag“, in: http://www.bayern.de.SMTF/seiten/presse/mitteil/archiv/008-98/hmtl.

  (16  Bayerisches Staatsministerium der Finanzen, Pressemitteilung 153/98 vom 20. 04. 1998, ?Huber in Amberg:Der elektronischen Steuererklaerung gehoert die Zunkunft", in: http://www.bayern.de.SMTF/seiten/presse/mitteil/archiv/153-98/hmtl.

  (17)  原文および訳文からは必ずしも明らかではないが、ELSTER方式を指す。

  (18)  ウニファについては、資料を見出せなかった。

  (19  Vgl. etwa Ernst Georg Schutter, Steuervereinfachung aus der Sicht der Finanzverwaltung, in: Manfred Rose (Hg.), Steuern einfacher machen!, 1999, S. 55ff. また、ELSTER方式が導入された理由の一つが税務行政の合理化・迅速化などにあることは、連邦大蔵省、バイエルン州電子情報処理局などが明らかにしている。

  (20  Roman G. Weber, ELSTER Die neue Steuererklaerung, NJW 1999, S. 2419.なお、この論文は、ELSTER方式の概要や問題点を短くまとめており、参考になる。

  (21  Bund der Steuerzahler, Internet und Steuern, Uebermittlung der Steuererklarung auf elektronischem Wege, in: Der Steuerzahler, Ausgabe 3/99, aus:http://www.steuerzahler.de/. Vgl. http://62.157.211.67/anwender/info.html; http://www.fm.nrw.de/aktuelles/pressmitteilingen/elster.html; http://www.brandenburg.de/land/mdf/st/elster.html; http://www.hessen.de/presse/hmdf/elster.html. なお、圧縮された納税申告は、簡易化された納税申告とも言われる。

  (22  Siehe naher Reinhart Ruskin, in: Franz Klein / Gerd Orlopp, Abgabenordnung, 6. Auflage, 1998, §30 Anm. 8.

  (23  Gesetz zur Fortentwicklung der Datenverarbeitung und des Datenschuetzes von 20. Dezember 1990 (Bundesdatenschuetzgesetz), BGBl. 1990, Teil T, S. 2954.

  (24)  東京税理士会ドイツ・フランス視察団編・前掲書53頁。

  (25  Weber, a. a. O., S. 2418.

  (26)  松沢智『コンピュータ会計法概論』(1998年、中央経済社)267頁を参照。Siehe Bernhard Brockmeyer, in: Klein / Orlopp, a. a. O., §146 Anm. 6.; Rolf Ax / Thomas Groese / Juergen Melchior, Abgabenordnung und Finanzgerichtsordnung, 16. Auflage, 1999, Rn. 531.

  (27)  ちなみに、AO第150条第5項は「納税申告の書式用紙に、課税証拠書類の補充に向けて統計の目的のために租税統計に関する法律に従って必要とされる問題が書き入れられうる。税務署は、さらに、納税義務者に、連邦教育助成法を施行するために必要とされる情報を要求しうる。税務署は、言明(申告)の審査に際して、課税にとって重要な状況の解明に際してと同じ権限を有する」と定める。

  (28  http://www.fm.nrw.de/aktuelles/pressmitteilingen/elster.html.同様の指摘は、ブランデンブルク州大蔵省(http://www.brandenburg.de/land/mdf/st/elster.html)、ヘッセン州大蔵省(http://www.hessen.de/presse/hmdf/elster.html)においてもなされる。また、http://www.steuernetz.de/topthema/TT010.htmlも同旨。

  (29  Vgl. Weber, a. a. O., S. 2147, 2149.

  (30  http://62.157.211.67/anwender/faq.htmlにおいて、電子申告の処理にも「平等取扱いの原則」が妥当すること、従って、電子申告が紙による申告よりも有利に扱われ、あるいは逆に不利に扱われてはならないことが明言されている。

  (31)  また、1982年9月8日には、日本のTKCと提携契約を結んでいる。

  (32)  なお、DATEVの活動やDATEV方式などを扱うドイツ語の文献として、Michael Butz (Referent), Stand und Entwicklungstendenzen der EDV- Instrumente zur betriebswirtschaftlichen Beratung, in: Bundessteuerberaterkammer (Hg.), Steuerberaterkongressreport 1989, S. 209ff.; Michael Leistenschneider / Karl-Adolf Hoewel, Nurnberg, Elektronischer Rechtsverkehr, in: Steuerberaterkongressreport 1997, S. 321ff.がある(私が収集しえたもの)。

  (33)  "EDUe-ELSTER: Ein Vergleich aus berufsstandischer Sicht, Warum EDUe?", DATEV-Magazin 2-99, S. 31によれば、DATEVの電子計算機センターと税務行政官庁との連絡回線にはISDNを使っている。また、同記事は、ELSTER方式がインターネット網を用いることについて、納税申告記録が他人によって横取り(Abfangen)されうることなどをあげ、DATEV方式の優越性を主張する。

  (34)  この他、DATEV自身があげる長所として「Mantelbogenfunktionalitaetの模造」が税務行政の側から断念されることがある。しかし、私は意味を理解しえなかった。

  (35  1998年のケルン税理士会副会長氏(Ernst-Dieter Grafe氏であると思われる)の発言による。東京税理士会ドイツ・フランス視察団編・前掲書52頁を参照。

  (36  http://www.datev.de/d.datev98/vortrag.htmlStrasse der Meinungen1998 DATEV会議参加者の発言が掲載されている。その中には「私の依頼人は私を必要としているのであって、私のパソコンを必要としているのではない」という意見(デュッセルドルフの税理士Helfried Behr氏の発言)もある。

  (37  1998年のケルン税理士会副会長氏の発言による。東京税理士会ドイツ・フランス視察団編・前掲書52頁を参照。

  (38)   "Kanzlei und Technik", a. a. O., S. 30.

