29 固定資産税
1.固定資産税総説
固定資産税は市町村税であり、市町村住民税とともに主要な財源である。
但し、一納税義務者が所有する償却資産の価額の合計額が一定の限度額を超える場合には、その超える金額の部分について都道府県が固定資産税を課する(地方税法第349条の4、第349条の5、第740条。第742条も参照)。これは、大規模の償却資産が偏在することによる税源の偏在を是正するためのものである※。市町村が固定資産税を課することができる部分を課税定額といい、第349条の4第1項により、市町村の人口規模に応じた金額が定められる。また、同第2項は、地方交付税の算定の基礎となる基準財政需要額等の財政事情に応じて課税定額を増額する措置を規定する。なお、この制度は、政令指定都市には適用されない(第349条の4第1項。第747条も参照)。
ここにいう固定資産は、第341条第1号により、土地、家屋および償却資産の総称とされる。
土地は、同第2号によって「田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地」と定義される。
家屋は、同第3号によって「住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物」と定義される。
そして、償却資産は、同第4号により、土地および家屋以外で「事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう」と定義される。船舶、鉄道車両、定期便就航用の航空機、索道、ガス事業用のための償却資産、電気事業用のための償却資産などが該当する。但し、自動車税の課税客体(自動車)および軽自動車税の課税客体(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車、二輪の小型自動車)であるものは除かれる。
固定資産税は、シャウプ勧告を受けて行われた1950(昭和25)年度の地方税制全面改正の一環として導入された。それ以前の地租、家屋税、船舶税などの諸税を一本化したものであり、固定資産の価格を課税標準として課されるものであるから、財産税の一種として位置づけられることになるが、収益税として位置づけることも可能である※。現実には、固定資産を所有することによって得られる所得や収益によって固定資産税の納税が行われうるのであり、実はそこに着目したものと考えることもできるからである。その意味においては所得税などを補完する税であると言える。しかし、土地や家屋などの所有形態、利用形態は千差万別であるから、収益税としての性格を持たない場合もあろう。なお、固定資産税はキャピタル・ゲイン課税の性格をも有することになった、という評価もある。
※この点については、さしあたり、谷口勢津夫「固定資産税の法的課題」『地方税の法的課題(日税研論集46)』(2001年、日本税務研究センター)191頁を参照。
また、土地などの資産について、生存権的財産と非生存権的財産とを区別する考え方がある。この区別が憲法上の要請であるから、固定資産評価基準にもこの区別を反映させるべきである、ということになる。この考え方は、課税のあり方などにも深く関係するものであり、非生存権的財産である資本的財産や投機的財産などについては重く課税し、生存権的財産については軽く課税すべきである、と主張する。担税力に違いがあるからである※。この考え方は傾聴に値するものの、両者を区別する基準が明確でないなどの問題があり、判例などでは採用されていない。
さらに、固定資産税が物税であるのか人税であるのかについても議論がある。多くの論者は、固定資産税を応益課税、物税と位置づけているが、固定資産税の課税標準などの構成は必ずしも応益課税に対応しきれるものではないし、受益と負担との関係が明確にされている訳でもない※。
2.固定資産税の納税義務者
固定資産税の納税義務者は、賦課期日である1月1日(第359条)の時点における固定資産の所有者、および、質権または百年より長い存続期間の定めのある地上権の目的である土地の質権者または地上権者である(第343条第1項)。そのため、1月1日時点における所有者は、その後に所有権を有しなくなった場合であっても固定資産税の納税義務者である。
ここにいう所有者は、土地または家屋については、登記簿(土地課税台帳もしくは家屋課税台帳)または土地補充課税台帳もしくは家屋補充課税台帳に登録されている者である(第343
条第2項。なお、例外もある)。このような制度となっているのは、登記簿上の所有者と真実の所有者とが一致することが多いこと、両者が一致しない場合に真実の所有者を判定することが容易でないことなどの理由による。そのため、固定資産税賦課期日現在の登記名義人に対する課税は、その登記名義人が真の所有者でない場合、または、賦課期日後に登記名義が抹消された場合であっても適法である※。
