地方目的税の法的課題
〔日本税務研究センター刊行、日税研論集第46号・地方税の法的課題(2001年3月)279〜319頁〕
T はじめに
地方税法は,第4条において「道府県」(1)が課すものとされ,または課しうる目的税として,自動車取得税,軽油引取税,入猟税(以上,第4項),水利地益税(第5項)および法定外目的税(第6項)を掲げ,第5条において市町村が課すものとされ,または課しうる目的税として,入湯税(第4項),事業所税(第5項),都市計画税,水利地益税,共同施設税,宅地開発税,国民健康保険税(以上,第6項)および法定外目的税(第7項)を掲げる。そして,第699条以下において,目的税とされる各税目の規律をなす(2)。
地方税法において目的税を定義する規定は存在しないが,地方公共団体が特定の支出目的のために課する租税であって,この租税を規律する法律自体が支出目的を規定するものをいうことは明らかである(3)。
地方税法に掲げられる目的税(以下,地方目的税)とされるものについては,軽油引取税,事業所税,都市計画税などのように度々議論の対象とされるものもあれば,共同施設税および宅地開発税のように,ほとんど議論の対象とされず,現在において課税団体が存在しないものもある。
また,地方目的税は,その性質や正当性などの問題を抱えている。一般的な問題としては,受益者負担金との相違,法定外普通税の目的税化,法定外目的税の可能性が,従来から検討されてきた。そして,目的税は,地方分権改革などとの関連において,これまでにないほどの論議の対象となりつつある。個別的な問題としては,とくに都市計画税の存在意義(正当性にも関連する)や負担のあり方などがあげられよう。一般的に納税者の認識や関心が低いと評される地方目的税であるが(4),重要性は他の種類の租税にも劣るものではない。
本稿においては,地方目的税につき,その一般的性質や存在意義,そして各税目の法的問題点を検討することを試みる。また,地方分権改革との関連において,今後の地方目的税のあり方や可能性について考察を加えたい。
(なお,以下において,地方税法については,原則として,法とのみ記し,または表記を省略する。同様に,地方税附則は附則,地方税法施行令は施行令,地方税法施行規則は施行規則と略す。地方税法及び同法施行に関する取扱についての依命通達は依命通達と略し,道府県税関係と市町村税関係の別を括弧内に記す。また,年号は原則として西暦による表記とする)
U 地方目的税の必要性と正当性
一般的に,近代国家において,租税は国家財政の支出全体に向けられるためのものとされる(5)。そして,原則的に,特定の租税収入を予算中の特定の支出項目に充てることは許されないことになる(ノン・アフェクタシオンの原則(6))。
しかし,このような原則は,とくに法律によって特定の租税について使途を限定することを妨げるものではない。そのような例外の一つとして,目的税が許容される。目的税は「財政の統一的運営を困難にし,また財政の硬直化の一因となる」とされ(7),浪費を招きやすいとも言われる(8)。しかし,実際には,数こそ多くないとはいえ,目的税は,財政において無視しえない役割を果たしている(後に述べるように,程度の差は存在する)。こうした事情は,国であれ地方公共団体であれ,異なるところではない(9)。
それでは,地方目的税の存在は,どのようにして正当化されるのであろうか。
目的税の長所として,使途目的が特定されていることから「行政サービスとその負担者との間に受益関係が濃厚であ」り「納税者の立場から見ると,目的税のほうが負担と行政サービスとの関係がわかりやすいといえる。わかりやすければ,一歩進んで税と行政サービスとの関係について,地域住民が発言できるようになる」と述べる見解が存在する(10)。
自治省税務局も「公共部門の活動に要する財源は,その便益が通常国民全体に及ぶものであるかぎり,一般の租税収入によって調達することが本来のあり方であることはいうまでも」ないということを認めつつも,目的税が必要であるという理由を,次のように述べる。「行政サービスの中には,その便益が国民のうち特定の集団に偏するものがあり,このような特殊の公共サービスに要する費用を一般の税収等によって賄うことは,そのサービスを享受する者に対してのみ特別の利益を与えることになり,税負担の不公平をきたすおそれがあ」る。「このような場合には,公共サービスに要する費用は,できるかぎり料金収入等の租税収入以外の手段によってその受益者にのみ負担させることが適当で」ある「が,それが困難な場合には,当該サービスを享受する者に対して,その受益の程度に対応した課税を行い,その収入を当該サービスの費用に充当することが適当といえ」る。その場合「公共サービスの受益と目的税の負担との間には,できるかぎり適確な対応関係が確認されなければ」ならない,と(11)。
「地方分権推進計画」(平成10年5月29日)においても,法定外目的税についてであるが「住民の受益と負担の関係が明確になり,また,課税の選択の幅をひろげることにもつながる」と述べられている。
このように,行政サーヴィスによる受益と負担の観点(あるいは応益原則の観点)から地方目的税を(再)評価しようとする傾向が存在している。この傾向は,近年の地方分権論議の高まりとともに,ますます強まっている。付言すれば,最近における議論の中には,目的税に限らず地方税制度の全体について「地域行政サービスの多くは,受益がその地域の人々に限定されるので,財源としての税は応益原則にもとづいたものが適切である」という主張も存在する(12)。
このような議論は,受益者負担の概念における安易な拡大の傾向につながっており(13),また単純に応益原則を強調しすぎるのではないかと思われる。応能原則を重視して,目的税の応益原則的な性格を問題とする論者も存在するのである(14)。もっとも,税務執行などの観点からすれば,完全に応能原則化することは困難であろう(15)。ともあれ,受益と負担の観点,あるいは応益原則の観点に立つ上述の議論を正当とするならば,問題は,租税ごとに,その適確な対応関係が見出されるか否かにあろう。
自治省税務局は,「国民のうち特定の集団のみが一定の行政サービスの受益者となる場合,当該受益者に対し負担を求めるには,次の方法によることが適当と思われ」るとして,「(@)排他原則が完全に働く公共サービスの対価たる性格を有する負担については,原則として料金または手数料によるべきで」ある,「(A)受益者の範囲が特定の集団に限定されており,その集団に属する個々の者ごとに受益の程度がかなり明確に評価しうる場合には,原則として負担金によるべきで」ある,「(B)受益者の範囲がかなり広範囲であり,しかも受益の程度が個別的には評価しがたいため,その受益の程度を所得,財産,消費等の外形的標準により近似的に評価して,これに応じて負担を求めることが適当であると認められる場合には,原則として租税によるべきで」ある,としている(16)。
こうした基準は,一般論としては肯首しうる。しかし,目的税に応益原則の要素を見出しやすいとしても,あるいは受益者負担的性格―場合によっては原因者負担的性格ということもある―を見出しやすいとしても,こうした議論には様々な問題があり,目的税の導入には慎重でなければならない,と考えるべきである。
第一に,目的税も租税の一種であるから,定義上,目的税は,受益者負担金などと異なり,行政側(国または地方公共団体)による利益提供(特別の給付)に対する反対給付として位置づけられるものではない(17)。確かに,何らかの形において受益と負担との明確な関係があるのであれば,目的税を導入しやすい。しかし,応益原則あるいは受益者負担的性格に結びつきやすいとしても,目的税のメルクマールは,特定の支出目的のために課する租税であるところにあり,応益原則あるいは受益者負担的性格に直接関係しない目的税も存在しうる(18)。
もっとも,実際のところ,目的税と受益者負担金とは区別をつけがたいことが多く,もしくは,目的税とされるものであっても実質的には受益者負担金などであると考えられるものもある。この場合,受益者負担金(場合によっては原因者負担金)などとの異同を判断しがたいというものも存在する。従って「現実の目的税において,受益=負担という関係の存在が不明確であり,受益者負担金や各種料金と理論上区分する基準,法定外普通税との関係が曖昧であ」り(19),受益者負担金(原因者負担金)と地方目的税の二重併課(二重負担)の問題も生ずる。
しかし,逆に,目的税の中には,受益と負担との関係が必ずしも明らかでないもの,使途目的が特定されていることから「行政サービスとその負担者との間に受益関係が濃厚であ」ると直ちに言いえないものが存在し,問題とされている(20)。
従って,第二に,目的税に応益原則あるいは受益者負担的性格を見出すとすれば,受益者負担(原因者負担)の意義・範囲との関連を問わなければならない。実際の問題として,何処まで貫徹しうるのであろうか。
例えば,揮発油税(国税。それ自体は普通税であり,消費課税である)・地方道路税などは,受益的負担金,原因者負担金に類似する。しかし,関係者が非常に多いこと,受益・損傷の程度を(利用者)個人毎に特定できないから,租税とされる(21)。
しかし,全ての目的税が,上記基準が一般論として妥当であることを前提としても,これに照らして問題がないとは言いえない。地方目的税とされる租税において,受益と負担との関係が明確であると言いうるのか,個別的な検討を必要とする。
目的税に応益原則なり受益者負担的性格を見出す議論は,理念論あるいは理想論としてであれば了解しうるが,サーヴィスに関する受益と負担との関係は,負担金や手数料のほうが明快であるし,そもそも受益そのものの存在が明確でない場合もある。また,この見解は,目的税の比率が増えるならば,それだけ財政が硬直度を増し,予算における資源配分を歪めるという危険性を無視しており,地方公共団体の財政収入における目的税の割合が低いという現実を軽視している。目的税の困難は,収入が少なければ存続の意義が問われかねず,逆に収入が多くなると予算(さらに財政全般)を硬直化させるところにある。
第三に,法律による使途目的の限定が重要であろう。法律による使途目的の限定は,まず,限定の仕方によっては税目の存在を稀薄化させる原因となる。次に,時代の需要に適合しなくなるおそれが生じうるし,現に生じている。現行の地方目的税においては,課税団体が存在したことのないもの(宅地開発税)または消滅するもの(都道府県の水利地益税,市町村の共同施設税),形骸化するもの(都道府県の入猟税,市町村の水利地益税)が生じる。これらは,使途目的の範囲が狭い,または時代の需要に適合しないものであると言いうる。地方税法において「課することができる」と規定されるものについては,それほど問題が生じないとも言いうるが,「課するものとする」と規定されるものについては,存続の合理性が疑われうる。
また,地方目的税のうち,「道府県」税については道路目的財源とされるもの,市町村税については都市開発などのための目的財源とされるものの存在が目立つが,これらは高度経済成長期であればそれなりの理由が立つものの,現在においてどこまで妥当性を有するかという疑問が生ずる(22)。
