サテライト日田(別府競輪場の場外車券売場)建設問題・第60編

 

 第59編以来、実に4箇月以上の時間が経過しました。当初は、この第60編の内容を、私がサテライト日田問題に関わるようになってから現在までの総括とした上で、3月中に掲載するつもりでおりました。しかし、既に大東文化大学法学部への移籍が決まり、引越しなどの準備に追われ、4月に入ってからは新しい環境に慣れる必要性もあり、なかなか手を付けることができないまま、7月になりました。また、ここで改めて総括をする必要があるのか、という思いもありました。最初から関わっていた訳ではありませんし、日田市での市民集会などに呼ばれたことも参加したこともありません(連載記事をお読みいただいた方ならおわかりのことでしょう。全て、新聞記事の引用などで済ませています)。理論的にも、まちづくり権なるものを現行の地方自治法などから導き出せるのかという疑問がありました。地方分権改革の基本的な思考からして、まして、市町村合併が強力に推進される中で、本当に、市町村が一法人としての権利を保障されているのかという問題が生じてきます。

 また、昨年、私自身は、仕事の関係などで市町村合併に関わらざるをえなくなっていました。大分県に住んでいる限り、市町村合併は切実な問題です。今は川崎市に住んでいますが、神奈川県でも相模原市などにおいて合併に関する問題が発生していますし、首都圏では都県合併構想が大々的に喧伝されています。その中で、住民の立場はどのようになるのか、などの様々な課題が登場しています。市町村合併は、地方自治を考える際に避けて通ることができないのです。

 市町村合併に関する私の意見については、今年(2004年)の3月に出版された、日本財政法学会編『地方税財源確保の法制度』(財政法叢書20、龍星出版)に収められている「討論―地方税財源確保の法制度」、および『改革と自治のゆくえ(月刊地方自治職員研修臨時増刊号75)』(2004年3月号増刊)に収められている「自治・分権から眺めた市町村合併」を御覧下さい。

 第59編を掲載してから現在までの間、3月には花伝社から、日田市対経済産業大臣訴訟における日田市側弁護団長、寺井一弘氏の著書『まちづくり権』が出版されました。私が入手したのは、東京に帰ってからのことです。

 他方、私は、昨年(2003年)の夏、熊本県立大学総合管理学部における集中講義を終えてから、月刊地方自治職員研修2003年10月号に掲載された「リーダーたちの群像〜平松守彦・前大分県知事」の原稿とともに、日田市対別府市訴訟の判決に対する評釈を中心とした「地方公共団体の名誉権と市報掲載記事―大分地方裁判所平成14年11月19日判決の評釈を中心に―」の原稿を作成しました。後者は大分大学大学院福祉社会科学研究科の紀要第1号(創刊号)のためのものでしたが、発行が遅れ、私が大分を離れた3月下旬の段階においてまだ刊行されていなかったのです。2004年3月に刊行されたとのことですが、私の手元に届いたのは4月に入ってからのことでした。既に、このホームページにも掲載しておりますので、参照していただければ幸いです。

 日田での問題が終わったとは言え、他の地域においては、公営競技の場外券売場設置計画が進められています。住民の反対運動が展開されている所もありますし、そうではない所もあります。大分県でも、大分市にボートピア(場外舟券売場)設置計画がありました(今はどうなっているのか、全くわかりません)。そして、2004年7月7日、読売新聞大分版に、院内町におけるボートピア設置計画に関する記事が掲載されました。東京では読売新聞大分版の記事を読めませんので、ホームページ掲載記事に頼るしかありません。

  「院内にボートピア計画〜町と事業者、3地区住民に説明」という記事によると、院内町の二日市地区に設置される計画であるということで、話は昨年の1月に始まったようです。二日市地区に、農業用の溜池があります。およそ8000平方メートルほどの広さだということですが、20年ほど前から「施設の老朽化が進み、使われていない」とのことです。そこで、水利権を持つこの地区の住民が、この溜池の活用策を求めたということです。それがボートピア設置計画に結びついたのです。

 今年の3月、二日市地区、野尻地区、副地区の住民を対象に説明会が行われました。その時点においては3地区とも同意したとのことです。既に地質調査や測量などが行われているようですが、7月に入り、5日の夜から3地区における基本計画の説明会が行われます。記事から判断すると7日までのようです。また、3地区では対策協議会の設置もなされるようです。

 報道が示す基本計画の概要ですが、設置事業者は大阪市に本社を置く不動産・金融コンサルタント業の会社です。どこの競艇場の場外舟券売場にするのかという点はまだ決定されていないのですが、施設そのものについては、24000平方メートルの区域を開発し、建物の分をおよそ2500平方メートルとし、500台分の駐車場を設けるということです。この記事には、院内町長のコメントとして「合併を前に、検討を進める最後の機会。慎重に進めたい」というコメントが掲載されています。

 大分を離れておりますので、サテライト日田問題の後始末の状況については、全くと言ってよいほど情報が入ってきません。別府市と溝江建設との間でどのような解決がなされたのか、あるいはなされようとしているのか。損害賠償がなされないということもないはずです。仮に、日田市が負担を求められるとするならば、再び大きな問題となるでしょう。

 2000年6月下旬、偶然といえばその通りですが、大分合同新聞社からの電話を研究室で受けたことによって、サテライト日田問題に取り組むこととなりました。それから4年が経過しています。ここまで長く関わってきたことが不思議に思われるほどですが、私自身の立場を見直すきっかけにもなりましたし、多くの方々と出会い、意見の交換などをすることもできました。大分県を離れた今、改めて、この問題の大きさを感じています。

 

(2004年7月7日)

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