07    租税法と信義誠実の原則

 

 

 信義誠実の原則は、元々債権法の領域におけるドイツ法の一般原則であり、法律関係の当事者は相手方の信頼を裏切らないよう、誠意をもって行動すべしというものである。

 なお、同『行政法読本』〔第2版〕(2010年、有斐閣)15頁、65頁を参照。

 しかし、信義誠実の原則は、租税法律主義、さらに法律による行政の原理と抵触する可能性を有する。公法の分野において信義誠実の原則をそのまま援用すると、租税法律主義や法律による行政の原理と抵触し、違法な行政活動を有効としてしまう場合があるからである

 「行政法講義ノート」〔第6版〕の「第4回  法律による行政の原理」も参照していただきたい。

 租税法において信義誠実の原則の適用が問題となるのは、税務官庁の表示または不表示である。代表的な判例として、まずは文化学院非課税通知事件をあげておく。

 事案は次のとおりである。X(文化学院)は、当時、民法上の法人であった。Xは、直接に教育の用に供する土地および建物について、東京都某税務事務所長に対し、固定資産税を非課税として欲しい旨の文書を提出した。税務事務所長は、この土地および建物が地方税法第348条第2項第9号に該当するものと誤認し、1953(昭和28)年9月17日付で非課税とする通知を発した。それから8年ほど経った1961(昭和36)年6月に再調査がなされ、Xが学校法人などの法人ではなかったことがわかり、同号に該当しないとして、税務事務所長は同年9月末日付で価格決定通知書をXに対して発し、同年1010日付で徴税令書を発して1957(昭和32)年分にまで遡って固定資産税を賦課した。同年1120日にはXに対して督促状を発したが、Xが納税しなかったので、翌1962(昭和37)年2月27日に税務事務所長は徴収事務をY(東京都知事)に引き継ぎ、Yが同年9月12日付で本件土地について差押手続を行った。XはYに対して異議の申立てを行ったが、Yは1963(昭和38)年2月12日付でXの異議を棄却する旨の決定を行い、同月15日付でXに通知した。

 ※後に学校法人となったようである。なお、2018年3月をもって閉校となった。

 東京地判昭和40年5月26日行裁例集16巻6号1033頁(一審判決)は、信義誠実の原則(禁反言の原則)の適用を認め、賦課処分を無効とした上で差押え処分を取り消した。判旨より、一般論を述べる部分のうちの一部を引用しておく。

 「思うに、自己の過去の言動に反する主張をすることにより、その過去の言動を信頼した相手方の利益を害することの許されないことは、それを禁反言の法理と呼ぶか信義誠実の原則と呼ぶかはともかく、法の根底をなす正義の理念より当然生ずる法原則(以下禁反言の原則という。)であつて、国家、公共団体もまた、基本的には、国民個人と同様に法の支配に服すべきものとする建前をとるわが憲法の下においては、いわゆる公法の分野においても、この原則の適用を否定すべき理由はないものといわねばならない。(すでに公法の分野において確立された法理と目されている次の法理、すなわち相手方に利益を付与する行政処分については、その処分が違法であつても、処分庁が後にこれを自ら取り消すことには制限があるとする法理の如きは、この原則の一適用を示すものと解される。)それのみならず、国家、公共団体の行政は、いわゆる権力作用によつてのみ行なわれるものではなく、実際上、法の根拠を欠くとはいえ、法の禁止しているものとは認められない数多くの、事実上の行政作用(たとえば、行政法規の解釈、適用等に関する通達、その他本件で問題となつている非課税決定通知なども、かような事実上の行政作用に属する。)によつて行なわれるものであり、ことに、国民の社会生活が公法法規により規制される度合が増大し、しかも、この種の法規がますます専門技術化するに応じて、かような事実上の行政作用の果す役割りはますます重要なものとなり、その反面、国民は、善良な市民として適法に社会生活を営むためには、かような事実上の行政作用に依存しこれを信頼して行動せざるを得ないこととなる。ことに、租税法規が著しく複雑かつ専門化した現代において、国民が善良な市民として混乱なく社会経済生活を営むためには、租税法規の解釈適用等に関する通達等の事実上の行政作用を信頼し、これを前提として経済的行動をとらざるを得ず、租税行政当局もまた、適正円滑に税務行政を遂行するためには、かような事実上の行政作用を利用せざるを得ない。かような、事態にかんがみれば、事実上の行政作用を信頼して行動したことにつきなんら責められるべき点のない誠実、善良な市民が行政庁の信頼を裏切る行為によつて、まつたく犠牲に供されてもよいとする理由はないものといわねばならない。」