また,法律による使途目的の限定は,地方公共団体の財政の弾力性を阻害するおそれがあるということばかりでなく(23),地方公共団体の課税自主権,地方公共団体の議会の予算審議権・議決権などとの関連において問題となる。この問題は,地方目的税に限らず,地方税全体に関わる問題でもあり,また,法定外普通税および法定外目的税の問題とも関連する。地方公共団体の議会の予算審議権・議決権などとの関連について述べるならば,地方税法(その他の法律)において使途目的を限定することは,地方公共団体自身が新たな政策を採らなければならない場合などにおいて,障害になると考えられる。また,租税収入における目的税収入の割合が高まるほど,地方公共団体の議会が有する予算審議権・議決権の範囲を狭め,地方自治における団体自治・住民自治の原則に背馳する結果につながりかねない,ということを指摘しておきたい。
さらに,上記のことと関連するが,目的税により,或る分野への支出が「既得権」化するおそれがあることを指摘しうる。また,法律・条例により定められる支出目的が時代に適合しなくなることもありうる。目的税を存置するのであれば,時代の要求に合致した新たな支出目的を定める必要がある。例えば,軽油引取税は,現在のところ道路目的財源とされているが,NOx(窒素酸化物)などによる大気汚染の一因が自動車(とくにディーゼルエンジン車)の排出ガスにあることなどを考えるならば,地方公共団体による環境政策の費用のために用いられることが許容されるべきであろう。ちなみに,自動車が環境汚染を引き起こす「移動排出源」であることから,自動車取得税など自動車関連諸税における営業用自動車と自家用自動車との税負担の差異を縮小することへの検討が必要であると述べる見解も存在する(24)。
V 各税毎の課題
最初に述べた通り,現行の地方目的税は,法第4条(「道府県」)および第5条(市町村)において明示されたものに限られており,第699条以下において,各税目について規律がなされている。ここで,税目毎に法的課題を検討することとしたい(法定外目的税については,Wにおいて論ずる)。
(1)「道府県」目的税
法第4条により,「道府県」は自動車取得税,軽油引取税および入猟税を課するものとされており(第4項),水利地益税を課しうるものとされている(第5項)。このうち,自動車取得税および軽油引取税は,いずれも自動車関連諸税に属し,道路目的財源とされている。地方税法には,他に自動車関連諸税として自動車税(第4条第2項第8号,「道府県」税),軽自動車税(第5条第2項第3号,市町村税)が規定されている。但し,自動車税および軽自動車税は道路目的財源(目的税)とされていない。
@自動車取得税
法第699条によれば「道府県は,市町村(特別区を含む。第699条の32及び第699条の33において同じ。)に対し道路に関する費用に充てる財源を交付するため,及び道路に関する費用に充てるため,自動車取得税を課するものと」される。納税義務者は自動車の取得者であり,「主たる定置場所在の道府県」が課税権を有する(第699条の2第1項。なお,第2項を参照)。申告納付による(第699条の10。第699条の11に申告納付の手続が規定される)。
自動車取得税は,1968年,地方道(とくに市町村道)の整備を促進するために新設された。自治省によれば,自動車取得税は,自動車の取得―所有権の取得であり,有償か無償かを問わない―という事実に担税力を見出す流通税でもあり,道路損傷負担金的な性格をも有するものとされる(25)。確かに,自動車の有償取得に担税力を見出すことは可能である。しかし,それだけでは自動車取得税の存在を正当化しえないであろう(26)。また,道路損傷負担金的な性格という説明に対しては,意味するところは必ずしも明らかではないが「厳密に受益と負担との関係が存在するか否かは疑問であり,自動車と道路との一般的関係以上のものではありえない」という批判がある(27)。道路を利用するという受益が存在するというだけでなく,否,むしろ道路損傷の原因が存在するということにより,道路損傷負担金的な性格という説明がなされるのであろう。
自動車取得税の課税標準は,自動車の取得価額である(第699条の7)。税率は,本来ならば3%である(第699条の8)が,2003年3月31日までは5%とされる(附則第32条第2項)。また,免税点は,本来ならば15万円である(第699条の9)が,2003年3月31日までは50万円とされる(附則第32条第5項)。このような暫定措置が1974年4月1日から長期間にわたって採られていることも問題であるが,税率および免税点を一定とする意義にも疑問が残る。
なお,附則第32条第3項は電気自動車・天然ガス自動車・メタノール自動車に関する減税規定であり,2001年3月31日までの取得に関して適用される。また,第4項はハイブリッド自動車に関する減税規定であり,2000年3月31日までの取得に関して適用される。さらに,エネルギーの使用の合理化に関する法律第20条第1号に係る政令において定められる基準に適合する低燃費自動車(ハイブリッド自動車を除く)については,2001年3月31日までの取得に際し,取得価格から30万円を控除して得られた額が取得価格とされる(同第6項)。但し,この特例は「申告書又は修正申告書に,当該自動車の取得につき前項の規定の適用を受けようとする旨その他の自治省令で定める事項の記載がある場合に限り,適用」される(同第7項)。
地方道の改良率や舗装率が依然として低いことは,地方道路目的財源の拡充を求める要求の根拠とされる。地方道の改良率や舗装率には,地域によって格差が存在するであろう。また,一年間あたりの自動車取得数・登録台数も,都道府県によって差異が存在する。そうであれば,第699条の8に規定される税率,および第699条の9に規定される免税点については,完全に地方公共団体の条例に委ねることが問題であるならば,標準税率化する,あるいは制限税率を定めるという方法を採用すべきであろう。
なお,自動車取得税および軽油引取税をはじめとする自動車関係諸税(および揮発油税,地方道路税,石油ガス税)はあまりに複雑であるから簡素化すべきであるという意見が存在する。これに対して,「個々の自動車についてみればこれらの税がすべて課されるというわけではないこと,現行の税体系は,自動車の取得,保有,燃料の消費に着目して各種の税を課すこととしており,これによって全体として適正な税負担が実現されると考えられること,諸外国においてもおおむね同様の税体系を有していること等を総合的に勘案すると,現行税制には理由があるものと考えられる」とする見解もある(28)。しかし,現行の制度が納税者にとって理解しにくいことは否めない。また,自動車の保有に際して,これらの租税の負担は決して軽いものではない。自治省からも「地方道路税を揮発油税に統合してその一定割合(現行の譲与額を確保することを前提とする)を地方団体に譲与する方式(現行石油ガス譲与税又は自動車重量譲与税方式)も簡素化の一方法として考えられ」るとする見解が述べられている(29)。
A軽油引取税法第700条によれば「道府県は,道路に関する費用に充てるため,及び道路法第7条第3項に規定する指定市(以下本節において「指定市」という。)に対し道路に関する費用に充てる財源を交付するため,軽油引取税を課するものと」される。税率は,700条の7により,1klあたりで15000円とされている。但し,附則第32条の2第2項により,2003年3月31日までの間に行われる軽油の引取等にかかる税率は,1klあたり32100円である。この暫定措置も1979年以来の長期にわたっており(30),税率および免税点を一定とする意義とともに,自動車取得税と同様の疑問が残る。むしろ,第2章において述べたように,軽油引取税の使途目的に環境政策の要素を加え,その上で,税率などについて,完全に地方公共団体の条例に委ねることが問題であるならば,標準税率化する,あるいは制限税率を定めるという方法を採用すべきであろう。
納税義務者等は,特約業者または元売り業者からの軽油の引取(民法の引渡に対応する)でその引取にかかる軽油の現実の納入を伴うものについて,その引取を行う者とされる(法第700条の3)。その他,特約業者または元売業者などが納税義務者等になる場合もある。
徴収方法は,原則として特別徴収による(第700条の10本文)。特別徴収義務者は,元売業者または特約業者その他徴収の便宜を有する者である(第700条の11第1項)。
軽油引取税は,小売価格に対して税額が大きいこと,現在のディーゼルエンジンが,軽油のみならず,軽油と灯油(灯油のほうが安価である)などとの混合油をも燃料としうること(31),軽油が密造されやすいこと,などの理由により,脱税行為などの対象となりやすい(32)。このため,軽油の流通や消費の実態を正確に把握しなければならず,質問・検査など調査に多くの時間が費やされざるをえない(33)。
1998年秋,特別徴収義務者たる石油輸入業者が,機械の洗浄などのために使用され,軽油と重油との中間的性質を有する粗油を輸入し,これを軽油として販売しながら,軽油引取税を納付していないという事件が報道された(同種の事件は多く報告されている)。その背景の一つとして,特定石油製品輸入暫定措置法が1996年3月に廃止されて軽油の輸入が自由化されたことなどがあげられるが,複数の法律における軽油の定義の齟齬もあげられるものと考えられる。
法第700条の2第1項第1号において,軽油は「温度15度において0.8017をこえ,0.8762に達するまでの比重を有する炭化水素油をいい,政令で定める規格の炭化水素油を含まないものとする」と定義され,施行令第56条において「法第700条の2第1項第1号に規定する政令で定める規格は,次の各号の一に掲げるものとする」として,次のような規格が定められている。分流性状90%留出温度(34)が267度をこえて400度以下であること(第1号・第2号),第1号および第2号に掲げられるものの他,残留炭素分が0.2%をこえること(第3号),第2号および第3号に掲げられるものの他,引火点が温度130度をこえること(第4号)。すなわち,分流性状90%留出温度は267<x≦400,温度15度における比重は0.8017<y≦0.8762とされる(35)。
しかし,関税定率法別表第27類「鉱物性燃料及び鉱物油並びにこれらの蒸留物,歴青物並びに鉱物性ろう」備考1(c)によれば,軽油は,90%留出温度が350度以下,温度15度における比重が0.8757以下と定義され,310<x≦350,y≦0.8757となる。軽油の定義は品質確保法においてもなされているが,これも地方税法による定義,および関税定率法による定義と異なり,x≦360などとなっている。
この相違は,関税定率法が軽油(などの石油類)の輸入段階に関する規律をなすのに対し,地方税法および同法施行令が軽油の引取段階に関する規律をなすことに由来するのであろう。しかし,関税と軽油引取税の課税段階が異なるため,課税関係が複雑化する。そのために,軽油引取税の不申告などの不正が生じやすいと思われる。
このような事態に対処するため,1999年の改正により,第700条の14の2が追加されて故意不申告罪が創設された。軽油引取税の脱税行為に対する罰則規定としては,既に第700条の28が存在する。しかし,申告納付の場合における脱税について,同条によって罰せられるのは,第2項にいう「偽りその他不正の行為」により軽油引取税を免れる行為であり,申告書の提出を行わないことは「偽りその他不正の行為」により軽油引取税を免れる行為でなく,特別徴収義務者が納入しなかった場合の罰則(同第1項。第700条の11第2項も参照)と均衡がとれていなかった。このため,第700条の14の2が追加された。また,第700条の22の5第1項・第2項の報告義務規定が整備された。
