31 消費課税総説
1.消費課税の意義
第七部を「消費税」ではなく「消費課税」という題名にしたのは、租税法学にいう消費税が、消費税法に規定される消費税は勿論、それ以外の租税(酒税、たばこ税、入湯税など)をも含めるためであり、説明の便宜と考えていただきたい
※。※消費税法に規定される消費税を初めとして、消費課税の諸問題を扱う文献は多い。税制研究55号(「消費税20年特集号」、2009年)所収の諸論文、斎藤貴男氏『消費税のカラクリ』(講談社現代新書、2009年)、同『消費増税で日本崩壊』(ベスト新書、2010年)などを参照。また、国際比較の観点から非常に興味深い文献として、Alan Schenk and Oliver Oldman, Value Added Tax, A Comparative Approach. Cambridge University Press, 2007がある。
消費課税は、所得課税よりも歴史が古く、歳入における重要性も高い。話題を消費税法に規定される消費税に限定しても、好むと好まないとにかかわらず、重要性は増すばかりである。2014(平成26)年度(当初)予算のうちの一般会計予算によると、歳入総額95兆8823億282万9000円のうち、消費税は15兆3390億円であり、約16%を占めた。消費税法施行後も長らく、租税収入のうちで最も多いのは所得税であったが、2014年度一般会計予算においてついに消費税がトップに立った。この意味は大きいものであろう。なお、消費税に続いて所得税(14兆7900億円、約15.4%)、法人税(10兆180億円、約10.4%)の順となっていた※。
※歳入総額ではなく、「租税及印紙収入」(50兆103億80万円)に占める割合は、消費税が約30.7%、所得税が約29.63%、法人税が約20%であった。また、「租税」収入(48兆9450億円)に占める割合は、消費税が約31.3%、所得税が約30.2%、法人税が約20.5%である。
この傾向は2015(平成27)年度にも続く。すなわち、2015(平成27)年度当初予算のうちの一般会計予算によると、歳入総額96兆3419億5097万1000円のうち、消費税は17 兆1120億円であり、約17.8%を占める。次いで、所得税(16兆4420億円、約17.1%)、法人税(10兆9900億円)の順となっている※。
消費課税は、消費行為を課税の対象とするのであるが、直接的に消費行為を課税対象とするか、直接的に消費行為を課税対象としないで資産の譲渡など(物品やサービス)を課税の対象とし、税負担が最終的に消費者に転嫁されることが予定されているかにより、直接消費税と間接消費税とに分かれる※。
※実際に転嫁されるか否かは問わない。転嫁の可能性がある、あるいは、法律において転嫁が予定されている、ということで十分なのである。
なお、税負担の転嫁の有無と直接税・間接税の区別との関係は「01 租税と租税法」において扱ったが、直接税であるから転嫁がない、間接税であるから転嫁がある、などとは言い切れない。この観点に依拠するのであれば、あくまでも、法律上、転嫁が予定されているか否かによって区別する以外にない。実際にはこの点が理論上、および実務上において大きな問題となるのであるが、これについては後に述べる。長澤哲也編著『実務解説消費税転嫁特別措置法』(2013年、商事法務)17頁[河野良介担当]も参照。
直接消費税の場合は、納税義務者が消費行為を行った者であって、物品またはサービスの提供者が徴収納付義務者(地方税の場合は特別徴収義務者)として課税主体に代わって徴収を行い、課税主体に納付することとなる。直接消費税の例として、ゴルフ場利用税(地方税法第75条)や入湯税(同第701条)がある。また、憲法の判例(京都地判昭和59年3月30日行集35巻3号353頁)に登場することでも有名な京都市の古都保存協力税も、直接消費税の一つである※。
※ちなみに、古都保存協力税は、1983(昭和58)年に条例が制定されたが、1988(昭和63)年に廃止された。
これに対し、間接消費税の場合は、消費行為を行った者が納税義務者であるという訳ではない。消費行為を行ったものは担税者である、ということになる。納税義務者は、物品の製造者、引取者または販売者であり、税目によって異なる。多段階一般消費税である消費税は「事業者」としており、製造者、引取者、販売者のいずれも納税義務者である。これに対し、個別間接消費税である酒税やたばこ税などは、製造者、引取者、販売者のいずれかが納税義務者である。間接消費税の例として消費税や酒税、たばこ税、揮発油税、地方消費税、軽油引取税などがある。