また、償却資産については、償却資産課税台帳に登録されている者が所有者であるとされる(第343条第3項。なお、例外もある)。所有権留保つき売買が行われた場合には、第342条第3項によって売主および買主の共有物とみなされ、両者が連帯して納税義務を負うこととなるのであるが、現実には買主のみが課税されている。
なお、市町村は、国、都道府県、(他の)市町村、特別区、これらの組合、財産区、地方開発事業団および合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない(第348条第1項)。これを埋める形で、各種の交付金制度が用意されている※。
3.台帳課税主義
土地課税台帳、土地補充課税台帳、家屋課税台帳、家屋補充課税台帳および償却資産課税台帳を合わせたものが固定資産課税台帳である(第341条第9号)。
土地課税台帳は、土地登記簿に登記されている土地について必要な事項を登録した帳簿である(同第10号)。この必要な事項は、第381条第1項により、登記原因およびその日付、登記年月日、土地の所在地、地番、地目、地積など(以上、不動産登記法第27条第3号、同第34条第1項各号)、登記名義人の住所、氏名または名称ならびにその所在、基準年度の価格または比準価格とされる。
土地補充課税台帳は、土地登記簿に登記されていない土地で固定資産税を課することができるものの所有者の住所、氏名または名称ならびにその所在、地番、地目、地積、基準年度の価格または比準価格を登録した帳簿である(地方税法第341条第11号、第381条第2項)。
家屋課税台帳は、家屋登記簿に登記されている家屋について必要な事項を登録した帳簿である(第341条第12号)。この必要な事項は、第381条第3項により、登記原因およびその日付、登記年月日、家屋番号、建物の種類、構造、床面積、建物の名称など(以上、不動産登記法第27条第3号、同第41条第1項各号)、登記名義人の住所、氏名または名称ならびにその所在、基準年度の価格または比準価格とされる。
家屋補充課税台帳は、家屋登記簿に登記されていない家屋で固定資産税を課することができるものの所有者の住所、氏名または名称ならびにその所在、家屋番号、種類、構造、床面積、基準年度の価格または比準価格を登録した帳簿である(地方税法第341条第13号、第381条第4項)。
償却資産課税台帳は、償却資産の所有者の住所、氏名または名称ならびにその所在、種類、数量および価格を登録したものである(第341条第14号、第381条第5項)。第349条の3、第349条の4、第349条の3の2、第349条の5の適用を受ける償却資産については、固定資産課税台帳に登録することとされている。なお、償却資産の所有者には申告義務が課されている(第383条)。
固定資産課税台帳とは別に、土地については土地名寄帳、家屋については家屋名寄帳を、市町村が備えなければならない(第387条)。いずれも、土地課税台帳・土地補充課税台帳または家屋課税台帳・家屋補充課税台帳に基づいたものであるが、これらの台帳が地番または家屋番号ごとに作成されているのとは異なり、所有者ごとに土地や家屋をまとめた帳簿となっている。
固定資産税は、固定資産課税台帳に登録されたところに従って課税されるのが原則となっている。これを台帳課税主義という。但し、登記簿上の単なる名義人に過ぎない者であっても固定資産の所有者として納税義務を負うという仕組みを台帳課税主義と表現することもある※。また、碓井光明教授は「固定資産課税台帳に登録されないかぎり課されることがないという意味の台帳課税主義であり、納税義務者の決定については、土地登記簿又は建物登記簿に所有者として登記されている者は、原則として当然に納税義務者になるという意味における『登記名義人課税』原則が採用されているとみるべきである」と述べる※※。
これらの台帳は、固定資産税の状況や価格などを明らかにするためのものである。そして、台帳に所有者として登録されている者を納税義務者とし、台帳に登録されている価格を課税標準とする。そのため、固定資産の所有者であっても、固定資産課税台帳に所有者として登録されていなければ、固定資産税を課されないこととなる。もっとも、第343条第2項後段や同第4項などは「現に所有している者」や「使用者」に課税する場合を規定している。また、土地および家屋については、あくまでも形式的な登記名義人課税を意味するに留まり、他のものについてはむしろ真実の所有者に課税されるべきであると理解されるので、登記名義人課税がどこまで貫徹されうるかが問題とされる。判例は、登記名義人課税に一定の合理性を認める。そして、ほとんど例外を認めていない※。
※北野編・前掲書221頁[田中]を参照。
固定資産課税台帳は、従来から縦覧に供することとされており、現在では納税義務者など一定の利害関係者(地方税法施行令第52条の14)が、固定資産課税台帳のうちの関係固定資産の事項を閲覧することを請求することができる(地方税法第382条の2)。これとともに、市町村長が土地価格等縦覧帳簿および家屋価格等縦覧帳簿を毎年3月31日までに作成し(第415条第1項)、これらを縦覧に供しなければならない(第416条)。