確かに,上記のような改正により,軽油引取税の課税は強化されるであろう。しかし,複数の法律における軽油の定義の齟齬は解決されておらず,問題の根本的解決にはなっていない。また,関税と軽油引取税の課税段階の相違は残されたままである。適正な課税および品質の保持を考慮に入れ,軽油の定義を一本化する必要があるとともに,輸入軽油については課税段階を輸入の段階(通関時)に統一する必要があるものと思われる。
B入猟税
法第700条の51第1項によれば「道府県は,鳥獣の保護及び狩猟に関する行政の実施に要する費用に充てるため,当該道府県知事の狩猟者の登録を受ける者に対し,入猟税を課するものと」される。但し,第237条第2項第1号に規定される放鳥獣猟区のみに関して狩猟者の登録を受ける者は,入猟税の納税義務者ではない(第700条の51の2)。狩猟者登録税(第236条。普通税)と同時に賦課徴収される(第700条の54第1項)。
入猟税による収入は,平成10年度決算において全国で12億9500万円ほどである(36)。地方税全体の収入に占める割合としても非常に低く,同じ目的税である自動車取得税および軽油引取税と著しい対照をなしている(37)。
入猟税は,狩猟者登録税と同時に賦課徴収されることから,実質的には,狩猟という受益に対する反対給付としての意味と,狩猟者登録税の付加税としての意義を与えられていると思われる。少なくとも,上記の自治省税務局が示す基準(B)に該当するとは言い難い。「受益の程度が個別的には評価しがたい」か否かはともあれ,「受益者の範囲がかなり広範囲であ」るとは考えにくいからである。「鳥獣の保護」に関する行政と「狩猟に関する行政」とを区別して考えるならば「当該道府県知事の狩猟者の登録を受ける者」に対する実質的な受益者負担金ではないことになるが,このような考え方は文理に反する。むしろ,「受益者の範囲が特定の集団に限定され」るという意味において,(A)の基準に従い,負担金と考えるべきではなかろうか。「その集団に属する個々の者ごとに受益の程度がかなり明確に評価しうる」か否かが問題となりうるが,可能であろうと思われる。
C水利地益税
法第703条によれば「道府県又は市町村は,水利に関する事業,都市計画法に基づいて行う事業その他土地又は山林の利益となるべき事業の実施に要する費用に充てるため,当該事業に因り特に利益を受ける土地又は家屋に対し,その価格又は面積を課税標準として,水利地益税を課することができる」とされる。この税金を徴収している都道府県は存在しない(38)。また,現在,都道府県が水利地益税を徴収する意味が存在するのかについても疑問が残る。
(2)市町村目的税
市町村目的税のうち,全ての市町村を課税主体とするものは,都市計画税,水利地益税,共同施設税,宅地開発税および国民健康保険税であるが,これらはいずれも,市町村に課税義務が課されていない(法第5条第6項)。これに対し,入湯税および事業所税については課税義務が課されているが,入湯税の課税団体は鉱泉浴場所在の市町村に限られており(同第4項),事業所税の課税団体は「指定都市等」に限られている(第701条の30)。
@入湯税
法第701条によれば「鉱泉浴場所在の市町村は,環境衛生施設,鉱泉源の保護管理施設及び消防施設その他消防活動に必要な施設の整備並びに観光の振興(観光施設の整備を含む。)に要する費用に充てるため,鉱泉浴場における入湯に対し,入湯者に入湯税を課するものと」される(39)。徴収額は,入湯客一人一日につき150円を標準とし(法第701条の2),特別徴収による(法第701条の3)。なお,依命通達第9章二(5)によれば,「一泊二日の入湯客について」は「一日として取り扱う」とされる。しかし,このように,市町村条例の基準となる規定は,法律において明定すべきであろう。
入湯税が市町村税となったのは1950年の地方税法改正時であり,1957年の地方税法改正時に目的税化された。鉱泉浴場―温泉法第2条にいう温泉を指すのが原則であるが,依命通達第9章二(2)は「社会通念上鉱泉浴場として認識されるものも含まれる」とする―を利用する入湯客に対して課税するという性質上,奢侈税的な性格が強いとされることもある(40)。入湯税をこのように性格づけるため,依命通達第9章二(2)は「一般公衆浴場,共同浴場などにおける入湯」および「長期療養者を対象として設けられている僻すう地の簡素な温泉旅館における長期湯治客等」を課税の対象外としている。しかし,こうした非課税措置も市町村条例の基準となるべきものであり,法律において明定すべきである。また,歴史的な経緯はともあれ,入湯税が奢侈税であることは,明文からは必ずしも明らかではない。依命通達第9章二(2)にも端的に示されているように,私人の入湯行為が奢侈的行為でない場合もあろう。また,入湯施設の料金および施設の内容も様々であり,奢侈的要素を一面的に強調することはできない。
入湯税の存在意義について「鉱泉浴場所在の市町村においては,入湯施設と市町村の行政との間に関連性が強い」ことが主張される(41)。しかし,実際には,市町村―入湯税は1000を超える市町村において課税される―の財政(租税)収入に占める入湯税の割合は,課税市町村間において少なからぬ相違がある(42)。
A事業所税
地方税法第701条の30によれば「指定都市等は,都市環境の整備及び改善に関する事業に要する費用に充てるため,事業所税を課するものと」される。申告納付による。
事業所税の課税根拠は,次の諸点にあると説明される。第一に,大都市地域に事務所や事業所が集中し,その結果として過度の人口集中を招いたことから,都市環境施設を整備するための財政需要が急増していることから,こうした事務所や事業所が大都市地域における集積の受益者であり,上記財政需要の原因者であり,総合的な税負担の状況からすればこうした事務所や事業所には応分の負担能力がある。第二に,法人住民税や法人事業税の場合には,企業の決算が赤字であれば負担をする必要がない。第三に,導入当時,都市環境施設を整備するための財政需要が急増していたが,歳入中に占める地方税の割合が低下の一途をたどっていた(43)。こうしたことから,事業所税には受益者負担的な側面と原因者負担的な側面の双方が存在することとなる(44)。
しかし,こうした説明に対して,事業所税が「都市財源として期待されたものであり,その根拠の一つとして都市的財政需要への充当があったとはいえ,当然一般財源=普通税であるべき性格のものである」とし,支出目的が「一般的かつ漠然たるものであ」ること,他の市町村目的税と異なって事業所税が地方交付税の基準財政収入額に算入される(地方交付税法第14条)ことから「目的税の乱用といわざるをえない」という批判が寄せられる(45)。また,事業所税が地方交付税の基準財政収入額に算入されることについては「大都市の税収入の増加が,交付税財源の余裕となり,大都市の犠牲において地方都市が恩恵を被ることになった」という見解も存在する(46)。
事業所税の課税客体は,事業所等において法人もしくは個人の行う事業(「事業に係る事業所税」),または事業所用家屋の新増築(「新増設に係る事業所税」)である。納税義務者は,事業所等において事業を行う者または事業所用家屋の建築主であり,事業所等の家屋または新増築家屋の所有権の帰属とは関係ない(第701条の32第1項)。従って,ビルの貸主AがBにビルを賃貸し,Bが事業を行う場合には,Bが事業所税の納税義務者となる(但し,Aは,法第701条の52第2項により,申告をしなければならない)。また,租税回避行為を防止するための規定として,親族などの特殊な関係にある個人または同族会社などの特殊関係者がある場合に,その特殊関係者との共同事業または共同行為とみなし,連帯納税義務を負うこととされている(第701条の32第5項)。
「新増設に係る事業所税」については「事業所用家屋」の意味が問題とされる。これについては「家屋の全部又は一部で人の居住の用に供するもの以外のもの」という定義が存在する(第701条の31第1項第7号)が,その具体的な意味が争われるのである。
「人の居住の用に供するもの」に関して,横浜地判平成3年9月30日判時1466号90頁は「特定の者が継続して生活の本拠として居住の用に供することを意味する」と解し,それについては構造,設備,建築目的,地理的条件などを総合的に考慮して判断すべきであると判示している。構造や設備などの外見から判断しえない場合には,建築目的,地理的条件なども考慮の対象に入れざるをえないであろう(47)。
「事業に係る事業所税」の課税標準は,資産割(事業所床面積)と従業者割(従業者給与総額)で求められる。「新増設に係る事業所税」の課税標準は,新築または増築をした事業所用家屋の新増設事業所床面積である。税率は,「事業に係る事業所税」の場合,資産割が1uあたり600円,従業者割が0.25%であり,「新増設に係る事業所税」の場合,1uあたり6000円である(第701条の42)。免税点は,第701条の43により,事業所床面積1000u以下(資産割),従業者数100人以下(従業者割)などと規定される(48)。
事業所税の課税団体は,上述の通り「指定都市等」に限られている。法第701条の31第1項第1号によれば,「指定都市等」は,政令指定都市(地方自治法第252条の19第1項),政令指定都市以外の「市で首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域を有するもの」(49),およびそれ以外の「市で人口(官報で公示された最近の国勢調査の結果による人口その他これに準ずるものとして政令で定めるものをいう。)30万人以上のもののうち政令で指定するもの」とされる(50)。また,法第735条により,東京都は「特別区の存する区域において」事業所税を課税しうる。このように課税団体(市)を限定することには,地方公共団体の課税自主権との関連において疑問が残る。また,事業所税を課する市について,新たな指定および指定の取消(理論上は撤回に該当する)が行われることがあり,市によっては財政上の不安定要素ともなりうることも問題であろう。
B都市計画税
法第702条第1項によれば「市町村は,都市計画法に基づいて行う都市計画事業又は土地区画整理法に基づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てるため,当該市町村の区域で都市計画法第5条の規定により都市計画区域として指定されたもののうち市街化区域内に所在する土地及び家屋に対し,その価格を課税標準として,当該土地又は家屋の所有者に都市計画税を課することができる。当該都市計画区域のうち市街化調整区域において同法第34条第10号イに掲げる開発行為に係る開発区域内で同法に基づく都市計画事業が施行されることその他特別の事情がある場合には,当該市街化調整区域のうち条例で定める土地及び家屋についても,同様とする」。