消費税は間接消費税であるが、基本的に全ての物品やサービスに対して課される。このようなものを一般消費税という。
これに対し、消費税導入前に施行されていた物品税や酒税などは、法令によって決められた特定の物品やサービスにのみ課される。このようなものを個別消費税という。一般消費税の場合は、法律に物的非課税とされるものを定めなければ、自動的に課税の対象となるのに対し、個別消費税の場合には、法律に課税対象を定めなければ課税の対象とならない。租税法律主義、より根本的に財政民主主義の観点からすれば、個別消費税のほうが望ましい。また、公平負担の原則にも、個別消費税のほうが合致しやすい。
しかし、個別消費税には重大な問題点がある。
第一に、課税ベースが狭いので、税収も少なくなりやすい。
第二に、消費中立性に欠ける。
第三に、公平負担の原則にも合致しやすいと記したが、実際には政治的な理由などにより、新たな製品やサービス、とくに奢侈的なものを課税対象としにくいことが多く、かえって公平負担の原則にも反する。
第四に、制度自体が複雑になりやすい。物品税が施行されていた時代には、生活必需品やそれに準じたものを課税の対象から除外すべきであり、奢侈性の高いものほど税率を高くすべきであるという考え方が採用されていた。これは、課税の公平という考え方には適合するが、具体的に何が生活必需品であり、何が奢侈性の高いものかを判断することは意外に難しく、恣意的な決定などを導きやすい。そのため、矛盾が拡大する。
一方、一般消費税には逆進性の問題があるが、所得税の補完的な意味を有しうること、法人の所得や事業所得の把握にも役立ちうること、などの長所もある※。このような理由から、個別消費税としての物品税は1988(昭和63)年度を最後に廃止され、1989(平成元)年からは一般消費税としての消費税が施行された。但し、酒税、たばこ税および石油関係の個別消費税は存続している。
※但し、この点は制度設計次第であり、常にこのような長所が存在するという訳ではない。また、消費課税は、外形標準課税と同様に、赤字であるが故に所得税や法人税を納める必要がない事業者にも負担を強要する。そのため、脱税については所得課税よりもむしろ強い誘引となりうるものである。この点を見落とす税制論議には欠陥があると考えざるをえない。
2.一般消費税の構造
消費課税のうち、現在の主流は一般消費税である。これは、どの取引段階にて課税するか、単数の取引段階にて課税するか、複数の取引段階にて課税するかによって、単段階一般消費税と多段階一般消費税とに分かれる。単段階一般消費税には、製造者売上税、卸売売上税および小売売上税があるが、いずれも、課税対象の範囲や売上金額の把握などに問題が残るため、最近では単段階一般消費税を採用する国は少なくなっている。日本においては、現在、採用例がない。
一方、多段階一般消費税は、製造者、引取者、販売者のいずれをも納税義務者とするのであるが、何を課税標準とするかによって売上税(取引高税)と付加価値税とに分かれる。
このうち、取引高税は、全ての取引段階の売り上げを対象とし、その売上金額を課税標準とするものであるが、租税負担が累積するため、最終的な取引段階における租税負担が高くなる。これは、流通過程が複雑な業界の場合にとくに強く現れることになる。また、企業統合を促進する可能性がある。また、その他の理由もあり、公平性や競争中立性に欠けるとされている。
ここで、具体的な例を用いて説明する。税率を8%とし、木材等原材料生産業者A、家具製造業者B、家具卸売業者C、家具小売業者D、消費者Eの間で取引がなされると仮定する。なお、Aの前の段階などは無視する
※。また、小数点以下は切り捨てる。※
これは、金子宏『租税法』〔第二十版〕(2015年、弘文堂)676頁および677頁に掲載されている「〔別表〕一般消費税の諸類型(仮に税率8%として計算)」を利用したものである。本文に示した例は677頁に掲載されている。また、同表には、単段階課税、多段階課税のそれぞれの類型に関する図表が掲載されており、納付税額および税込販売価格の算出例も示されている。まず、AはBに家具の原材料を20000円の税抜販売価格で販売する。この時のAが納付すべき消費税額は20000円×0.08=1600円であり、Aは20000円の利益を予定しているとすれば、実際にAがBに販売する際の税込販売価格は21600円である。
