サテライト日田(別府競輪場の場外車券売場)建設問題・第19編
再び、僅か一日での続編となります。今回は、文字通り第18編の続編です。本来ならば、第18-2編とでもすべきところです。
2月1日の夜から、この問題に追われ続け、あるいは追い続けました。2月1日のことについて、もう少し詳しく書いておきたいと思います。なお、今回は、大分合同新聞2001年2月2日付朝刊朝F版25面、西日本新聞同日付朝刊15版34面、朝日新聞同日付朝刊大分10版28面および毎日新聞同日付朝刊大分版23面によりつつ、進めて参ります。以下、発言などの引用はそれぞれの記事によることを、あらかじめ申し上げておきます(煩雑になるので、出典を示しません)。
まず、別府市議会観光経済委員会の模様です。昨年12月市議会で「継続審査」となった補正予算案について、大塚茂樹助役、首藤広行観光経済部長など市側が日田市への働き掛けを説明しました。13時過ぎに開会してから、日田市議会の議決の概略が議員に知らされたそうです。会議において、公明党の委員(議員。以下同じ)や共産党の委員から、今後の見通しについての質問や、議案を撤回すべきであるという意見が出されましたが、市側は、日田市との接触を試みているがその糸口が見つからないこと、日田市民の理解を得て日田市民に愛される施設を造りたいという答弁をしました。質疑応答の後、自民党議員から付帯決議つきの採決を求める動議が発せられ、賛成多数で動議が認められた後、採決がなされました。その際、市民の声クラブの委員が、採決は時期尚早として退席しております。そして、賛成5(自民党)、反対2(公明党、共産党)で可決されました。
付帯決議は、@日田市民に、引き続きサテライト日田設置の理解を求めること、A設置業者の 溝江建設に日田市民との対話の窓口を設けること、B国、県、日田市、別府市の四者によって円満解決に向けた協議会の設置に努力すること、C別府市、日田市の両市民に、経過について正確に周知を図ること、D日田市との友好関係を損なわず、紳士的に融和な関係を維持すること、この5項目を別府市執行部に求める内容です。これについて、三ケ尻正友議長は「重く受け止めていただきたい」と述べ、大塚茂樹助役も「本会議でも理解を得られるよう、最大限の努力をする。付帯決議は重く受け止める」と述べています。
その上で、三ケ尻議長は、現状について、別府市側にアプローチの仕方や考え方に不備があったと認めつつ、別府市が「競輪事業を否定する訳にはいか」ず、臨時会で予算が可決された場合には「議会として、執行部をバックアップし、サテライト日田設置の理解を得るために」日田市などへ何らかの行動を起こしていく旨を述べております。また、大塚茂樹助役は、本会議でも補正予算案が可決されるように努力していく旨を述べた上で、日田市による提訴について、専門家などと協議して対応する、別府市側の見解は裁判の中で明らかにすると述べ、全面的に争う姿勢を見せております。
今回の動きについて、別府市としては、このまま未設置の状況が続くならば、設置許可(これは別府市に対するものではありません)の撤回という事態につながると懸念したのではないか、と推測されます。経済産業省も、この問題について設置許可の見直しも検討するというサインを出しておりました。これが大きな原因(少なくともその一つ)であると思われます。三ケ尻議長の発言からも理解できますが、競輪事業を運営する別府市としては、 溝江建設が受けた設置許可が撤回されるということになれば、車券を販売できなくなり、事業そのものにも大きな打撃になります。
次に、日田市議会臨時会の模様です。こちらのほうは、別府市観光経済委員会と異なり、反対一色に染まっていたようです(当然ですが)。2月1日、別府市、日田市のいずれにおいてもサテライト日田関係の議題が扱われていた訳ですが、別府市側の「強硬姿勢」に、市議会は過熱気味とも言えるほどの怒りの声が高まりました。
10時の開会の後、大石昭忠市長は、別府市を提訴するという内容の議案について、「日田市は、計画が明らかになって以後、(市も市議会も)明確に反対の意思を示した。別府市の市報の記述は事実に反する。日田市の名誉・信用を著しく、毀損した」と、提案理由を読み上げました。その後、議員からの質問が出され、市長は、別府市に二度送った内容証明郵便による訂正要求をあげて、これに対する返答がないことを指摘し、「これ以上待つ必要はない。今回の提訴で事実を確認したい」と返答しました。また、議案について「中止交渉のための手段ではなく、別府市民に真実を明らかにし、日田市の信用を回復させるものだ」と述べております。
議案は総務委員会に付託され、審議されました。その場においても、委員から、国(経済産業省)への訴訟も同時に行うべきではなかったのか、別府市の自民党市議数名が来たが、先に推進スケジュールが決まっていて誠意というのは単なるジェスチャーであって腹立たしい、「経済産業省に座り込んででも計画阻止を」などの意見が続出し、日田市執行部側も、今後も様々な「可能性を含めて設置阻止に向けて検討している」と述べております。こうした中、委員会は議案を可決しました。
13時、本会議が再開され、議員4氏が賛成討論を展開しました(反対討論はなされなかったようです)。その場においても、「別府市のやり方は他市の施設の入場者の増加によって財政を賄うもの」、「教育上もきわめて有害」、などの意見が相次ぎました。採決に移り、議案は全会一致で可決されました。その後、大石市長は、「日田市の名誉と信用を回復するため」に、最終的な目標を場外車券売場を設置させないことに置くと挨拶し、閉会しました。
議案可決を受けて、日田市は、週明けの2月5日に、大分地方裁判所日田支部にて訴訟手続をとるとのことです(大分市から日田市までは90kmほど離れておりますが、大分地方裁判所日田支部に訴訟が係属した場合には、傍聴しようかと考えております)。
本会議にて議案が可決された後、大石市長は「日田市の思いを良識をもって判断してほしいと強く望んでいる」としつつ、別府市議会臨時会がサテライト日田関連の補正予算案を可決した場合には、経済産業省に対する設置許可無効確認訴訟の提起など、考えられうるあらゆる手段を尽くして阻止運動を展開していく旨を語りました。
また、室原基樹日田市議会議長は、市議会終了後に「別府市の臨時会の動きは、あまりに急転直下の出来事で、こういうことは予想していなかった」、「できれば話し合いで何らかの打開策をと考えていたが、これでは不信感しか残らない。議会同士の話し合いはこれで閉ざされた」と語りました。事実上、よほどのことがない限り、「全面対決」(上記大分合同新聞記事の見出しより)、「日田・別府 深まる対立」(上記朝日新聞記事の見出しより)は、即座に解決されそうもありません。
私が気になっているのは、第16編において記しましたように、行政事件訴訟法第36条に規定される無効確認訴訟を提起しうるのかという点なのですが、この点について、大石市長は、日田市「職員が東京の法律事務所に出向き、俎上には載るだろうとの確認を頂いて帰ってきた」と述べております。但し、別府市議会臨時会の展開に注目した上で「慎重に取り組む」という姿勢を示しております。別府市議会のほうは、観光経済委員会の様子でもわかるのですが、議員・会派によって意見が異なります。別府市議会臨時会の審議に注目しなければなりません。
既に賽は投げられている訳で、両市とも、後には退けません。
なお、今回の模様は、南日本新聞2月2日付朝刊にも掲載されたそうです(鹿児島市の「市井人」さんからの情報です。「ひろば」に記載していただきました)。
(2001年2月3日)
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