4.固定資産税の課税物件(課税客体)
固定資産税の課税物件(課税客体)は、上述の固定資産である。すなわち、土地、家屋、および償却資産である。ここで言う土地は、あらゆる地目の土地を含んでいる。そのため、地上権や抵当権などが設定されている土地であっても、設定されていない土地と同様に課税される。家屋も同様で、あらゆる用途の建物が含まれる。償却資産は、事業用資産に限って固定資産税の課税の対象となるが、現在は稼動していないものであっても事業用に所有されているものであり、しかもその用に供しうるものであれば課税の対象となる。また、現に減価償却をして減価償却額または減価償却費を損金または必要経費に算入しているか否かは問われない。
家屋がいつの段階から固定資産税の課税の対象になるかについては、議論の余地があろう。
金子宏教授は、大判昭和10年10月1日民集14巻18号1671頁、大阪高判昭和28年7月14日高裁民集6巻7号379頁および東京地判昭和48年12月20日判時726号40頁を参照しつつ、建築中の建物であっても、屋根瓦を葺き、外壁を塗り終わり、一個の不動産として取引または利用の対象になりうる程度に達していれば、固定資産税の課税の対象となると理解する
これに対し、最二小判昭和59年12月7日民集38巻12号1287頁は、「新築の家屋の場合は、一連の新築工事が完了した段階において初めて家屋としての資産価値が定まり、その正確な評価が可能になる」こと、「新築工事中の建造物が、工事の途中においても、一定の段階で土地を離れた独立の不動産となる場合のあることは否定できないが、独立の不動産となる時期及びその時期における所有権の帰属を認定判断することは課税技術的に必ずしも容易なことではな」く、「工事途中の建造物を課税客体とすることは、固定資産の持つ資産価値に着目しつつ明確な基準の下に公平な課税を図るべき固定資産税制度の趣旨に沿うものとはいうことができない」こと、地方税法が台帳課税主義を採用すること、第381条第7項にいう「登記されるべき家屋」は不動産登記法旧第93条第1項および旧第159条ノ2により「建物表示登記の申請義務を課せられた家屋であり、それは一連の新築工事が完了した家屋をいうと解される」などとして、「新築の家屋は、一連の新築工事が完了した時に、固定資産税の課税客体となると解するのが相当である」と述べている。
なお、固定資産の課税物件(課税客体)から除外されるものも多い。地方税法第348条第2項は、公共性または公益性の強い法人が直接その本来の事業の用に供する固定資産など、公共性または公益性の強い固定資産を各号に列挙し、これらを課税の対象から除外する。列挙されているものの範囲は非常に広く、例として、墓地、道路、学校法人が直接保育や教育の用に供する固定資産、JR各社が所有するお召し列車の車両などがある。但し、これらの各号規定の固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使用する場合には、固定資産税が課せられる(同第3項)。
また、同第4項は、各種の協同組合や共済組合等が所有し、使用する事務所および倉庫を非課税としており、同第5項は「旅客会社等が独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法(平成十四年法律第百八十号)第十二条第一項第三号又は第六号の規定に基づき借り受ける固定資産のうち第二項第二号の五に掲げる固定資産で政令で定めるものに対しては」非課税とすると定める。
この他、地方税法第348条第6項ないし第8項は、非課税独立行政法人※および国立大学法人等についての非課税を定め、同第9項は大使館、公使館、領事館など外国の政府が所有するものについての非課税を定める。
※非課税独立行政法人は、第25条第1項第1号により、「独立行政法人のうちその資本金の額若しくは出資金の額の全部が国により出資されることが法律において定められているもの又はこれに類するものであつて、その実施している業務のすべてが国から引き継がれたものとして総務大臣が指定したものをいう」と定義される。
5.固定資産税の課税標準
固定資産税の課税標準は、賦課期日である1月1日の時点における固定資産の価格であるが、既に述べたとおり、固定資産固定資産課税台帳に登録されている価格である。ここにいう価格は「適正な時価」、すなわち、客観的な交換価値を意味する(第341条第5号)。
実際には、償却資産の場合は毎年評価が行われるのであるが、土地および家屋について、原則として3年ごとに評価を行い、価格を決定する。評価を行う年を基準年度という。これは、1956(昭和31)年度および1958(昭和33)年度、1958年度から起算して3年または3の倍数の年度が経過したごとの年度である(第341条第6号)。このため、基準年度の翌年度と翌々年度には評価が行われず、据え置かれるのが原則である(第349条第1項ないし第3項)。第341条第5号において「適正な時価」と定められていることと矛盾する嫌いはあるが、毎年度の税負担が不安定に推移すれば、納税義務者にとってはむしろ過重な負担を強いることにつながるであろう。また、行政事務も複雑になってしまうので、基準年度ごとの評価もやむをえないことではあろう。