「都市計画税の賦課徴収は,固定資産税の賦課徴収の例によるものとし,特別の事情がある場合を除き,固定資産税の賦課徴収とあわせて行うものとする」(法第702条の8第1項)とされている。また,第348条第2項ないし第5項または第351条によって固定資産税を課することができない土地または家屋に対しては,都市計画税を課することもできない(第702条の2第2項)。固定資産税において認められる住宅用地等に対する課税標準の特例(第349条の3の2)も,都市計画税において認められる(第702条の3)。このことから,固定資産税と都市計画税とは,課税客体,納税義務者,課税標準などを同じくしており,固定資産税の付加税的な性格を有することになる。
都市計画税については,その存立根拠などをめぐって,様々な問題点が存在する。
都市計画税は,都市計画事業の施行によって上昇した土地または家屋の価値を当該所有者が享受することに着目した,応益的な思考方法に基づいたものである,と主張される。これに対しては,特別の受益関係が存在するのか,という疑問が提示される。
法律上,このような受益の限度において課税するということは規定されていない。むしろ,法第702条の4により,税率は0.3%を超えてはならない。この点において水利地益税と異なる(依命通達(市町村税関係)第9章五(1)も参照)。また,都市計画税の場合,水利地益税と異なり,課税対象が「当該事業に因り特に利益を受ける土地又は家屋」に限定されていないため,納税者の受益の程度が明確であるとは言えない部分がある(51)。むしろ「市町村が都市計画法又は土地区画整理法に基づいて都市計画事業又は土地区画整理事業を行う場合には,都市計画区域内の土地及び家屋について,一般的に利用価値の向上,価格の上昇等が伴うので,これらの利益を窮極的に受けると考えられる当該土地又は家屋の所有者に対しその事業に要する費用を負担させる」ことが都市計画税の意義と考えられている(52)。この点が,受益者負担金と異なる点であり,都市計画税と受益者負担金との併課を認める理由ともされているのであろう(53)。
このような論法に対しては,次のような批判がある。それによれば「単に『税』という名称が付されていることだけを根拠にその他の負担金と併課してよいと結論づけるのには,例えば国民健康保険税に加えて,国民健康保険料を課す場合を考えればわかるように,無理があり,名称の如何にかかわらず当該負担金がいかなる目的で,いかなる根拠に基づいて課されるのかを慎重に検討する必要があるといえ」,また,都市計画税導入時に受益者負担の性格を与えられていたこともあり,都市計画税の実質は受益者負担金としての性格を濃厚に有するものであり,下水道受益者負担金と都市計画税とは「ともに下水道事業の費用に充てるためのものである点で同じであるし,その根拠も当該事業によって生ずる『地価の上昇』もしくは『土地の使用価値の上昇』である点で同一であるといわざるをえ」ず,「負担義務者の実質的要件もほぼ同一といってよい」(54)。
また,「都市計画税について主張される受益関係論は,固定資産税との対比ではその受益の個別性を強調し,他方,受益者負担金との対比ではその受益の一般性を強調するというように論理整合性に欠け,かつ便宜にすぎるものといえよう」とする批判もある(55)。
私も,以上の批判を正当と考える。まず,都市計画税の場合,都市計画事業や土地区画整理事業により,土地や家屋を所有する市民が一般的に利益を受けることが前提とされる。しかし,これはあまりに粗雑な前提であり,固定資産税に上乗せして納税者に負担を強いるための説得力に欠け,固定資産税と都市計画税とを併課する根拠としてあまりに薄弱である。仮にこのような利益が存在するとすれば,固定資産税の課税標準額算定によって評価しうるはずである(56)。しかも,都市計画税の使途の面から見ても,都市計画事業または土地区画整理事業をその他の事業から明確に,しかも具体的に区別することは困難であり,現実的にも,固定資産税の使途と変わらないと言われる。都市計画税の使途について,住民(納税者)から疑念が寄せられることが多いとも言われており,明確化が望まれる(57)。
C水利地益税
意義は「道府県」の水利地益税と同じである。現在のところ,20余の市町村が課税している(58)。なお,都市計画税を課する場合には「都市計画法に基づいて行う事業の実施に要する費用に充てるための水利地益税を課することができない」とされている(法第703条第3項)。
課税標準は土地または家屋の価格または面積とされている。課税額については「当該土地又は家屋が前項の事業に因り特に受ける利益の限度をこえることができない」と規定されるのみである(同第2項)。これについて「家屋にあっては,固定資産税の課税標準である家屋の評価額を用い,山林等にあっては,その面積を課税標準とするのが適当である」とする見解がある(59)。「特に受ける利益の限度」については「その事業又は施設により値上りする家屋の総額又はその土地若しくは家屋から生ずる収益の増加価格を捉えることが適当である」と説明されるのみである(依命通達(市町村税関係)第9章五(2))。
上記の規定から,水利地益税と受益者負担金とは明確に区別しがたいものと考えられる。しかし,少なくとも,都市計画税に比べれば受益と負担との関係は明確である(60)。
D共同施設税
法第703条の2によれば「市町村は,共同作業場,共同倉庫,共同集荷場,汚物処理施設その他これらに類する施設に要する費用に充てるため,当該施設に因り特に利益を受ける者に対し,共同施設税を課することができる」。共同施設税は,1965年(昭和40年)度には5団体が課税していたが,1971年度に高知県須崎市および宮崎県日之影町が廃止し,1972年度以降,課税団体はない。
共同施設税は,法律による定義からしても,受益者負担金と明確に区別しがたい。というより,受益者負担金そのものと言いうるであろう。課税の対象は「共同作業場,共同倉庫,共同集荷場,汚物処理施設その他これらに類する施設」によって「特に利益を受ける者」に限定されている。このことは,「受益者の範囲が特定の集団に限定されており,その集団に属する個々の者ごとに受益の程度がかなり明確に評価しうる場合」に該当しうるのであって,「受益者の範囲がかなり広範囲であり,しかも受益の程度が個別的には評価しがたい」場合に該当するとは言い難い。
また,共同施設税については,既に示したように,四半世紀以上の長期にわたって課税団体が存在しない。もはや存続の意義を失っていると言えよう。
E宅地開発税
第703条の3第1項によると「市町村は,宅地開発(宅地以外の土地の区画形質を変更することにより当該土地を宅地とすること又は宅地以外の土地を宅地に転用することをいう。以下本条において同じ。)に伴い必要となる道路,水路その他の公共施設で政令で定めるもの(以下本条において「公共施設」という。)の整備に要する費用に充てるため,都市計画法第7条第1項に規定する市街化区域のうち公共施設の整備が必要とされる区域内で権原に基づき宅地開発を行なう者に対し,当該宅地開発に係る宅地の面積(公共の用に供される部分の面積を除く。)を課税標準として,宅地開発税を課することができる」とされている。なお,「公共施設」は,幅員12m未満の道路,「公共下水道以外の排水路」,公園,緑地または広場(いずれも敷地面積が0.5ha未満)とされる(施行令第56条の85)。
宅地開発税は,1969年度の地方税法改正によって設けられた。それ以前から,大都市およびその周辺の市町村においては宅地開発が急速に進行したため,その地域の市町村は公共施設の整備に追われることになった。このため,宅地開発を行う者に対して負担を求める方法として,行政法学において度々言及される宅地開発要綱が用いられていた。宅地開発税は「『宅地開発要綱』等によって課されているものを合理化する必要があり,その方向への途を開くもの」として創設されたのであるが(61),現在に至るまで,この税金を徴収している市町村は存在しない。むしろ,宅地開発に伴って必要となる公共施設の「整備に要する費用」は,市町村の宅地開発要綱により,宅地開発税の納税義務者である「公共施設の整備が必要とされる区域内で権原を基づき宅地開発を行う者」からの負担金により賄われていることが多いようである(62)。理由として,次のようなことが考えられる。
まず,上記の規定から,市街化区域として指定されていない区域が課税区域にならないことは勿論,市街化区域として指定されている場合であっても,市町村条例において指定されていない区域は課税区域にならない。このため,予め条例によって宅地開発税の課税区域を指定しなければならず,新たな宅地開発に臨機応変に対応できない。
次に,法第703条の3第2項によれば,税率は「宅地開発に伴い必要となる公共施設の整備に要する費用,当該公共施設による受益の状況等を参酌して,当該市町村の条例で定める」とされる。しかし,附則第33条第2項により,市町村が宅地開発税の税率を定め,または変更するときには,「当分の間」都道府県知事を経由して(63)自治大臣への届出が必要とされており(64),依命通達(市町村税関係)第9章六(7)(イ)により,税率は「当分の間」1uあたり500円未満とすることが求められている。自治大臣への届出が文字通りの届出制であるのか(規定上からはそのように解釈しうる),実質的な許可制であるのかは必ずしも明らかではなく,「宅地開発に伴い必要となる公共施設の整備に要する費用,当該公共施設による受益の状況等を参酌し」た税率を設定することも,容易なことではないと思われる。税率が1uあたり500円未満では少ないという意見も存在する。むしろ,負担金によるほうが,手続的に簡易であるし,受益を適切に評価しうると思われる(受益の程度はケース・バイ・ケースではなかろうか)。
さらに,「公共施設」であっても政令に定めのないものについては,宅地開発税の使途の対象にならない。また,税収によって「公共施設の用地を確保することが現実には困難である」(65)。
今後,宅地開発税を地方目的税の一種として存続させるのであれば,条例による課税区域指定制度の廃止(市街化区域そのものを課税区域にする。場合によっては,市街化区域以外の区域をも含める),自治大臣への届出制の廃止,「公共施設」の範囲の拡大が必要であろう(66)。もっとも,その場合,都市計画税などとの調整が必要であると思われる。
F国民健康保険税
2000年4月1日より介護保険法が施行された。このため,地方税法第703条の4は1997年に改正されており,2000年4月1日より改正法が施行される。以下,「旧」は2000年3月31日までの施行法を,「新」は改正法を示す。
法第703条の4新第1項によると「国民健康保険事業を行う市町村(一部事務組合又は広域連合を設けて国民健康保険事業を行う場合においては,当該一部事務組合又は広域連合に加入している市町村)は,国民健康保険に要する費用(老人保健法の規定による拠出金及び介護保険法の規定による納付金の納付に要する費用を含むものとし,国民健康保険を行う一部事務組合又は広域連合に加入している市町村にあっては,当該一部事務組合又は広域連合の国民健康保険に要する費用(老人保健法の規定による拠出金及び介護保険法の規定による納付金の納付に要する費用を含む。)の分賦金とする。次項において同じ)に充てるため,国民健康保険の被保険者である世帯主に対し,国民健康保険税を課することができる」とされる(旧第1項も基本的な内容は同じ)。
「納税義務者等」は,国民健康保険の被保険者たる世帯主(地方税法第703条の4旧第1項。なお,同旧第18項・新第27項を参照)とされている。
