サテライト日田(別府競輪場の場外車券売場)建設問題・第41編

 

  平成14年度になってから、この不定期連載の記事を作成するのは、今回が初めてのこととなります。

 その間、福岡市中央区における福岡ドーム内の場外馬券売場設置許可問題のほうも、色々な動きがありました。九州朝日放送(KBC)のホームページ、西日本新聞、朝日新聞などのホームページで動きを追っています。こちらも、既に設置許可が出されておりますが、福岡市は設置に消極的な姿勢を示しています。そして、5月21日に西日本新聞社のホームページに掲載された「ドーム場外馬券場「断念」正式回答へ 福岡市長が見通し」という記事によると、この場外馬券売場設置計画は断念されるようです(http://www.nishinippon.co.jp/media/news/news-today/today.html#011。なお、同社の場合、同じアドレスでも、毎日、記事の内容が変わります)。

 記事によりますと、21日、福岡市の山崎広太郎市長との定例記者会見の席上、市長は、佐賀県競馬組合などの3組合から、正式に計画断念の通知(回等)が届くという見通しを示したとのことです。また、4月末に、市長が福岡ドームの副社長、高塚猛氏と面会したそうで、その席上、市長は計画の断念を求めたのに対し、高塚氏は「迷惑をかけないようにします」と答えたとのことです。記事では「計画断念の意向を表明した、と明らかにした」と評価しています。

 一方、サテライト日田問題のほうですが、現在、訴訟が進行中であるということもあって、目新しい動きはありません。別府市のほうも、設置関連の予算案を市議会に提出しておりませんし、現場のほうも全く進行しておりません。これだけ全国に知られてしまえば、工事を強行することも難しいでしょう。最近知ったのですが、北海道は札幌市の方が、このホームページを紹介して下さっております。また、 第42編においても取り上げますが、神奈川大学の村上順教授が、おそらく、サテライト日田問題に関する本格的な論文としては2番目になるものと思われる―いや、こういう書き方はおこがましいですね 。私の論文など、大したことはありません。他の方による論文で引用されていないのですから―「日田訴訟と自治体の原告適格」という論文を、財団法人地方自治総合研究所が発行する雑誌「自治総研」2002年3月号(通巻第281号)にて発表されています(18頁から41頁まで)。

 さて、5月21日、大分地方裁判所においてサテライト日田関連訴訟の口頭弁論が行われました。今回は、その模様などを報告いたします。

 まず、午前中、10時から10分間、日田市対別府市訴訟の口頭弁論が行われました。実は、私はこのことを全く知らされていなかったため、こちらのほうは傍聴しておりません。しかし、日田市役所の方から原告側の 「準備書面(5)」(平成14年5月15日付)をいただきましたので、それに沿って紹介しましょう。

 準備書面(5)は、まず、「第1  被告の認識」において、被告側が提出した準備書面を引用しつつ、「被告が、『原告が通産大臣に対し明確な意思表示をしなかった』と“認識”あるいは“論評”するにあたり、それを真実と信じるに相当な理由がなければならないが、その資料あるいは根拠を全く示していない」と評価しています。

 上記については、私も、既に何度か、様々な形で指摘しています。 要するに、別府市側は、反論こそ重ねているものの、具体的な主張としては内容の乏しいものか、的外れなものしか出していないのです。情報公開関係の訴訟であれば、それでも勝訴できる可能性はあります(実際、大分地方裁判所で出された諸判決を読むと、その点を強く感じます)。しかし、事は名誉毀損が問題になっている訴訟であり、日田市の主張に対しては、それなりに筋の通った反論こそが求められます。それは、本来であれば決して難しくないはずです。日田市が別府市報によって名誉を毀損されたとする主張の立証責任は、日田市が負っているのですから。

 この部分の後、準備書面(5)は事実経過の説明に頁を割いています。そして、「原告は、平成9年7月31日以降も、再三再四に亘って、通商産業省及び九州通商産業局に対し、『サテライト日田』の設置につき明確な反対の意思表示を行ってきたのである」と主張しています。

 そして、地方自治体の名誉について、新潟地方裁判所高田支部平成13年2月28日判決を引用しつつ、存在を肯定しています。この点についても、私は、既に何度か述べております。

 最後に、本件における名誉回復措置の必要性について述べています。別府市側は、日田市が広報ひた号外(2001年3月15日付)において日田市の主張を掲載していること(第24編も参照)、および、「原告の本件訴訟における主張が報道されていることの二点をとらえ、本件謝罪文(原告は「訂正文」という表示をしている)の掲載の必要はないと主張している」のですが、これについて日田市側は「理解に苦しむ」と述べております。私の意見は、既にこの不定期連載をお読みの方であればおわかりのことと思います。つまり、私も、別府市側の主張について「理解に苦し」んでいるのです。また、準備書面(5)も述べている通り、「広報ひた」に日田市の意見を記すことと、別府市側による名誉の侵害を回復することとは、全く別の次元のことです(あまりに簡単な話ですが)。そして、日田市の主張が「報道されたことをもって名誉が回復されたことにならないのも当然のこと」です。それは、「新聞・テレビ・ラジオなどの報道機関は社会の出来事を広く告げ知らせるにあたり、特に訴訟において係争中の事実については、中立の立場から当事者双方の主張を掲載するものであり、報道という一言をもって名誉が回復されたということなどあり得ない」からです。

 なお、今後の方向性ですが、かなり気になることを耳にしました。どうも、今後、和解の方向に進む可能性が高いようなのです(もっとも、私にとっては予想の範囲内ですが)。4月に進行協議が行われたのですが、裁判長から、和解勧告(あるいはそれに類するもの)が出されたようなのです。6月には、東京高等裁判所から、上越市対東京放送訴訟の判決が出るようです。それを見た上で、7月1日に進行協議がなされるようです。その際、日田市が最初に示している訂正文案を若干修正したもの(表現がきついから穏やかなものにするということのようですが、要は別府市の面子も立つような文面にするということです)を提示するようです。これが受け入れられるならば、今年度中にも和解が成立することになります。

 5月21日の午後には、日田市対経済産業大臣訴訟の口頭弁論が開かれましたが、これについては第42編において報告をいたします。

 

(2002年5月22日)

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