30    都市計画税

 

 都市計画税は市町村税であり、都市計画事業または土地区画整理事業に要する費用に充てるため、都市計画区域として指定された地域のうちの市街化区域内に所在する土地および家屋を課税物件とし、その価格を課税標準として所有者に課することができる目的税である(地方税法第702条第1項前段)。また、市街化調整区域内にある土地および家屋の所有者については「市街化調整区域内に所在する土地及び家屋の所有者に対して都市計画税を課さないことが当該市街化区域内に所在する土地及び家屋の所有者に対して都市計画税を課することとの均衡を著しく失すると認められる特別の事情がある場合に」は「当該市街化調整区域のうち条例で定める区域内に所在する土地及び家屋について」課することができる(同項後段)。

 第5条第6項は、どの市町村に対しても都市計画税を課税する義務を課しておらず、課税をするか否かを市町村の条例制定権に委ねている。しかし、実質的に固定資産税の付加税としての性格を有することは、次に示す諸事項から明らかになる。

 まず、第702条第1項によって課税標準とされる課税標準である土地または家屋の価格は固定資産税の課税標準である価格と同義であり、納税義務者である所有者についても固定資産税の場合と同じである(第702条第2項)。

 賦課期日、非課税の範囲も固定資産税とほぼ同様である(第702条の6、第702条の2)。

 ※そのため、固定資産税を課すことができない土地および家屋については、都市計画税を課すこともできない。

 都市計画税の賦課徴収も固定資産税の賦課徴収の例によるものとされ、原則として固定資産税と合わせて賦課徴収される(第702条の8第1項)。

 都市計画税の制限税率は0.3%である(第702条の4)。

 以上のような制度であることから、都市計画税の存在理由などについては、かねてから疑問が寄せられている。都市計画税は、都市計画事業の施行によって上昇した土地または家屋の価値を当該所有者が享受することに着目した、応益課税的な思考方法に基づいたものであるという主張がなされているが、地方税法にはその趣旨の規定がなく、むしろ0.3%の制限税率が設けられているという点は、応益課税的な思考方法に適合しない※※。そもそも、このような主張自体が粗雑である。また、使途についても、都市計画事業または土地区画整理事業をその他の事業から明確かつ具体的に区別することは困難であるし、普通税である固定資産税もこれらの事業のために使われるであろう。このように考えるならば、都市計画税の存在理由を正当化するものはほとんどないと言いうるであろう。

 ※さしあたり、北野弘久編『現代税法講義』〔五訂版〕(2009年、法律文化社)229頁[田中治担当]、拙稿「地方目的税の法的課題」『地方税の法的課題(日税研論集46)』(2001年)296頁を参照。

 ※※水利地益税(第703条)とは、この点において異なる。

 

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(2011年3月16日掲載)

(2012年8月12日修正)

(2014年6月24日修正)