国民健康保健税の場合,当該年度において確保すべき標準課税総額を算定し,その総額を按分して納税義務者に課税することとなっている。今回改正前の法において,国民健康保険法第8条の2に規定される「退職被保険者等」以外の「一般被保険者」に対する標準課税総額は,地方税法第704条の4旧第2項に規定される合算額であり,旧第3項に定められた表に従うこととなっている。その上で,「一般被保険者」に対し,旧第3項に定められた表の区分に応じ,所得割額(旧第5項),資産割額(旧第9項),被保険者均等割額(旧第10項)または世帯別平等割額(旧第11項)の合算額が課税される(旧第4項)。但し,課税額は,53万円を超えることができない(旧第17項)。
改正法においては,まず,新第2項により「国民健康保健税の納税義務者に対する課税額は,国民健康保健の被保険者である世帯主及びその世帯に属する国民健康保健の被保険者につき算定した基礎課税額(中略)並びに当該世帯主及び当該世帯に属する国民健康保健の被保険者のうち」介護保険法「第9条第2号に規定する被保険者であるものにつき算定した介護納付金課税額(中略)の合算額」とされる。その他,大枠については今回改正前の法と同様である(国民健康保険法第8条の2に規定される「退職被保険者等」以外の「一般被保険者」に対する標準基礎課税総額について,地方税法第704条の4新第3項および新第4項。所得割額について新第6項,資産割額について新第10項,被保険者均等割額について新第11項,世帯別平等割額について新第12項。合算額の課税について新第5項。課税額の限度について新第26項。やはり53万円を超えることができない)。
国民健康保険法第8条の2に規定される「退職被保険者等」については,標準課税(基礎)総額という概念がない。「退職被保険者等」に対する課税額は,所得割額(地方税法第703条の4旧第13項・新第14項),資産割額(同旧第15項・新第16項),被保険者均等割額または世帯別平等割額(同旧第16項・新第17項)の合算額とされる(地方税法第703条の4旧第12項・新第13項)。「退職被保険者等」に対する課税額についても,53万円を超えることができない(旧第17項,新第26項)。
介護保険法の施行に伴い,新第2項によって,介護保険料とともに国民健康保健税の納税義務者の負担が増えることになる。介護保険料の設定次第で,低所得者層の負担増が懸念される。また,軽減措置の適用例が増えることも考えられる。
賦課期日および納期は市町村条例の定めによる(第705条)が,市(町・村)国民健康保険税条例(準則)第6条は賦課期日を4月1日とし,第7条は納期を4月,7月,10月,1月の四期としている。
国民健康保険税は,由来からしても,その他の地方目的税と異なる性格を有している。1950年度まで,国民保険事業の費用は,被保険者たる世帯主から徴収される保険料(等級および額が定められていた)および一部負担金によって賄われていた。しかし,保険料の徴収率が低く,財政運営を逼迫化させたことから,1951年の地方税法改正により国民健康保険税が創設され,それまでの保険料を租税として徴収しうることになった。但し,国民健康保険税を導入するか否かは,市町村の選択に委ねられる。
このことからも明らかなように,国民健康保険税は国民健康保険料と基本的に同じ性質のものである。しかし,両者には相違もある。第一に,国民健康保険税の場合,上記の通り,法定限度額として53万円を超えることはできない。これに対し,国民健康保険料の場合,国民健康保険法に保険料の賦課限度額に関する明示的規定がなく,市町村の実情に合わせて保険料を定めることができる(国民健康保険法第81条を参照)。このため,都市部では国民健康保険料を採用する傾向にあると言われる(67)。第二に,市町村の賦課決定権の消滅時効は,国民健康保険税の場合,地方税法第17条の5第1項によって3年とされ,徴収権の消滅時効は同第18条第1項によって5年とされる。これに対し,国民健康保険料の場合,賦課決定権および徴収権の消滅時効は,国民健康保険法第110条第1項によって2年とされる。
なお,国民健康保険法第76条によれば,保険料が原則であり,国民健康保険税は例外とされるのであるが,実際に国民健康保険税を課する市町村は3000近くにのぼる(被保険者は全市町村住民の約18%に留まると言われる)。
また,国民健康保険税による収入は,その他の地方目的税と異なり,内閣が地方財政法第30条の2に基づいて国会に対して行う地方財政の状況についての報告において,市町村税の収入として扱われていないようである。従って『地方財政白書』においても,国民健康保険税による収入は市町村税の収入として扱われていない。そのためであろうか,国民健康保険税を徴収している市町村であっても,予算および決算を住民に公表する際,国民健康保険税を目的税収入としていない市町村も存在する。例えば,大分市の場合,納期の時期を6月から翌年3月までの毎月,10期に分けて,国民健康保険税を徴収している。しかし,公表されている資料には,歳入科目に国民健康保険税のことが示されておらず,1995年度ないし1997年度における市税収入のうち,目的税とされているものは入湯税,事業所税,都市計画税のみである。特別会計予算(当初予算)の会計名によって税収を推測する以外にない(68)。
また,国民健康保険税(料)の徴収率は,年々低下しつつあり,地域別にみても較差が存在する。そればかりでなく,住民(被保険者)が納付すべき国民健康保険税(料)の較差が最大で7倍以上であることが報告されている(69)。国民健康保険制度自体も赤字を抱えており,市町村の一般会計をも圧迫している。事実,大分県中津市は,医療費の伸びおよび老人医療拠出金の増加,基金の取り崩しの限界などを理由に,国民健康保険税を平均20%,年額にして13,989円引き上げることを内容とする国民健康保険税条例改正案を,2000年12月の市議会に提案した。この案は,12月19日,市議会厚生委員会にて原案通り可決され,12月22日には最終本会議において,やはり原案通り可決された(2001年4月から施行される)(70)。
この他,仙台高秋田支判昭和57年7月23日判時1052号3頁(秋田市国保税訴訟)で提起された問題がある(71)。
W 法定外目的税の可能性
―地方分権との関連において―
1990年代に入って,ようやく,地方分権推進に向かっての改革が始められた。この改革においては,当然,かねてから地方公共団体が望んできた地方財源の拡充,とりわけ,(独自の収入としての)地方税収入源の拡充が課題となった。1995年に制定された地方分権推進法の第6条も「地方税財源の充実確保を図る」と謳っている。同法第9条により設置された地方分権推進委員会は,これまで,中間報告,および,四次にわたる勧告を呈示した(72)。それらを受けて,1998年5月には「地方分権推進計画」が閣議決定された。そして,1999年に制定された「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(以下,地方分権一括法)により,地方税法も多くの改正を受けた。さらに,これを受ける形で(「東京都における銀行業等に対する事業税の課税標準等の特例に関する条例」が制定・施行されたことの影響もあると考えられる),法定外普通税および法定外目的税の新設に向けた動きが広がっている。
そこで,本節においては,地方分権改革における地方目的税の扱われ方を検討し,Uにおいて呈示しておいた法定外目的税の問題について検討を試みる(なお,法定外普通税については,機会を改めて論ずることとしたい)。
1 地方分権と地方目的税
地方分権推進委員会は,これまで,「国庫補助負担金・税財源に関する中間とりまとめ」(平成8年12月20日)および「第二次勧告」(平成9年7月8日)において「地方税財源の充実確保」を提言している。これを受けた「地方分権推進計画」(平成10年5月)も同様である(73)。一般論を述べるならば,これらによる提言は,他の項目に比べて非常に抽象的であり,大体の方向性が示されているにすぎない(74)。
また,地方分権推進委員会によるいずれの勧告等においても,また,「地方分権推進計画」においても,現在の目的税を見直す旨の記述はない。地方分権推進委員会議事録を見る限りにおいても,現行の目的税について(少なくとも十分な)審議はなされていない(75)。
このような状況の中,これまで地方税法において規定されていなかった法定外目的税を導入する可能性が認められている。まず,地方分権推進委員会による「国庫補助負担金・税財源に関する中間とりまとめ」(平成8年12月20日)の「X 地方分権と地方税財源の充実確保」1(2)Aは「法定外の目的税の創設について検討する必要がある」と述べる(但し,これ以上のことは述べられていない)。また,同Bは「標準税率及び制限税率のあり方について検討する必要がある」とも述べている(但し,やはりこれ以上のことは述べられていない)。
次に,同委員会による「第二次勧告」第3章X1(2)Aは,「法定外目的税については,住民の受益と負担の関係が明確になり,また,課税の選択の幅を広げることにもつながるから,その創設を図る。その場合,国と事前協議を行うこととし,法定外普通税と同様,国との合意(又は同意)を要することとする」と述べる。また,同Bは「標準税率を採用しない場合における国への事前の届出等については,課税自主権の尊重の観点から廃止する」,Cは「制限税率は,総合的な税負担の適正化を図るためにも,その全面的な廃止は適当ではないが,個人市町村民税については,住民自らが負担を決定する性格が強いこと,個人道府県民税には制限税率がないこととの均衡等を考慮し,その制限税率を廃止する」とする。
そして,「地方分権推進計画」第4「国庫負担補助金の整理統合化と地方税財源の充実確保」の4「地方税財源の充実確保」(1)イ「課税自主権の尊重」(イ)は「法定外目的税については,住民の受益と負担の関係が明確になり,また,課税の選択の幅を広げることにもつながるから,その創設を図る。その場合,国と事前協議を行うこととし,法定外普通税と同様,国との同意を要することとする」と述べる(第二次勧告第3章X1(2)Aとほぼ同文であるが,「合意」が削除されている)。推進計画第4の4(1)イ(ウ)「標準税率を採用しない場合における国への事前の届出等については,課税自主権の尊重の観点から廃止する」は,第二次勧告第3章X1(2)Bと同文であり,1998年4月1日施行の地方税法改正によって措置が済んでいる。また,推進計画第4の4(1)イ(エ)「制限税率は,総合的な税負担の適性化を図るためにも,その全面的な廃止は適当ではないが,個人市町村民税については,住民自らが負担を決定する性格が強いこと,個人道府県住民税には制限税率がないこととの均衡等を考慮し,その制限税率を廃止する」は,第二次勧告第3章X1(2)Cと同文であり,やはり1998年4月1日施行の地方税法改正によって措置が済んでいる。
なお,地方分権推進委員会によるいずれの勧告等・総理府による地方分権推進計画にも,現在の地方目的税を見直す旨(税目の廃止など)の記述はない。そのため,地方分権推進一括法による改正後の地方税法も,法定外目的税以外は従前の通りとなっている。しかし,少なくとも,都道府県の水利地益税,共同施設税および宅地開発税については,廃止することも考えられるべきであろう(廃止した後,法定外普通税または法定外目的税として再導入することは可能であると思われる)。
