20    住民税の性質

 

 

 住民税は、国税ではなく、地方税であり、普通地方公共団体である都道府県および市町村、ならびに特別地方公共団体である都の特別区が課するものの総称である。課税主体の別によって都道府県民税と市町村民税とに分けられ、納税義務者の別によって個人住民税と法人住民税とに分けられる。従って、基本的な類型として、都道府県個人住民税、都道府県法人住民税、市町村個人住民税、市町村法人住民税の4種類が存在することとなる

 ※特別地方公共団体で地方税の課税団体とされるのは、都の特別区のみである。

 ※※地方税法第1条第1項第4号は、地方税を「道府県税又は市町村税をいう」と定義する。同第2項は、道府県に関する規定を都について、市町村に関する規定を特別区に準用する旨を規定する(但し、第736条第2項により、第5条第5項は準用しない)。また、第734条は都における普通税の特例、第735条は都における目的税の特例を定める。これらの規定により、都は、道府県税の他に市町村税とされるものの一部についても課税主体となる。

 ※※※碓井光明『要説地方税のしくみと法』(2001年、学陽書房)79頁は、道府県住民税の利子割も合わせて5種類の税があると述べる。現在は、やはり道府県住民税のみ、配当割および株式譲渡所得割があるので、7種類の税が存在することになる。

 なお、同書は地方税制度について最も標準的な文献の一つであるが、既に内容の一部が古くなっており、注意を要する。地方税の最新の状況を知るには、ぎょうせいから毎年発行されている地方税制度研究会編『地方税ハンドブック』(月刊「税」の付録)を参照するとよい。また、この分野における最新の体系的概説書として、川村栄一『地方税法概説国税との比較で学ぶ地方税入門』(2009年、北樹出版)がある。

 住民税は、後に述べるようにいくつかの要素を組み合わせたものである。この中には、均等割という、およそ所得課税とは性質の異なるものなどが含まれている。そのため、住民税は所得課税の一種ではないということにもなるが、所得割および法人税割という、基本的に所得課税と性質を同じくするものもある。国税たる所得税などと異なり、地方税についてはビルトイン・スタビライザーのような経済安定化機能や所得再分配機能などを担う必要がないとされていること、地方自治法第10条第2項に示される負担分任原則を受けつつ、住民税は地方公共団体が提供する公益的サービス(による受益)の対価であるという思考が背景にあり、一種の会費的な性格があるとされていることなどから、性質の異なるものを組み合わせ、地方公共団体の収入の安定化を図ったのであろう。しかし、ここにいう会費的な性格については、妥当性に疑問が残る。

 川村・前掲書46頁も参照。

 ここで、負担分任原則について説明を加えておく。この原則は、簡単に記せば地方公共団体の住民は当該地方公共団体の経費を分担すべきであるという考え方である。もう少し詳しく記すならば、「その地方公共団体が各種の行政活動を行うに当たって要する経費について、その地方公共団体の住民が負担を分かち合う」とともに、地方税をはじめとして「普通地方公共団体が住民に課するすべての負担」について「法令の定めるところにしたがって」住民が負担をなすという原則である。一般的に応益課税や平均課税の導入を正当化する役割を担うものとされているが、碓井光明教授も指摘するように、負担分任原則から一定の税制が自動的に導かれる訳ではないことには注意を要する

 ※松本英昭『要説地方自治法新地方自治制度の全容』〔第八次改訂版〕(2013年、ぎょうせい)166頁。村上順=白藤博行=人見剛編『新基本法コンメンタール地方自治法』(2011年、日本評論社)58頁[原島良成担当]なども参照。

 ※※碓井・前掲書80頁。拙稿「個人住民税の寄付金控除制度『ふるさと寄付金控除』制度と『ふるさと納税』制度についての若干の検討」税務弘報56巻3号(2008年)107頁も参照

 

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(2011年3月16日掲載)

(2011年8月19日修正)

(2012年8月12日修正)

(2014年1月22日修正)

(2014年6月24日修正)