26    贈与税

 

 

 1.贈与税の類型

 贈与税は、「24  相続税その1  相続税と贈与税との関係、相続税の性質、相続税の納税義務者」において述べたように、生前贈与によって財産が移転する機会に、その財産に関連して課される租税であり、歴史的には相続税の回避を防止するために補完物として導入されたものである。このため、遺産税方式の相続税に対応する贈与者課税方式の贈与税と、遺産取得税方式の相続税に対応する受遺者課税方式の贈与税が存在する。日本の贈与税は受遺者課税方式である。

 

 2.贈与税の納税義務者

 贈与税の納税義務者は、生前贈与により財産を取得した個人である。相続税法第1条の4は、次のように規定する。

 第一に、生前贈与によって財産を取得した個人で、住所が日本国内にある者である(同第1号)。無制限納税義務者であり、取得した財産全体について相続税の納税義務を負う(第2条の2第1項)。

 第二に、生前贈与によって財産を取得した時点の住所が日本国内にないが、日本国籍を有し、相続開始前の5年以内に日本国内に住所を有していた個人である(第1条の4第2号)。この場合も無制限納税義務者である(第2条の2第1項)。

 第三に、生前贈与によって財産を取得した時点の住所が日本国内になく、かつ、第1条の4第2号に該当しない者である。この場合は制限納税義務者であり、日本国内にある財産のみについて納税義務を負う(第2条の2第2項)。

 以上から明らかであるように、贈与税の納税義務者も、基本的に個人に限定されている。しかし、やはり租税回避を防止する見地から、例外が定められている。これは相続税の場合と共通するため、24  相続税その1  相続税と贈与税との関係、相続税の性質、相続税の納税義務者を参照されたい。

 

 3.贈与税の課税物件

 贈与税の課税物件を贈与財産という。これは生前贈与によって得られた財産である。範囲は広汎であり、財産権の対象となる一切の物および権利である。この点も相続税と共通する。

 但し、相続税法第21条の3第1項により、次のものは非課税財産として扱われる。

 第一に、法人からの贈与によって取得した財産である(第1号)。これは、贈与税が相続税の補完税であり、個人からの贈与による財産のみが課税の対象となるからである、と説明されている。

 第二に、扶養義務者相互間において生活費または教育費に充てるためになされた贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められる範囲のものである(第2号)。

 第三に、宗教、学術その他公益を目的として行う事業の用に供することが確実なものである(第3号。この事業の範囲は、相続税法施行令第4条の5・第2条に規定される)。なお、第12条第2項が準用される。

 第四に、所得税法第78条第3項に規定される特定公益信託から交付される金品で、学術に関する顕著な貢献に対する表彰としてのもの、もしくは研究を奨励するものとして財務大臣が指定するもの、または学資の支給のものである(第4号)。

 第五に、地方公共団体の条例により、精神または身体に障害がある者について実施する共済制度により支給される給付金を受ける権利である(第5号)。

 第六に、公職選挙法の適用を受ける選挙において公職の候補者が選挙運動に関して贈与を受けた金銭や物品などである(第6号)。但し、公職選挙法第189条に定められた報告がなされることを前提とする。

 以上とは別に、特別障害者(第19条の4第2項)については、贈与税が課税されない場合がある(第21条の4)。

 贈与税の納税義務は「贈与による財産の取得の時」に成立する(国税通則法第15条第2項第5号)。問題は、その具体的な意味である。

 書面による贈与の場合は、契約の効力の発生した時点であると解されている。

 一方、書面によらない贈与については問題がある。一つの考え方として、贈与の効力が発生した時点と解することが可能である。しかし、売買などと異なり、贈与は、民法第550条により、履行がなされるまでの間において自由に取り消すことができるとされていることから、履行の終了の時点を「贈与による財産の取得の時」と解するべきであるという考え方もある。なお、贈与そのものが無効であったとしても、現に取得された財産に対する管理や支配が行われている場合には、贈与税が課されることとなる。

 贈与税についても、みなし贈与財産が存在する。法律上は生前贈与によって得られた財産ではないが、実質的に同じであるとして贈与により取得したものとみなされる財産や権利である。

 (1)保険金

 生命保険または損害保険の契約による保険金のうち、保険金受取人以外の者が負担した保険料に対応する部分である(第5条)。

 (2)定期金に関する権利

 生命保険契約を除く定期金給付契約(郵便年金契約など)で、定期金受取人以外の者が掛金の全部または一部を負担していた場合に、その定期金受取人以外の者が負担した掛金に対応する部分である(第6条)。