  (39  Vgl. http://www.datev.de/d/aktuell/steuer/up.html.

  (40  ELSTERのホームページは、ミュンヘン電子情報処理局により運用されており(Vgl. http://62.157.211.67/wir/ueberuns.html)、http://62.157.211/67/welcome.htmlにおいて、ELSTER方式はミュンヘン電子情報処理局により開発されたことが明言される。

  (41  http://62.157.211.67/hersteller/public/Ueberlassungsvertrag.html において、ELSTER方式のソフトウェア配布契約(Ueberlassungsvertrag.文言による限り、使用許諾契約とは若干異なる)の雛型が公開されている。

  (42)  ドイツ納税者同盟がホームページにおいて例としてあげているものはWISO-Sparbuch 97/98Taxman Steuererklaerung '98およびTK Steuer-Manager 98/99である(http://www.steuerzahler.de/body.cfm?id=416)。また、Wolfram Viefhues, ELSTER und die elektronische Steuererklaerung, NJW-CoR 1999, S.214には、上記三種の他にも市販のソフトウェア(プログラム)が、ドイツのコンピューター専門誌による評価とともに紹介されている。なお、http://62.157.211. 67/anwender/faq.htmlによれば、現在のところ、ELSTER方式は、Windows 95Windows 98およびWindows NT 4で動作するが、LINUXでは動作しないとのことである(Weber, a. a. O., S. 2418, Fn. 7は「LINUXへの拡張も可能であると思われる」と述べる)。

  (43  http://www.bayern.de/STMF/seiten/blickp/steuerpc.html.

  (44  "Kanzlei und Technik", a. a. O., S. 29.また、1998年のケルン税理士会副会長氏は、ELSTER方式の導入は「DATEV方式が浸透しなかった」ことが原因であると発言している(東京税理士会ドイツ・フランス視察団編・前掲書54頁)。

  (45  Bundesministerium fuer Finanzen, a. a. O.

  (46  3-DESData Encryption Standard)型もRSA(開発者のR. L. Rivest, A. Shamir, L. Adlemanに由来)型も、ともに暗号方式(処理手続)の一方式である。(3-)DES方式の安全性は現在もなお高いと言われる。また、RSA方式は公開鍵暗号方式の一種であり、暗号化が容易で解読が難しいとされる(素因数分解を用いるため)が、高速処理には向かない。さしあたり、今井秀樹『暗号のおはなし―情報セキュリティの新しい鍵―』(1993年、日本規格協会)33頁、84頁を参照。

  (47  http://www. bayern.de/STMF/seiten/blickp/steuerpc.html.

  (48  "EDU-ELSTER", a. a. O., S. 31.

  (49  ELSTER方式の運用が開始された当時、DATEVは、ELSTER方式が所得税の納税申告のみを扱うことをあげ、この点をDATEV方式の優越性の一つとしていた(Siehe naher "EDUe-ELSTER", a. a. O., S. 32; Ursula Weigend, ELSTER und EDUe im Vergleich, Quo Vadis DATEV?, in: Sonderdruck aus "Service Punkt Nr. 41 Marz/April 1999", S. 2)。

  (50  http://62.157.21.67/anwender/beteiligteLaender.html.

  (51)  東京税理士会ドイツ・フランス視察団編・前掲書52頁。

  (52)  税理士界前掲記事も参照。

 

  付記:(報告書においては削除されています)

  資料収集にあたり、谷口勢津夫先生(甲南大学法学部教授)から御教示を受けました。古橋真智子氏(日本税務研究センター研究課課長)にはドイツ連邦税理士会への資料照会に際してご尽力をいただきました。また、関本千佳代氏(日本税務研究センター専従研究員)および土田伸也氏(中央大学大学院法学研究科博士後期課程、ドイツ・ヴュルツブルク大学法学部に留学中)の御協力を得ました。さらに、コンピューター関係の用語などについて、大岩幸太郎先生(大分大学教育福祉科学部教授)および佐伯和利先生(大分大学教育福祉科学部講師)の御教示を受けました。末筆ながらここに記し、御礼を申し上げます。

  Herrn Assessor Gerhard Gaudig, dem Geschaeftsfuehrer der Bundessteuerberaterkammer, und Herrn Kempf, dem Vorstandsvorsitzenden der DATEV, danke ich fuer Ihre freundliche Hilfen bei der Beschaffung der Materialien, die wir in Japan nicht sammeln und lesen koennen.

 

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