2 法定外目的税の必要性
問題は,法定外目的税を導入する必要性,現行の目的税において存在する標準税率および制限税率を存続させることの妥当性,そして法定外目的税の実現可能性であろう。まず,法定外目的税を導入する必要性について検討する。
法定外目的税については,地方税法に規定が存在しなかったことから,導入不能(禁止)説が通説であった。その理由として,或る論者は,法第4条第3項および第4条第3項によって地方公共団体が法定外普通税を「起こし」うるが,第259条および第669条により,自治大臣の許可が必要とされるという拘束の存在からすれば,法定外目的税について許容の余地が存在するとは考えられない旨を述べる(76)。Uにおいて言及した諸原則からみても,地方税法が目的税を限定的に列挙していると解さざるをえなかったであろう。
別の論者は,法定外地方税が例外的な場合にしか考えられず,法定外普通税を設置する余地を認めておくならば地方公共団体の財政調達に支障はないことや,目的税があくまでも例外的存在であることから「支出と直結した収入は,むしろ負担金,分担金等によって賄うべき」であることを述べる(77)。この説明は,暗に法定外普通税の目的税化を容認するものであり,実際に,目的税的な性格を有する法定外普通税が,少数ながら創設された(78)。それを正当化する説明として,条例が支出目的を規定される場合に「法定外普通税創設の趣旨をせん明したものと理解されるべきであ」るから目的税ではないとするものがあり(79),自治省もこれを容認していた(80)。しかし,実際に法定外普通税の目的税化が認められていたのであれば,地方税法においてその旨を規定すべきであったとも考えられる。
地方分権一括法により,地方税法第4条に第6項が,同第5条に第7項が加えられ,地方公共団体が法定外目的税を導入することが法律の明文により認められることとなった(また,新設の要件,手続などに関する規定として,第731条ないし第733条の27が追加された)。これにより,法定外普通税の目的税化ということはなくなるものと考えられる。
普通税の使途を限定することには,本来であれば,Uにおいて述べた原則との関係において問題が残る。また,使途目的が社会福祉や自然環境の保護・社会環境の整備にあると宣言されると,十分な論理的裏付けもなく安直に正当化されるという危険性もある(81)。
また,原因者負担的な観点から,大企業などに対して新たに目的税を課することに積極的な意義を見出す議論も存在する(82)。しかし,これは日本の産業構造を無視した全くの観念論であり,賛成しえない。実際にこのようなことを行えば,産業の空洞化を促進するだけであろう。
さらに,Uにおいて述べたように,「地方分権推進計画」は目的税について「住民の受益と負担の関係が明確にな」ると述べるが,これについても疑問が残る。しかし,地方公共団体の財政力を強化する,課税の選択の幅を広げる,という点からは,目的税を認容すべしということになるであろう。その場合であっても,私は,Uにおいて述べた理由により,目的税,とくに法定外目的税の導入には慎重たるべきであると考える。さらに,実際に法定外普通税の目的税化が認められているのであれば,地方税法においてその旨を明定すべきであろう。
3 地方目的税における標準税率および制限税率
今回の「地方分権推進計画」において,個人市町村民税の制限税率の廃止が打ち出され,やはり1998年4月1日施行の地方税法改正によって措置が済んでいる。しかし,現行の地方目的税については,標準税率および制限税率は存続することになる。
4 法定外目的税の実現可能性
前述の通り,「地方分権推進計画」は,地方公共団体による法定外目的税の自主的な創設を認める旨を述べている。その際に,無限定に認めるという立場は採らず,国との事前協議,および「国との同意」を要件としている。地方税法第731条第2項も「法定外目的税を新設し,又は変更しようとする場合においては,あらかじめ,総務大臣に協議し,その同意を得なければならない」と定める。
国との事前協議および「国との同意」については,一般的にも批判があるが(83),法定外目的税(および法定外普通税)についても,従前の許可制(法定外普通税について,改正前の第259条により採られていた)といかなる相違が生じることになるのか,疑問が残る。
もっとも,法第733条によれば,総務大臣は,地方公共団体が法第731条第2項に基づいて協議を申し出た場合,原則として同意をしなければならない。しかも,税源の存在および財政需要の存在は,協議事項から外されている。しかし,第733条各号に定められる不同意事由のうち,第3号にいう「国の経済政策に照らして適当でないこと」の解釈は,総務大臣の裁量に委ねられるものであろう。また,第732条により,総務大臣は「協議の申出を受けた場合においては,その旨を財務大臣に通知しなければなら」ず(第1項),これを受けて財務大臣は総務大臣に異議を「申し出ることができる」(第2項)。そのため,総務大臣が財務大臣の異議を尊重して地方公共団体に同意を与えないという事例が生じうることとなる。
また,実際に法定外目的税の税源となりうべきものがどの程度残されているのであろうか。応益原則,あるいは受益者負担論を持ち出すとしても,受益と負担との関係はそれほど明確でない場合が多い。法定外目的税を導入するための,住民を納得させうるだけの根拠を見出しうるかがポイントになるであろう。住民の負担が増えるにも関わらず,財政収入において非常に低い割合しか占めない租税は,導入するに値しないし,住民の理解を得られるはずがないからである。
但し,地方公共団体の自主財源を拡充する―財政収入における地方税収入を拡充する―ことを第一の目的としない法定外目的税についてであれば,法定外目的税の導入に向けた可能性が存在する(84)。すなわち,特定の政策を遂行にあたっての,財政手段による規制を目的とする法定外目的税の活用である。私は,Uにおいて,軽油引取税を地方公共団体による環境政策の費用のために用いられることが許容されるべきである旨を記した(自動車取得税についても同様に考えてよいものと思われる)。そればかりでなく,環境税としての法定外目的税の導入は,今後,地方公共団体における環境政策を推進するにあたり,十分に検討に値する(勿論,経済効果などを含めて総合的な観点から検討がなされなければならない)。実際,現段階において法定外目的税の導入に向けての検討状況をみると,産業廃棄物埋立税(産業廃棄物処理税)の導入が,三重県を始め,青森県・岩手県・秋田県(共同導入),九州各県(沖縄県および山口県を含む。当初は福岡県単独の導入が予定されていたが,九州知事会により,共同導入とされた),および北海道において検討されている(85)。北海道においては,炭素税の導入も検討されている(86)。さらに,熊本県において,地下水保全と水道利用量の抑制を狙った法定外目的税の導入が検討されている(87)。これらは実現に至っていないが,負担に対する住民の理解という点において,法定外目的税導入に関する最大の可能性を示すものと考えられる。今後の展開に注目したい。
注
(1) 東京都については,法第1条第2項において「この法律中道府県に関する規定は都に,市町村に関する規定は特別区に準用する」とされ,同項および第3項において読み替え規定が存在する。また,施行令第1条および施行規則第1条を参照。
(2) なお,国税における目的税として,電源開発促進税,地方道路税および特別とん税があり,いずれも消費課税である。このうち,地方道路税および特別とん税は,いずれも地方譲与税である。
(3) その法律自体ではなく,他の法律によって支出目的が特定される場合も存在する(揮発油税,石油ガス税など)。これを特定財源と称することがある。実質的には目的税と異ならないが,概念上は両者を区別する必要がある。柴田護・中西博・栗田幸雄・渡邊功『地方税総則』(1971年,良書普及会)13頁,佐藤進・伊東弘文『入門租税論』〔改訂版〕(1994年,三嶺書房)29頁,浅沼潤三郎・清永敬次・村井正編著『地方自治大系第三巻』(1995年,嵯峨野書院)173頁[田中治担当],新井隆一『租税法の基礎理論』〔第三版〕(1997年,日本評論社)25頁,金子宏『租税法』〔第七版〕(1999年,弘文堂)17頁を参照。また,木村弘之亮『租税法総則』(1998年,成文堂)49頁は,本文に示した意味における目的税を狭義の目的税とし,特定財源を広義の目的税とする。
(4) 中井英雄「地方目的税の機能と課題」橋本徹編著『地方税の理論と課題』(1995年,税務経理協会)219頁が,このような評価を下す。その理由として,同書において「税の性格や徴税のしくみにもその原因がある」が「最大の原因は,課税団体の広報活動や情報公開の不十分さにある」と述べられている(同頁)。この点について,ホームページなどで若干の情報を公開するところもある(私が知る限りにおいては,神奈川県のホームページが,地方目的税に関して最も詳細な情報を提供している)。
なお,本文にも示したように,近年,目的税全般に関する議論が活発になりつつある。その代表的な例として,牛嶋正『これからの税制 目的税』(2000年,東洋経済新報社)がある。同書は,詳細で,かつ,これまでになかった議論を展開している。しかし,これについては,機会を改めて論じることとしたい。
(5) 日本において総計予算主義として度々言及される原則であり,財政法第14条,会計法第2条および地方自治法第210条は,この原則を明文化した規定であると説明される(ノン・アフェクタシオンの原則の現われとも考えられる)。杉村章三郎『財政法』〔新版〕(1982年,有斐閣)39頁,兵藤広治『財政会計法』(1984年,ぎょうせい)21頁,河野一之『新版予算制度』(1987年,学陽書房)9頁,槇重博『財政法原論』(1991年,弘文堂)157頁などを参照。また,この原則はドイツにおいて総額充足の原則(Prinzip der Gesamtdeckung)とも呼ばれ,予算原則法第7条および連邦予算法第8条に規定される。Vgl. Franz Klein, Bund und Laender nach der Finanzverfassung des Grundgesetzes, in: Ernst Benda / Werner Maihofer / Hans-Jochen Vogel (Hg.), Handbuch des Verfassungsrechts, Studienausgabe, Teil 2, 2. Auflage, 1995, §25 Rn. 64; Peter Badura, Staatsrecht, Systematische Erlaeuterung des Grundgesetzes fuer die Bundesrepublik Deutschland, 2. Auflage, 1996,T Rn. 96; Klaus Staender, Lexikon der oeffentlichen Finanzwirtschaft, Wirtschaft-, Haushalts- und Kassenrecht, 4. Auflage, 1997, S. 187; Herbert Wiesner, Oeffentliche Finanzwissenschaft, 10. Auflage, 1997, S.91.