次に、Bは家具を製造し、Cにその家具を販売する。Bは、本来であれば税抜販売価格として50000円で販売することを考えているが、30000円の利益を予定しているとすれば、Bは21600円で仕入れて51600円で販売しなければならない。この時のBが納付すべき消費税額は51600円×0.08=4128円であるから、実際にBがCに販売する際の税込販売価格は55728円である。
続いて、CはDに同じ家具を販売する。Cは、本来であれば税抜販売価格として70000円で販売することを考えているが、20000円の利益を予定しているとすれば、Cは55728円で仕入れて75728円で販売しなければならない。この時のCが納付すべき消費税額は75728円×0.08=6058円であるから、実際にCがDに販売する際の税込販売価格は81786円である。
そして、DはEに同じ家具を販売する。Dは、本来であれば税抜販売価格として100000円で販売することを考えているが、30000円の利益を予定しているとすれば、Dは81726円で仕入れて111786円で販売しなければならない。この時のDが納付すべき消費税額は111786円×0.08=8943円であるから、実際にDがEに販売する際の税込販売価格は120729円である。
このように、取引高税の場合、取引段階ごとの税込価格に税率が乗じられるから、税金に税率が乗じられるのと同じようなことになり、税に税が累積するという構造になる。上の例では納付税額の合計が20729円になっており、DがEに販売する際に予定していた100000円の税抜販売価格に対する税率は8%を超えている。これでは、納税義務者ではなく担税者にすぎない消費者が負担すべき税額が増えてしまい、流通過程が複雑になればなるほど物価が上がることとなる。そして、仮にAが家具の原材料を直接Eに販売してEが自ら家具を作るとすれば、消費税額は1600円で済むこととなるし、Bが直接Eに家具を販売すれば、消費税額は4128円で済むこととなる。従って、取引高税の場合には流通過程の統合が起こりやすくなり、流通過程に中立的でないものとなる。
これに対し、付加価値税は、各取引段階で発生する付加価値を課税標準とする。付加価値は、製造から小売までの各段階において事業者が新たに付加した価値のことである。単純化した例をあげると、製造段階で1000円のものをBがAから仕入れ、これをBがCに1200円で売却したとすると、差額の200円が付加価値ということになる。また、一つの取引段階に着目すると、その事業の総売上金額から、他の事業より購入した土地、建物、機械設備、原材料などに対する支出を控除した金額である、ということになる。
上記と同じ例を用いて、今度は付加価値税の場合であればどのようになるのかを説明する。やはり税率を8%とし、木材等原材料生産業者A、家具製造業者B、家具卸売業者C、家具小売業者D、消費者Eの間で取引がなされると仮定する。同じく、Aの前の段階などは無視する※。
※金子・前掲書677頁による。この他、北野弘久編『現代税法講義』〔五訂版〕(2009年、法律文化社)246頁[石村耕治担当]、石村耕治編『税金のすべてがわかる現代税法入門塾』〔第7版〕(2014年、清文社)297頁[橋本博孔担当]の例なども参照。
まず、AはBに家具の原材料を20000円の税抜販売価格で販売する。この時の税額は20000円×0.08=1600円であるから、実際にAがBに販売する際の税込販売価格は21600円であり、Aは消費税額として1600円を納付すればよい。
次に、Bは家具を製造し、Cにその家具を販売する。Bは、税抜販売価格として50000円で販売することを考えているから、この価格に対する税額は50000円×0.08=4000円である。従って、実際にBがCに販売する際の税込販売価格は54000円となる。しかし、Aの販売価格に1600円が上乗せされており、Bは仕入れの際にAが納税すべき1600円を負担していることになるから、差額の2400円を消費税額として納付すればよい。かくして、Bは54000円でCに家具を売ることができる。