 「禁反言の原則は、もともと、制定法上、形式的には適法とされる行為であるにかかわらず、個別的、具体的事情の下で、これを行なうことが法の根底をなす正義の理念に反するところから、これを行なうことを許さないとするものであつて、前述のような事実上の行政作用の果している役割りにかんがみれば、個々の場合に、租税の減免が法律上の根拠に基づいてのみ行なわるべきであるとする原則を形式的に貫くことよりも、事実上の行政作用を信頼したことにつきなんら責めらるべき点のない誠実、善良な市民の信頼利益を保護することが、公益上、いつそう強く要請される場合のあることは否定できないところであるから、租税の減免が法律上の根拠に基づいてのみ行なわるべきであるということは、税法の分野に禁反言の原則を導入するについて、その要件及び適用の範囲を決定する場合に考慮を払うべき要素の一つとはなつても、この原則の導入を根本的に拒否する理由とはなり得ないものと解すべきである。」

 「以上に判断したとおり、禁反言の原則は、いわゆる公法分野についても、その適用を否定すべき根本的理由はないと解すべきであるが、このことは、右の原則が私法分野におけると同じ要件の下に、同じ範囲、程度において適用されると解すべきことの理由となるものではなく、公法分野とくに税法の分野においては、前述のように、積極、消極両面の行政作用につき厳格な法律の遵守が要請されていることにかんがみれば、かような法分野について禁反言の原則がいかなる要件の下に、いかなる範囲において適用されるかについては慎重な判断を要することはもちろんである。すなわち、この原則の適用の要件の問題としては、とくに、行政庁の誤つた言動をするに至つたことにつき相手方国民の側に責めらるべき事情があつたかどうか、行政庁のその行動がいかなる手続、方式で相手方に表明されたか(一般的のものか特定の個人に対する具体的なものか、口頭によるものか書面によるものか、その行動を決定するに至つた手続等)相手方がそれを信頼することが無理でないと認められるような事情にあつたかどうか、その信頼を裏切られることによつて相手方の被る不利益の程度等の諸点が、右原則の適用の範囲の問題としては、とくに、相手方の信頼利益が将来に向つても保護さるべきかどうかの点が吟味されなければならない。」

 この判決に対してYが控訴した。東京高判昭和41年6月6日行裁例集17巻6号607頁は、Yの控訴を認容して一審判決を破棄し、Xの請求を棄却した。信義誠実の原則に関する部分を引用する。

 「本件の場合、千代田所長は昭和二八年九月一七日付で被控訴人に対し非課税取扱いの通知をした。しかし、この通知が免税その他何らの法的効果を生ずるものでないことは前記認定のとおりであつて、それは、単に、本件土地建物が地方税法三四八条二項九号所定の非課税の固定資産に該当すると認められるという所長の見解、ないし、その見解からして当然右土地建物については非課税の取扱いになるという部内の方針を、便宜、文書で被控訴人に知らせた事実上の措置にすぎない。また、被控訴人としても、右通知があつたのでそれではじめて本件土地建物が非課税であると誤解するに至つたとか、本来は課税されるべきものなのを右決定通知により免税になつたと誤信したとかいうのでない。まして、右通知による誤解、誤信のゆえに被控訴人が特段の行動をしたというのでもない。(そのような事情を認めるべき資料は存しない。)被控訴人は従前より本件土地建物は非課税と誤解しており、それゆえに私立学校法附則六項による組織変更もしなかつたのであつて、ただ、右通知により、被控訴人はその誤解を深め、安心して従来どおりの学校経営を続けたというにすぎない。(仮にこのような通知がなかつたとしても、千代田所長が右誤解のもとに事実上非課税の取扱いを続ける限り、同じように、被控訴人もその誤解を深めて、そのつもりで学校経営を続けたであろうことは推測にかたくないところである。)かような誤解に基く違法な取扱いは少しでも早く是正されるべきであつて、千代田所長が昭和三六年になつてこれに気づき、法の命ずるところに従い、法の許容する範囲内で昭和三二年度まで遡つて本件課税処分をした、これを禁反言の法理に反するものとして無効ということはできないものといわねばならない。」

 「もつとも、法の解釈・適用の誤りに基く違法な措置にせよ、右のように長年にわたつて課税庁が非課税の取扱いを続け、そのため納税者の方も非課税と信じてそのつもりで経営経理を続けてきているとき、一度に、過年度に遡つて多額の課税をすることにより、納税者は甚大な支障、不測の損害を受けることがないとはいえず、事情いかんによつてその救済が考慮されねばならぬ場合もあり得ようが、本件の場合、被控訴人の全立証によるも、本件課税処分が禁反言の法理ないしはそれを含む信義誠実の原則に違背し、当然無効と解すべき理由をみいだすことができない。」