(6) Wiesner, a. a. O., S. 91はDer Grundsatz der Nichtbindung von Haushaltseinnahmenという言葉で説明する。
(7) 金子・前掲書17頁。浅沼・清永・村井編著・前掲書174頁[田中]も同旨。
(8) 佐藤・伊東・前掲書30頁を参照。浅沼・清永・村井編著・前掲書174頁[田中]は「使途の特定をすればするほど,特定の事業や施策に対する支出が増大し,納税者の負担が一層増大するという悪循環が生じる」と述べる。
(9) 肥後和夫編『財政学要論』〔第4版〕(1993年,有斐閣)138頁[西村紀三郎担当]が,このことを明示する。
(10) 山崎正『地方分権と予算・決算』(1996年,勁草書房)188頁。
(11) 自治省税務局編『地方税入門』(1992年,地方財務協会)316頁。
(12) 平野正樹・近藤学・宮原信吾『受益と負担の経済学―税制・年金改革のシナリオ―』(1999年,日本評論社)31頁。
(13) 受益者負担金(場合によっては原因者負担金)の範囲につき,大川政三編『財政論』(1975年,有斐閣)189頁[中桐宏文担当],高寄昇三『地方自治の財政学』(1975年,勁草書房)282頁,佐藤進・林健久編『地方財政読本』〔第4版〕(1994年,東洋経済新報社)149頁[片桐正俊担当],碓井光明『自治体財政・財務法』〔改訂版〕(1995年,学陽書房)178頁などを参照。
(14) 北野弘久編『現代税法事典』〔第2版〕(1992年,中央経済社)210頁[伊藤悟担当]は「目的税は応益課税に立脚しているため,税負担公平の原則からみて問題である」と述べる。また,和田八束「目的税と法定外普通税」国民税制調査会編『地方税制―不公平税制改革への提言―』(1979年,学陽書房)139頁も,目的税が「部分的であり,例外的であり,一時的な課税であるならば許容しうるにしても,目的税の種類が多くなり,負担が増大することは,税負担公平の原則からみて問題である」と述べる。
(15) 但し,国民健康保険税は応能原則的な性格をも有する。
(16) 自治省税務局編・前掲書316頁,317頁。
(17) 租税の定義について,新井・前掲書2頁,金子・前掲書9頁,田中二郎『租税法』〔第三版〕(1990年,有斐閣)1頁を参照。Vgl. etwa Hans-Wolfgang Arndt, Grundzuege des Allgemeinen Steuerrechts, 1988, S. 6, 13; Karl Koch / Rolf-Detlev Scholz (Hg.), Abgabenordnung, 5. Auflage, 1996, §3 Rn.5ff; Franz Klein, Abgabenordnung, 6. Auflage, 1998, §3 Rn. 2, 7.
(18) この点については,地方税における目的税のあり方に関する調査研究委員会『地方税における目的税のあり方に関する調査研究報告書(平成2年3月)』(1990年,自治総合センター)15頁も参照。
(19) 北野編・前掲書210頁[伊藤]。しかし,具体的にいかなる基準が問題であるかについては述べていない。
(20) 例として,和田・前掲書136頁を参照。なお,地方税における目的税のあり方に関する調査研究委員会・前掲書13頁,柴田・中西・栗田・渡邊・前掲書13頁を参照。
(21) 金子・前掲書17頁。なお,同書19頁注6にも引用されている昭和46年4月税制調査会基本問題小委員会報告を参照。
(22) 佐藤・林編・前掲書149頁は「資源の適正配分および財政硬直化防止の見地から,自動車関連諸税の一般財源化を求める声が強まっている」と述べる。また,地方譲与税についてではあるが,鳴海正泰『現代日本の地方自治と地方財政』〔改訂増補第三版〕(1996年,公人社)199頁は,地方道路税,石油ガス税および自動車重量税について「いつまでも道路の特定財源としておくべきものかが問題となっている」と述べる。これに対しては,地方道の改良率や舗装率が依然として低いことなどを理由に,むしろ地方道路目的財源(とくに市町村)の充実を図るべきであるという主張がある。その例として,やや古い文献であるが,梶田信一郎「自動車関係諸税と道路目的財源」磯田英一監修(坂田期雄編集)『財政非常事態と自治体―その見方,とらえ方,重要問題のすべて―』(1983年,ぎょうせい)245頁を参照。また,税制調査会が1986年(昭和61年)10月に行った「税制の抜本的見直しについての答申」も,やはり地方の道路目的財源の「充実強化を図るべきであるとの意見があった」と述べる。確かに,地方の道路事情は,依然として良くない。
(23) ちなみに,地方公共団体の財政担当者が予算編成を行う際に,目的税をどの程度意識するかについては差があるようである。地方税における目的税のあり方に関する調査研究委員会・前掲書13頁,113頁,中井・前掲225頁を参照。
(24) 松浦元哉「環境問題に関する地方税制のあり方に関する調査研究報告について」地方税47巻7号(1996年)89頁。なお,東京都の「大都市税制研究会答申(自動車税のグリーン化)」(平成10年11月25日)も参照、さらに,横山彰「地方環境税の課税哲学と新しい地方環境税構想」地方税51巻9号(2000年)5頁も参照。
(25) 自治省税務局編・前掲書256頁。
(26) 浅沼・清永・村井編・前掲書181頁[田中]。
(27) 和田・前掲138頁。
(28) 税制調査会の前掲答申。
(29) 自治省税務局編・前掲書270頁。
(30) 但し,現在の税率は1993年(平成5年)4月1日からのものであり,それまでは1klあたり24300円であった。
(31) 元来,ディーゼルエンジンは,軽油または重油を燃料とする。
(32) 朝日新聞1998年10月20日付朝刊(西部本社版),日本経済新聞1998年10月21日付朝刊(西部支社12版)において指摘されている。また,軽油の密造などの問題については,1998年11月19日に,NHK総合テレビ「クローズアップ現代」で放映された。
(33) 加藤直樹「軽油引取税における質問検査権と国税犯則取締法の準用(その1)」地方税44巻11号(1993年)106頁。また,都道府県における取り組みの例として,金沢良一「群馬県における広域調査及び徴収体制について―家屋評価員,軽油引取税調査担当者及び徴収特別係の取り組み―」地方税50巻6号(1999年)110頁を参照。この他にも多くの文献があるが,最近のものとして,青柳進「『軽油引取税申告不納入(付)事案に対する取組み』について―新たな事案の解決に向けて―」地方税51巻10号(2000年)65頁も参照。さらに,日本経済新聞2001年1月29日付朝刊(西部支社11版)39面も参照。
(34) この数値が高いほど,不純物が多いとされる。数値が最も低いものは揮発油である。
(35) 法第700条の2第1項第1号および施行令第56条第1項の文言には曖昧さが残るので,数値については和田薫「軽油の輸入等にかかる軽油引取税の課税の適正化について」地方税50巻6号(1999年)139頁を参照した。
(36) 自治省編『地方財政白書〔平成12年度版〕』(2000年,大蔵省印刷局)284頁による。
(37) 自治省編・前掲書284頁によれば,平成10年度決算における全都道府県の収入額のうち,自動車取得税の占める割合は3.2%,軽油引取税の占める割合は8.4%である。これらの数値も決して高いとは言いえないが,入猟税の占める割合が0%に近いことを考え合わせれば,本文に示したように表現しうる。
(38) 自治省編・前掲書284頁には,水利地益税の項目がない。自治省財政局編『地方財政のしくみとその運営の実態』(1987年,地方財務協会)208頁にも「現在この水利地益税を徴収している都道府県はない」という記述がある。
(39) 入湯税の場合は「受益者と納税義務者が全く異なって」おり,受益者が当該市町村の居住者で「多くの納税義務者は」当該市町村以外の居住者であるという見解もある。和田・前掲137頁。しかし,この見解は妥当でない。当該市町村以外の居住者である納税義務者も,何らかの形で利益を受けていると考えられる。
(40) 北脇保之・武田文男・今仲康之『地方税法U』(1992年,ぎょうせい)72頁,山井秀明「入湯税の課税免除について」地方税47巻7号(1996年)151頁,高橋伸二「町が設置した施設の鉱泉浴場に対する入湯税の課税免除」税1999年6月号115頁。
(41) 自治省財政局編・前掲書541頁。桑原健「入湯税の概要とその使途状況について」地方税47巻4号(1996年)131頁も同旨。
(42) 桑原・前掲132頁によると,1993年度(平成5年度)における市町村の税収入総額に占める入湯税の割合は,群馬県伊香保町(18.81%)のように比較的高いところもあれば,札幌市のように,1%を切る市町村も存在する。なお,札幌市は,1993年度(平成5年度)の入湯税の収入額において第7位(約2億6500万円)である。
(43) 石見隆三「事業所税の創設に想う」地方税26巻4号(1975年)7頁。
(44) 自治省税務局市町村税課編『逐条解説事業所税』税理昭和50年11月号別冊付録17頁も参照。
(45) 和田・前掲140頁。
(46) 高寄昇三『新・地方自治の財政学』(1998年,勁草書房)64頁。
(47) 木ノ下一郎「事業所税にいう『事業所用家屋』の意義―人の居住の用に供するもの以外のもの―」税1995年11月号145頁。