続いて、CはDに同じ家具を販売する。Cは、税抜販売価格として70000円で販売することを考えているから、この価格に対する税額は70000円×0.08=5600円である。従って、実際にCがDに販売する際の税込販売価格は75600円となる。しかし、Bの販売価格に4000円が上乗せされており、Cは仕入れの際にAが納付すべき1600円およびBが納付すべき2400円を負担していることになるから、差額の1600円を消費税額として納付すればよい。かくして、Cは75600円でDに家具を売ることができる。
そして、DはEに同じ家具を販売する。Dは、税抜販売価格として100000円で販売することを考えているから、この価格に対する税額は100000円×0.08=5000円である。従って、実際にCがDに販売する際の税込販売価格は108000円となる。しかし、Cの販売価格に5600円が上乗せされており、Dは仕入れの際にAが納付すべき1600円、Bが納付すべき2400円、およびCが納付すべき1600円を負担していることになるから、差額の2400円を税務署に納めればよい。かくして、Dは108000円でEに家具を売ることができる。
付加価値税はフランスで採用されたのが最初であり、その後、ヨーロッパ各国などに普及した。ここでEU型付加価値税の概略を示しておくと、これは仕入税額控除法または前段階税額控除法と言われており、課税期間内の総売上金額に税率を乗じて得られた金額から、同じ課税期間内の仕入れに含まれている前段階の税額を控除することによって税額を算出する。この方法により、上に示した例からわかるように、租税負担の累積を―完全ではないとしても―排除することができる。そして、EU型付加価値税の場合、仕入税額控除を受けるにはインボイス(仕送状)や請求書に税額が記載されていることを要求する。このため、インボイス方式などと言われている。
日本の消費税(および地方消費税)も付加価値税であるから、基本的にはEU型付加価値税と同様なのであるが、異なる点はインボイス方式を採用していないことである。日本の場合は帳簿方式といい、納税義務者の帳簿の記載によって仕入税額控除を認めている。これは、消費税導入時の業者の反発を抑えるために、簡易課税制度とともに導入されたものである。しかし、この方法では、租税負担の転嫁が適正に行われているか否かなどが不明確になるし、法人や個人事業主の所得を正確に把握することも難しくなる。消費税法第30条第7項が帳簿および請求書の保存を義務づけているのは、帳簿方式をとりつつ、法人や個人事業主の所得などの把握の程度を多少とも高めるためであろう。
3.日本の消費税が抱える一般的な問題点
日本の消費税の具体的な内容に関する検討に入る前に、一般的な問題点を扱うこととする。
日本の消費税は、前節において記したように付加価値税型の多段階一般消費税である。課税対象は、国内において事業者が行う資産の譲渡等、および、保税地域から引き取られる外国貨物である。そして、仕入税額控除方式を採用するが、インボイス方式ではなく、帳簿方式である。
この他、日本の消費税には、課税の公平性などからみると問題が非常に多い。とくに、導入当初は、いわゆる益税問題などが存在し、欠陥が多かった。何度かの改正によって改善された部分も多いが、最近では消費税の申告漏れや不納付なども多く、世間で言われるほど万能の租税制度ではない。
まず、日本の消費税の課税対象(課税ベース)は非常に広く、税率も低くて単一である。そのほうが、制度が簡素になるし、消費中立性には資するのであるが、逆進性という根本的な問題が残る。
とくに議論が集中するのは、食料品などの生活必需品である。ヨーロッパ諸国においては軽減税率が採用されるなど、税率が複数存在する。複数税率、非課税措置またはゼロ税率の採用が検討されるべきであろう。但し、前述のように生活必需品の範囲を確定することは意外に困難であるから、複数税率の採用については慎重を期すべきであろう。また、非課税措置には後に述べるような問題点があるので、安易に採用すべきではなかろう。
非課税措置とゼロ税率は、いずれも軽減措置であるが、根本的には異なる。非課税措置の場合、当初から課税をしないということであるが、仕入税額控除もできなくなる。これに対し、ゼロ税率は、課税をしないのではなく、0%という税率で課税をすることを意味する。そのため、仕入税額控除をすることも可能となる。