但し、基準年度の翌年度または翌々年度であっても、地目の変更や家屋の改築または損傷などが生じた場合、市町村の廃置分合や境界変更が行われたことによって基準年度の価格によることが不適当であるなどの問題が存在する場合には、類似の土地や家屋の基準年度の価格に比準する価格が課税標準となる(第349条第3項ただし書き)。この価格を比準価格という。
土地は、現在、基準年度の前年1月1日の地価公示価格や不動産鑑定士の鑑定評価額の7割を目処として評価することとなっている。これは法律によるものではなく、総合土地政策推進要綱という閣議決定や、中央固定資産評価審議会の決定などによるものである。7割評価とされているのは、土地の取引価格には変動の幅があること、基準年度の開始前の1年の間に地価が下落する可能性があること、などの理由による※。
※金子・前掲書610頁、谷口・前掲208頁、川村栄一『地方税法概説―国税との比較で学ぶ地方税入門―』(2009年、北樹出版)281頁を参照。
また、住宅用地の課税標準は本来の課税標準額の3分の1に(第349条の3の2第1項)、小規模住宅用地の課税標準は本来の課税標準額の6分の1に(同第2項)、それぞれ減額されている。
問題は農地の評価である。農地の課税標準はとりわけ低く評価されていた。とくに目立ったのが市街化地域であり、宅地と農地との間で税負担の不公平が生じたとされ、これを是正するとともに農地を宅地に転用するため、いわゆる農地の宅地並み課税が1973(昭和48)年度以降に行われるようになった。1982(昭和57)年度に強化され、さらに1991(平成3)年度の税制改正では長期営農継続農地制度が廃止され、1992(平成4)年から都市緑化保全法による緑化保全地域(現在は特別緑地保税地区)内の農地などに限定して農地としての課税を行い、それ以外の農地については宅地並みの課税とすることとした。
これは、実のところ、食料の自給率、都市の形成過程、利水や治水の面などに鑑みても多大な問題を残したと言える。市街化区域は増大する傾向にあったから、農地が減ることは自明の理であった。また、この方策により、かえって地価の上昇などが激しくなったとも考えられる。いずれにせよ、長期的には愚策であったのではないかと思われる※。
※北野編・前掲書219頁[田中]も参照。
以上が原則的な事柄であるが、実際の価格決定は、まず、市町村に置かれる固定資産評価員が固定資産を実地調査し、評価を行うことから始まり、この評価を基にして市町村長が価格を決定し、固定資産課税台帳に登録し、固定資産課税台帳を関係者の縦覧に供するという流れにおいて行われる。
固定資産税は市町村税であるが、固定資産の評価とその価格の決定に際しては、総務大臣および都道府県知事に様々な権限が認められる。
総務大臣は、固定資産評価基準を設定し、告示しなければならない(第388条第1項)。固定資産評価基準は、名称の通り、固定資産の評価基準、評価の実施方法および手続を定めるものであり、土地については売買実例価格を、家屋については再建築価格を、償却資産については取得価格を、それぞれ基準として評価を行うものと定める。総務大臣が固定資産評価基準を制定する際には、地方財政審議会固定資産評価分科会の意見を聴くこととなっている(同第2項)。
市町村長は、固定資産の価格を決定する際に固定資産評価基準によらなければならない(第403条第1項)。総務大臣の告示であるが、一種の委任立法であり※り、法的拘束力を有するか否かについて議論が生じうる。仮に、この告示が他の評価方法を一切排除するものであるとするならば、租税法律主義(とくに課税要件法定主義)や地方財政権の保障の観点から疑問が生じる。
固定資産評価基準によらない価格の決定は違法であるとするのが最判昭和61年12月11日判時1255号58頁などの立場であるが、市町村が固定資産評価基準によらないで価格を決定することが直ちに違法とならないとする見解もある(東京高判平成13年4月17日判時1744号69頁など)。
また、固定資産評価基準によって決定された固定資産の価格が賦課期日における時価を超過している場合には、固定資産評価基準によっているとしても違法である(最判平成15年6月26日民集57巻6号723頁など)。
都道府県知事は、固定資産評価基準に関する指導、固定資産評価員の研修などの援助を市町村長に対して行う(第401条。但し、第402条も参照)。また、都道府県知事の固定資産評価に関する諮問機関として、都道府県固定資産評価審議会が置かれている(第401条の2)。
一方、市町村長は、固定資産の価格などを決定した場合には概要調書を作成し、都道府県知事に送付しなければならず(第418条)、都道府県知事は、市町村における固定資産の評価が固定資産評価基準によっていないと判断する場合に、市町村長に対して修正登録の勧告を行う(第419条第1項。修正登録については、同第2項以下、第421条以下を参照)。
