22    法人住民税

 

 

 法人住民税は、都道府県法人住民税と市町村法人住民税の総称である。昭和62年度改正までは、いずれも法人税割と均等割からなっていたが、それ以降は都道府県法人住民税についてのみ、利子割が課されている

 ※利子割については「21  個人住民税において述べた。

  法人住民税の場合も、納税義務者などについて、基本的に都道府県と市町村とに共通する要素が多いが、個人住民税と異なり、市町村が一括して徴収するという制度にはなっておらず、都道府県、市町村のそれぞれが徴収することになっている。また、個人住民税と異なり、申告納付方式が採用されており、申告納付の方法は法人税に準じるものである(地方税法第53条、第321条の8)。

 なお、特別区は、第736条第3項により、個人住民税(特別区民税)のみを課することとなっている。従って、特別区は法人住民税について課税権を有しない。

 

 1.納税義務者

 法人住民税の納税義務者は、次のようになっており、それぞれ、義務の範囲が異なっている。

 (1)都道府県または市町村に事務所または事業所を有する法人(地方税法第24条第1項第3号、第294条第1項第3号):法人税割および均等割の合算額

 ※ここにいう事務所や事業所は、事業の必要から設けられた人的・物的施設の総合体であり、継続的に事業の用に供されるものを指す。そのため、一時的に事業の用に供する仮事務所などは含まれないと解されている(金子宏『租税法』〔第十九版〕(2014年、弘文堂)542頁)。

 (2)都道府県または市町村に寮、宿泊所、クラブなどを有するが、事務所または事業所を有しない法人(第24条第1項第4号、第294条第1項第4号):均等割

 なお、法人格を有しない社団または財団であっても、代表者または管理人の定めがあり、かつ、収益事業を行うものは、法人とみなされる(第24条第6項、第294条第8項)。このような社団または財団は、(1)または(2)によって法人住民税を納めなければならない。

 (3)法人税法第2条第29号の2に規定される法人課税信託の引受けを行うことにより、法人税を課される個人であって、道府県内に事務所又は事業所を有するもの:法人税割

 (4)利子の支払またはその取扱いをする者の営業所等で都道府県または市町村に所在するものを通じて利子等の支払を受ける法人(第24条第1項第5号):利子割

 一方、国、独立行政法人、国立大学法人、地方公共団体など、公共性の大きい法人は、法人住民税の課税を免除される(第25条第1項第1号・第3号、第296条第1項第1号・第3号)。また、日本赤十字社や社会福祉法人、学校法人などの公益法人等も、収益事業を行わない限りにおいて法人住民税を課されない(第25条第1項第1号ただし書き・第2号、第296条第1項第1号ただし書き・第2号)。

 法人の場合は、2以上の都道府県または市町村に事務所や事業所を有し、事業を行うことが多い。そこで、2つ以上の地方公共団体に事務所または事業所を有する法人は、それぞれの地方公共団体に対して納税義務を負うことになる(第24条第1項、第294条第1項)。法人税割については、従業者数に応じて法人税額を按分して分割し、それを課税標準としてそれぞれに税率を適用して税額を算出し、申告納付をする(第57条、第321条の13)。

 

 2.法人税割

   法人税割は、法人税額または個別帰属法人税額を課税標準とするものである(第23条第1項第3号、第292条第1項第3号)。ここにいう法人税額は、法人税法その他法人税に関する法令の規定に基づいて計算した法人税額で各種の税額控除をなす前のものであり、各種加算税の額を含まないものである(第23条第1項第4号、第292条第1項第4号)。このことから、法人税割は法人税の附加税としての性格を有することとなる。

  税率であるが、都道府県法人住民税の場合は、第51条第1項により3.2%が標準税率とされており、制限税率は4.2%とされている。市町村法人住民税の場合は、第314条の4により、9.7%が標準税率とされており、制限税率は12.1%とされている。

 

 3.均等割

 法人住民税にも均等割が置かれている。しかし、これは個人住民税の均等割と異なる性格をもつ。

 まず、都道府県法人住民税の場合、均等割の標準税率は、法人の資本金の金額により、年額が80万円、54万円、13万円、5万円、2万円の5段階に分けられている(地方税法第52条第1項)。所得の多寡に無関係であるという点においては応益課税的であるが、資本金の金額に応じて年額が変わるという点では応能負担的である。そして、具体的にどの税率が適用されるかということについては、期間などを含め、同第52条第2項において規定される。実際には、第1項に規定される均等割の額に、課税標準の算定期間など第2項に規定される期間を乗じて得られた額を12で除して得られる額が納税額となる(同第3項)。

  次に、市町村法人住民税の場合、均等割の標準税率は、法人の資本金の金額と当該市町村内の事務所等の従業者数によって、300万円、175万円、41万円、40万円、16万円、15万円、13万円、12万円、5万円の9段階に分けられている(同第312条第1項)。都道府県法人住民税と異なり、制限税率の規定があり、標準税率の1.2倍を超えることはできない(同第2項)。

 

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(2011年3月16日掲載)

(2011年8月19日修正)

(2012年8月12日修正)

(2014年6月24日修正)

(2014年10月30日修正)