 (3)著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた者

 相続税と同じく、第7条の適用がある。

 (4)債務免除等による利益

 相続税と同じく、第8条の適用がある。

 (5)その他の利益

 相続税と同じく、第9条の適用がある。

 (6)信託受益権

 相続税と同じく、第9条の2ないし第9条の6の適用がある。但し、第21条の4を参照されたい。

 

 4.贈与税の課税標準および税額の計算

 相続税法第21条の2第1項は、贈与税の課税標準贈与税の課税価格と表現する。課税価格(課税標準)は、一年間(暦年による)に贈与によって取得した財産の合計額である

 ※負担付贈与の場合は、財産の通常の取引価額から負担の金額を控除して得られた額である。

  まず、原則的な場合について述べると、課税価格から基礎控除を差し引く。相続税法第21条の5は、基礎控除の額を60万円とするが、租税特別措置法第70条の2第1項は、2001(平成13)年1月1日以後になされた贈与により、財産を取得した者について、基礎控除の額を110万円とする。

 次に、婚姻期間が20年以上の配偶者から、居住用不動産またはその取得費の贈与を受けた者については、翌年の3月15日まで居住し、さらに引き続いて居住するなど、一定の条件の下に配偶者控除として最大で2000万円を差し引く(第21条の6)。続いて、こうして得られた残額について、第21条の7に規定される税率表を適用し、贈与税額を算出する。やはり超過累進税率である。そして、在外資産について外国政府によって贈与税が課された場合には、その贈与税額を控除する(第21条の8)。

 以上とは別に、住宅取得等の資金の贈与を受けた者について、租税特別措置法第70条の3以下に特例が規定されている。

 

 5.相続時清算課税制度

 相続税法第16条と第21条の7とを比較すれば明らかであるが、贈与税の負担は相続税の負担より重い。このため、生前贈与は極端に不利なものとなり、親から子などへの資産の移転に障害をもたらすと考えられた。そのため、相続時清算課税制度2003(平成15)年度改正により創設された。

 相続時清算課税制度は相続税法第21条の9以下に規定されるものであり、生前贈与を受けた者の選択により、特別に低く設定された税率による贈与税を納めておき、その後に生じる相続の時点において、その贈与財産と相続財産との合計の価額を土台とした相続税額から、既に納めた贈与税を控除する、という制度である。贈与税の負担を軽くした上で、相続時に相続税と贈与税とをまとめて納めるということになる。

 この制度を選択できるのは、贈与者が65歳以上の者であり、かつ、受贈者(この制度の適用を受けようとする者のことである)が贈与者の推定相続人たる直系卑属(代襲相続人も含まれる)であって満20歳以上の者である場合に限定される。そして、この制度を選択するためには、最初の贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に、適用を受ける旨などの事項を記載した届出書を、所轄税務署長に提出することが必要である。ここで、この届出書を提出した者を相続時清算課税適用者と称し、贈与者を特定贈与者と称する(第21条の9第5項)。

 相続時清算課税適用者は、特定贈与者からの贈与により取得した財産について、相続時まで継続して適用を受けることになる(同第3項)。贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はない。

 この制度の適用を選択した場合には、特定贈与者からの贈与とその他の贈与とを区別しなければならない。そして、特定贈与者ごとに、その年の間に贈与によって取得した財産の価額を出し、その合計額を課税価額とする(第21条の10)。

 相続時清算課税の場合、第21条の5ないし第21条の7は適用されない(第21条の11)。そのため、第21条の5に規定される基礎控除などの適用はない。代わりに、次のように算定する。

 まず、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格から、非課税枠の2500万円または特定贈与者ごとの贈与税の課税価格のいずれか低い金額を控除する(第21条の12)。こうして得られた残額に、一律20%の税率を乗じる(第21条の13)。この計算によって得られた額が納税額となる。

 居住用資産の取得のための贈与については3500万円とされている。これは、租税特別措置法第70条の3、第70条の3の2によるもので、相続時清算課税の2500万円に1000万円の上乗せをしたものである。

 特定贈与者が死亡して相続が開始されると、相続時清算課税適用者は、この制度による贈与財産と相続財産とを合算し、法定相続分による遺産取得課税方式で相続税額を計算した上で、既に納付した贈与税相当額を控除する(第21条の14以下)。控除しきれない金額があれば、贈与税の還付を受けることも可能である(第33条の2)。 

 

 戻る

(2011年3月16日掲載)

(2011年8月19日修正)

(2012年8月12日修正)