 それでは、租税法の領域において信義誠実の原則はどのような場合に認められるべきか。事案は多様たりうるため、一義的に判断することはできない。また、租税法律主義が妥当するのであるから、これとのバランスが求められる。租税法の領域における信義誠実の原則の適用について基準を示したのが、最三小判昭和621030日訟務月報34巻4号853頁である。まず、事案を紹介しておく。

 Xは、Aが経営する酒屋に勤めており、しばらくしてからは実質的に経営をなすようになった。Aは青色申告について所轄税務署長Yの承認を受けており、昭和29年分から昭和45年分まで、事業所得に関する青色申告はAの名義で行われていた。しかし、昭和47年3月に行われた昭和46年分の青色申告はAの名義ではなく、Xの名義で行われている。Xは青色申告についてYの承認を受けていなかった(そもそもそのための申請を行っていなかったようである)が、どういう訳かYはX名義の青色申告書を受理し、その後、昭和47年分から昭和49年分についても青色申告用紙をXに送付し、Xの青色申告を受理していた。なお、Aは昭和47年秋に死亡している。

 或る日、YはAの相続人について相続税の調査を行った。その際にXが青色申告の承認を受けていないことを知った。そこで、Yは昭和48年分および昭和49年分の青色申告の効力を否認し、白色申告とみなして更正処分(以下、本件更正処分)を行った。Xは、本件更正処分が信義誠実の原則に違反するなどとして、本件更正処分など複数の処分についてYに異議申立てを行い、取消訴訟を提起した。

 福岡地判昭和56年7月20日訟務月報27122351頁は、本件更正処分についてXの請求を認容した。信義誠実の原則に関する部分を引用する。

 所得税法143条によれば、事業所得を生ずべき業務を行う居住者が青色申告書による確定申告をするには、税務署長の承認を受けることが必要とされており、税務署長の承認のなされていない以上、一般的には、青色申告書の提出による確定申告がなされても当然には青色申告としての効力を認めることができないことはいうまでもない。しかしながら、青色申告制度が課税所得額の基礎資料となる帳簿書類を一定の形式に従って保存整備させ、その内容に隠蔽、過誤などの不実記載がないことを担保させることによって、納税者の自主的かつ公正な申告による課税の実現を確保しようとする制度であることから考えると、右のような制度の趣旨を逸脱しない限度においては、仮に、青色申告書の提出について税務署長の承認がなされていなかったとしても、青色申告としての効力を認めてもよい例外的な場合があるというべきである。」

 「Xが同人の昭和46年分の所得について青色申告書の提出による所得税の確定申告をしたところ、Yはこれを受理しただけでなく、昭和47年分から同50年分までの所得税についても同人に青色申告用紙を送付し、これに従った同人の確定申告をいずれも受理するとともに、青色申告により計算された所得税額を収納してきたこと、Aに対しては既に青色申告の承認がなされており、昭和29年から同45年分まで同人名義による青色申告を継続したがその間承認を取り消されるようなことがなかったことはいずれも当事者間に争いがなく」、「昭和46年以降も事業所得の形式上の名義がAからXに変わるだけでその経営実態や帳簿書類の整備保存態勢には何らの変化がなかったことがそれぞれ認められる。したがって、こうした特段の事情がある場合には、青色申告書を提出することについて新たにX名義の承認申請をしなかったとしても必ずしも右青色申告制度の趣旨に背譎するとは考えられないから、被告が青色申告書による確定申告をいったん受理した以上、単にXが自己名義による新たな青色申告書の提出についての承認申請をしていなかったことだけで右青色申告の効力を否認するのは信義則に違反し許されないというべきである」。

 X、Yの双方が控訴し、福岡高判昭和60年3月29日訟務月報31112906頁はXの勝訴部分の一部を取り消す判断を示したが、本件更正処分については前掲福岡地方裁判所判決を支持してYの控訴を棄却した。本件更正処分についての判断は基本的に前掲福岡地方裁判所判決の引用であるが、次のような判断が付け加えられている。