また、課税対象が広い一方で、非課税取引、そもそも課税の対象外とされる取引が存在する。これらを区別し、課税対象取引のうちの課税取引のみを抽出する必要があるが、具体的な判断に困難が生じる場合もある
※。また、仕入の計算に際しては、非課税取引の売上も含めなければならない※新井隆一「新型消費税の提議」『新型消費税 改修所得税(税法評論6)』(2010年、成文堂)16頁は、食料品を例として取り上げ、まず、食料品自体に「普通の(一般的な)ものもあれば、高級・高額のものもある」ことを指摘する。続いて、「食料品によっては、その食料品とそれに不可欠の包装資材によって一つの商品となるものもあるから、その場合には、一の商品に、軽減税率適用品、非課税品または課税免除品(免税品)〈0税率適用品〉と課税品とが混在をしていることによる軽減税率適用処理、非課税処理または課税免除(免税)〈0税率適用〉処理と課税処理との混淆という複雑かつ面倒なことが起こることになる」とも述べる。
次の問題点として、免税点が高いことである。導入当初は3000万円とされていたが、日本の事業者には小規模のものが多く、当時は65%ほどの業者が免税業者であったと言われる。このため、仕入税額の全部または一部を価格に含めることができないという問題と、仕入税額を超えて必要以上に転嫁するという問題の両方が生じている。ようやく、2004(平成16)年度以降の課税期間について、免税点が1000万円に引き下げられた。
免税点の問題とは別に、免税事業者が存在すると、消費税の仕組みはいっそう複雑になる。この点については、後に具体例をあげて述べることとする。
そして、消費税法第37条に規定される簡易課税制度の存在である。これが、免税点の高さとともに消費税の重大な欠陥と言われてきた。
簡易課税制度は、売上にかかる消費税額から控除すべき仕入税額の計算について、本来の実額による控除か、売上にかかる消費税額の一定割合を仕入税額とみなして控除する(これをみなし控除率という)を、納税義務者が選択できるというものである。計算の簡素化を希望する中小企業に配慮した制度であるが、適用しうる業者の年間売上高の最高限度が5億円と高かったこと、仕入率が事業の種類や規模によって異なるために仕入率が上記の一定割合より低い場合には益税が生じることから、消費税の正当性の根拠自体に疑問が持たれる結果となった。現在は、事業の種類によってみなし控除率が5段階に分けられ、2004(平成16)年度からは適用の上限が5000万円に引き下げられた。しかし、益税問題などが完全に解決されたという訳ではない。
そして、課税期間の長さも問題とされる。日本の場合は、個人であれば暦年(1月1日〜12月31日)、法人であれば事業年度と、課税期間が所得税や法人税と同じであった。これも、申告および納付の便宜のためであるが、諸外国では1ヶ月や数ヶ月という場合が多く、課税期間が長いと、消費税の運用益問題が拡大するため、現在では短縮されている。
これらの問題※については、裁判においても争われている。しかし、簡易課税制度などについて、東京地判平成2年3月26日判時1344号115頁は合憲判断を下している。一方、消費税の分を乗客に転嫁するためにタクシー業者が運輸大臣に値上げの申請が却下されたという事案について、大阪高判平成6年12月13日訟務月報43巻1号66頁は、この却下処分を違法とした上で国家賠償請求を認容している。制度の基本的な部分についての根本的な再検討が必要ではないかと思われる。
※この他、1996(平成8)年度までは限界控除制度が存在した。これは、課税売上高が免税点を超える中小事業者のうち、一定の金額未満であるものについて、税額から限界控除と言われるものを行い、課税売上が免税点を超えても納税負担が一挙に本来の税率とならないようにする制度であった。しかし、これも益税問題を生じさせたことなどから、廃止されるに至った。
〔戻る〕
(2011年3月15日掲載)
(2011年3月25日修正)
(2011年3月31日修正)
(2011年4月5日修正)
(2012年8月12日修正)
(2013年10月17日修正)
(2014年4月1日修正)
(2015年4月21日修正)
(2015年5月19日修正)