なお、第389条に規定される固定資産は、都道府県知事(2以上の都道府県に関係する場合は総務大臣)が固定資産評価基準によって評価を行い、所在の市町村や価格などの決定を行う。また、大規模償却資産として都道府県が課す固定資産税についても、都道府県知事が評価を行い、価格等を決定する(第743条)。いずれの場合も、都道府県知事は、決定した価格などを市町村長に通知しなければならない。そして、市町村長が固定資産課税台帳に登録しなければならない。
市町村には固定資産評価審査委員会が置かれる(第423条)。これは常設の機関で、固定資産課税台帳に登録された価格について不服をもつ納税義務者の不服申立機関である。同条第1項により、納税義務者は、固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合に、文書によって固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることとなる。但し、第411条第3項によって土地課税台帳等または家屋課税台帳等に登録されたものとみなされる土地または家屋の価格については、当該土地または家屋について第349条第2項第1号に掲げる事情があるために同条同項ただし書き、第3項ただし書きまたは第5項ただし書きの規定の適用を受けるべきものであることを申し立てる場合を除き、審査の申出をすることができない(第432条第1項ただし書き)。
但し、固定資産課税台帳に登録された価格であっても、第389条第1項、第417条第2項または第743条第1項もしくは第2項により、都道府県知事または総務大臣が決定または修正して市町村に通知したものは除かれている。
納税義務者が固定資産評価審査委員会の決定に不服のあるときは、裁判所に決定の取消の訴えを提起することができる(第434条第1項)。また、第432条第1項によって固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができる事項について不服がある固定資産税の納税義務者は、同項および第434条第1項のみによって争うことができる(同第2項)。訴訟においては市町村が被告となるが、固定資産評価審査委員会がその市町村を代表する(第434条の2)。
なお、第19条の12により、更正もしくは決定または賦課決定(第19条第1号)、第389条第1項、第417条第2項または第743条第1項もしくは第2項による価格等の決定もしくは配分またはこれらの修正(第19条第8号)の「処分の取消しの訴えは、当該処分についての異議申立て又は審査請求に対する決定又は裁決を経た後でなければ、提起することができない」とされる。
6.固定資産税の税率・税額など
固定資産税の税額は、固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格に税率を乗じて算出される。固定資産税の標準税率は1.4%である(第350条第1項、第741条)。
但し、一納税義務者の固定資産税の課税総額がその市町村の固定資産税の課税標準総額の3分の2を超える場合において、固定資産税の税率を定める場合、またはこの税率を変更して1.7%を超える税率で課税する旨の条例を制定しようとするときには、議会においてその納税義務者の意見を聴かなければならない(第350条第2項)。
また、課税標準の額が30万円未満の土地、20万円未満の家屋、150万円未満の償却資産については、固定資産税を課すことができない。但し、財政上その他の特別な必要がある場合には、条例の定めるところによって課すことも可能となる(第351条)。
新築の住宅、新築された認定長期優良住宅、特定市街化区域農地であつた土地の上に新築された貸家住宅等、耐震改修が行われた住宅等については、一定の期間に限定されるが固定資産税の税額が減額される(地方税法附則第15条の6ないし第15条の9、同第16条)。
区分所有にかかる家屋について、区分所有者は建物の区分所有等に関する法律第14条第1項ないし第3項に規定される割合によって按分した額を固定資産税として納める義務を有する(地方税法第352条第1項)。また、特定の区分所有者または管理者が所有し、区分所有者全員が共有する共用部分がない場合には、その部分を区分所有者全員の共有に属するものとみなし、固定資産税の税額を計算する(地方税法第352条第2項)。
固定資産税は、普通徴収の方法によって徴収される(第364条第1項)。納期は、第362条第1項において4月、7月、12月および2月中において市町村の条例で定めることとされているが、これと異なる納期を定めることもできる。なお、仮徴収の制度もある(第364条第5項)。
(2011年3月16日掲載)
(2011年3月31日修正)
(2011年8月19日修正)
(2012年8月12日修正)
(2013年10月22日修正)
(2014年6月24日修正)