(48) 北野編・前掲書234頁[伊藤]は,事業所税の問題点として「応能負担の考え方から現行の外形標準のあり方」をあげる。
(49) 川口市,武蔵野市,三鷹市,守口市,東大阪市,堺市,尼崎市,西宮市,芦屋市。なお,堺市は中核市である。
(50) 施行令第56条の15。中核市の他,川越市,浦和市,大宮市,所沢市,越谷市,市川市,船橋市,松戸市,柏市,八王子市,町田市,横須賀市,藤沢市,相模原市,岡崎市,豊中市,吹田市,高槻市,枚方市,奈良市,倉敷市,那覇市。
(51) この点の詳細につき,中村芳昭「都市計画税の存立根拠への疑問」経済集志54巻4号(1985年)1129頁を参照。神戸地判昭和57年4月30日判時1058号40頁も参照。
(52) 自治省税務局編『地方税制の現状とその運営の実態』(1987年,地方財務協会)562頁。
(53) 奈良地判昭和56年6月26日判タ451号113頁,神戸地判昭和57年4月30日判時1058号40頁を参照。
(54) 三木義一「受益者負担金と都市計画税の二重負担問題」『受益者負担制度の法的研究』(1995年,信山社)42頁。
(55) 北野弘久編『現代税法講義』〔三訂版〕(1999年,法律文化社)214頁[田中治担当]。
(56) 同旨,中村・前掲1134頁。
(57) 佐藤・林編・前掲書148頁。
(58) 自治省税務局編『地方税制の現状とその運営の実態〔平成9年9月〕』(1997年,地方財務協会)515頁によれば,水利地益税を課する市町村は,平成7年度において,宮城県で7,富山県で2,岐阜県で1,島根県で1,岡山県で5,高知県で1,福岡県で5,長崎県で1,熊本県で1,宮崎県で1,計25団体である。
(59) 藤井一成・黒石慶三・三宅正芳・熊谷弘編『平成11年度版地方税ハンドブック』(1999年,ぎょうせい)293頁。
(60) 依命通達第9章五(1)を参照。なお,宮路洋「水利地益税一事例の検討」地方税29巻7号(1978年)98頁を参照。
(61) 渡邊功・丸山高満・鈴木俊二・由比長松『宅地開発税詳解』(月刊地方税別冊。1969年,地方財務協会)11頁。
(62) 大野義輝『地方財政の制度と理論』(1994年,勁草書房)135頁。
(63) 依命通達(市町村税編)第9章六(9)(ロ)。
(64) 市町村の整備計画(地方税法施行規則第24条の31を参照)についても,総務大臣への届出が必要とされている。
(65) 碓井・前掲書185頁。
(66) 碓井・前掲書186頁は,宅地開発税の長所(不均一課税の肯定,実質的な物納を認めること)をあげて「活用を考えるべきではないかと思う」と述べる。
(67) 中井・前掲233頁,前川尚美『国民健康保険』(1985年,ぎょうせい)188頁を参照。
(68) しかし,大分市が発行している「みんなの市税」という小冊子において,国民健康保険税は,目的税の一種として解説を加えられている(平成12年版48頁)。但し,市税収入の内訳において,国民健康保険税が外されている(同書7頁)。
(69) 詳細は松谷宏『正直者が馬鹿を見る国民健康保険』(2000年,宝島社新書)を参照。同書には,国民健康保険制度の運営の実態がよく示されている。なお,杉田一宏「国民健康保険税(料)の現状―平成10年度―」地方税51巻8号(2000年)138頁も参照。
(70) 朝日新聞2000年12月19日付朝刊大分10版25面,および同2000年12月23日付朝刊大分10版29面による。
(71) この判決について,北野弘久「国民保険税条例にもとづく保険税賦課処分の適法性」『税法学の実践論的展開』(1993年,勁草書房)491頁などに評釈がある。
(72) 地方税に関する地方分権推進委員会の審議状況をまとめたものとして末宗徹郎「地方分権推進委員会における地方税関係の審議状況について」地方税47巻11号(1996年)42頁がある。なお,第五次勧告は,地方分権推進計画の後に呈示された。
(73) また,地方分権推進委員会は「意見―分権型社会の創造―」(平成12年8月8日)を内閣総理大臣に提出している。
(74) この点について,西尾勝氏は,地方分権推進委員会による諸勧告への取り組みにおいて「機関委任事務制度の全面廃止と国の事務権限の委譲と関与の縮小は真っ先に取り上げるべきだが,必置規制と補助金・税財政問題は難しいから後回しにしたほうがいいと考え」,「地方六団体の足並みがそろう問題,官僚だけが抵抗するような問題から先にやり,政治家と業界団体が一緒になって闘争しそうな話はできるだけ後にしましょうというのが私の基本戦略で」あったと述べている(自治体学会編集部会他「新時代の自治へ 分権改革への道筋」自治体学会『年報自治体学第11号』(1998年,良書普及会)2頁)。また,税制調査会第8回総会(平成9年11月18日)において,大田弘子氏は「今回の地方分権推進委員会の勧告の中では,課税自主権については,あまり議論されていない。つまり,税源を国から地方に委譲することと併せて,地方交付税を大幅に減らして,それから,制限税率を廃止するという部分は,これは税調のマターだから,地方分権推進委員会では,あまり議論しないのだというような議論の仕分けがあったようです」という発言をしており,加藤寛氏も「私ども,実は地方分権推進委員会で,かなりそこへ突っ込んでくれるのではないかと期待していましたが,向こうは大変紳士的でして,こちらにすべてお任せするということだから,我々としては積極的に採り上げていかなければならないと思っています」と述べている(大田氏および加藤氏の発言は,総理府ホームページ中の「審議会・委員会などの情報」コーナーに掲載されている「税制調査会第8回総会議事の要旨(平成9年11月18日開催)」から引用した)。なお,松本英昭『新地方自治制度詳解』(2000年,ぎょうせい)41頁も参照。
(75) 総理府ホームページにおいて,第43回目ないし第215回目の地方分権推進委員会議事概要が公開されていた。2001年1月6日の中央省庁再編により,内閣府に業務が受け継がれた。内閣府のホームページにおいても公開されている。
(76) 浅沼・清永・村井編著・前掲書178頁[田中],田中治「古都保存協力税の法構造と問題点」京都仏教会編『古都税反対運動の軌跡と展望―政治と宗教の間で』(1988年,第一法規)26頁。
(77) 滝野欣彌『地方税総則入門―逐条問答―』(1985年,ぎょうせい)47頁。
(78) 静岡県熱海市の別荘等所有税が代表的な例である。この租税に関する最近の文献として,桜井良治『分権的土地政策と財政』(1997年,ぎょうせい)159頁を参照。また,京都市で導入されようとしていた古都保存協力税については,文献は多いが,田中・前掲17頁,碓井光明「古都保存協力税をめぐって―信教の自由との関係を中心として―」法学教室33号(1983年)73頁,畠山武道「京都市古都保存協力税について」ジュリスト786号(1983年)26頁,福家俊朗「京都市古都保存協力税条例」ジュリスト800号(1983年)68頁を参照。
(79) 柴田・中西・栗田・渡邊・前掲書12頁。
(80) なお,西野萬里「地方自治と自主財源の確保―豊かな国民生活の実現をめざして―」地方税43巻8号(1992年)14頁を参照。
(81) 和田・前掲147頁,北野編『現代税法事典』〔第2版〕231頁[伊藤]。
(82) 和田・前掲147頁,北野編・前掲書231頁[伊藤]。
(83) 地方分権に関しては数多くの業績があり,国との事前協議,および国の合意・同意については多くの批判が寄せられている。私も「日本における地方分権に向けての小論」大分大学教育学部研究紀要20巻2号(1998年)191頁(196頁)において検討を加えた。
(84) この点に関しては,ドイツの租税通則法(Abgabenordnung)第3条第1項第1文が参考になる。
(85) 三重県については月刊地方分権編集局「『産業廃棄物埋立税』試案を公表した北川正恭・三重県知事に聞く」月刊地方分権第13号(2000年5月)36頁,および堀順子「『産業廃棄物埋立税』創設構想のめざすもの」月刊地方分権第13号40頁,青森県・岩手県・秋田県(共同導入)および九州各県(沖縄県および山口県を含む)については,大分合同新聞2000年12月16日付朝刊,北海道については朝日新聞の北海道asahi.com/ニュース2000年12月20日付による。北海道の産業廃棄物処理税は,「北海道らしい地方税のあり方に関する調査研究会」が2000年12月19日にまとめた報告書において提唱されている。なお,月刊地方分権17号(2000年)100頁には,岩手県の「環境税」(詳細は不明ながら,法定外目的税としての産業廃棄物埋立税であると思われる)についての記事が掲載されている。この「環境税」と青森県・岩手県・秋田県が共同での導入を検討している産業廃棄物埋立税(産業廃棄物処理税)との関連については,遺憾ながら明らかにならなかった。
(86) 産業廃棄物処理税とともに、「北海道らしい地方税のあり方に関する調査研究会」が2000年12月19日にまとめた報告書において提唱されている。朝日新聞の北海道asahi.com/ニュース2000年12月20日付記事による。
(86) 月刊地方分権第21号(2001年1月)91頁による。
(2001年7月28日掲載)
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