 一般に税法における信義則の適用が問題とされる事案にあつては、信義則が適用され処分が違法とされた結果、納税者に与えられる非課税等の利益は、如何なる処理をしても適法となる余地のない違法なものが多い。しかるに、本件においては、Xは、青色申告の承認申請を怠りその承認がなかつたものの、前記のとおり、実質所得者の点については相当ではなかつたものの、昭和4647年分については青色申告による確定申告を受理されて納税し、昭和50年分以降はYに右更正処分によつて青色申告の承認申請のなかつたことを指摘されるや直ちにその申請をして昭和51年分以降についてその承認を受け同年分以降青色申告による確定申告、納税をしていることからも明らかなように、青色申告の申請、承認のなかつたことを除いては、昭和4849年分の青色申告による確定申告は相当であつてXが不当に課税上の利益を得るというものではない。したがつて、本件について前記の諸事情があることによつて信義則を適用して、前記各更正処分を違法として差支えない」。

 Yが上告し、最高裁判所第三小法廷は前掲福岡高等裁判所判決を破棄し、事件を同裁判所に差し戻す旨の判決を下した。信義誠実の原則の適用に関して述べている部分を引用しておく。

 「租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。そして、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより、納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、のちに右表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか 、また、納税者が税務官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるといわなければならない。

 これを本件についてみるに、納税申告は、納税者が所轄税務署長に納税申告書を提出することによって完了する行為であり(国税通則法一七条ないし二二条参照)、税務署長による申告書の受理及び申告税額の収納は、当該申告書の申告内容を是認することを何ら意味するものではない(同法二四条参照)。また、納税者が青色申告書により納税申告したからといって、これをもって青色申告の承認申請をしたものと解しうるものでないことはいうまでもなく、税務署長が納税者の青色申告書による確定申告につきその承認があるかどうかの確認を怠り、翌年分以降青色申告の用紙を当該納税者に送付したとしても、それをもって当該納税者が税務署長により青色申告書の提出を承認されたものと受け取りうべきものでないことも明らかである。そうすると、原審の確定した前記事実関係をもってしては、本件更正処分が上告人の被上告人に対して与えた公的見解の表示に反する処分であるということはできないものというべく、本件更正処分について信義則の法理の適用を考える余地はないものといわなければならない。」

 差戻控訴審判決である福岡高判昭和63年5月31日税務訴訟資料164927頁も取り上げておこう。同判決は、結局、Xの請求を棄却した。

 租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。そして、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たつては、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより、納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、のちに右表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになつたものであるかどうか、また、納税者が税務官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるといわなければなら」ない。

 「納税申告は、納税者が所轄税務署長に納税申告書を提出することによつて完了する行為であり(国税通則法17条ないし22条参照)、税務署長による申告書の受理及び申告税額の収納は、当該申告書の申告内容を是認することを何ら意味するものでなく(同法24条参照)、また、納税者が青色申告書により納税申告したからといつて、これをもつて青色申告の承認申請をしたものと解しうるものでない」。また、「税務署長が納税者の青色申告書による確定申告につきその承認があるかどうかの確認を怠り、翌年分以降青色申告の用紙を当該納税者に送付したとしても、それをもつて当該納税者が税務署長により青色申告書の提出を承認されたものと受け取りうべきものでないことも明らかであり、さらに、このことは、納税者が青色申告書による納税申告をした際、青色申告の承認手続を経ていないことにつきなんらの摘示をしないままであつたのに対し、税務署所得税課所属調査官が納税申告につき、調査をし修正申告の勧告をしたとしても同様であ」り、「本件各処分が控訴人の被控訴人に対して与えた公的見解の表示に反する処分であるということはできない」。

 「青色申告制度は、申告納税制度のもとで、(中略)青色申告の承認を受けたものに対し、課税手続上及び実体上種々の特典(租税優遇措置)を与えるものであつて、右特別の租税優遇措置を受けられないため、本来の納税義務を負担したことをもつて、重大な経済的不利益ということはできず」、「本件各処分が控訴人が被控訴人に対し著しい経済的不利益を与えたということはできない」。

 「Xは元税務職員で、青色申告の承認が必要なことは十分知つていたし、B商店の営業所得が自己に帰属すると主張できる立場にもなかつたが、A死亡後の相続税対策の一環として、営業資産の従前よりの自己への帰属を装うために、自己名義の承認手続をしないままA名義の青色申告に引き続くかたちで本件確定申告を継続したとの推認もあながちできないではなく」、「XがYの行為を信頼しその信頼に基づいて行動したとは到底いいがたく、その行動は被控訴人自身の責めに帰すべき事由によるものといわなければならない。」

 (以上、マーカー部分は全て引用者による強調箇所である。)

 

戻る

(2011年3月16日掲載)

(2011年3月21日修正)

(2011年3月31日修正)

(2012年8月5日修正)

(2013年3月3日修正)

(2017年10月19日修正)

(2019年5月24日補訂)