27    財産の評価

 

 

  1.財産評価の原則

  「25  相続税その2  相続税の課税物件、課税標準および税額の計算」において述べたように、相続税額の計算をなすための前提として、相続財産の評価がなされなければならない。これは、贈与税額の計算についても妥当する。そのため、財産の評価は、これが定まらなければ税額の計算をなすことができないという意味で重大事項なのである。

  相続税法の原則は時価主義である。第22条は、財産の「取得の時における時価」によって評価する旨を定める。ここにいう「取得の時」は、相続税の場合は被相続人または遺贈者が死亡した日のことであり、贈与税の場合は受贈者が贈与によって財産権を取得した日のことである。また、時価とは財産の客観的交換価値のことをいい、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立する価額のことをいう。もっとも、このように表現しても、その時価を評価することは難しい。

  ※ちなみに、第26条の2は、土地評価審議会に関する規定である。

  相続税法は、第23条ないし第26条において、地上権、定期金、給付事由が発生していない権利(定期金給付契約)、立木に関する法定評価を定める。もっとも、これらの規定をもってしても客観的交換価値が直ちに定める訳ではない。そこで、現実には財産評価基本通達に従って評価を行うこととなる。これはあくまでも通達であるから、通達と異なるように財産を評価したとしても直ちに違法になる訳ではないし、一定の場合には財産評価基本通達に従わない評価のほうが妥当とされることもあるが、特別な事情がなければ、さしあたり合理的な評価の基礎を持つものと理解されるであろう。

  財産評価基本通達は、財産を単位ごとに、例えば、宅地については一区画、株式については一株について現況を基準として評価し、これらの評価額の合計額を全財産の価額とすることを定める。その点において、時価評価とは言えない部分がある。共有財産の持分については全体の評価額を持分に応じて按分する。これらの他に、区分所有財産、天然果実などを含め、財産に共通する評価原則を定める。以下、土地(宅地)、株式および債務を例として概説を試みる。

 

  2.土地(宅地)の評価

   財産評価基本通達は、土地の地目別に、相続または贈与が行われた年の1月1日を基準日として評価することを定めている。土地の地目は、宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地とされており、現況によって判定することとなる。

  ここで宅地を取り上げると、市街化地域にある宅地の評価は路線価方式により、郊外にある宅地(市街化地域にない宅地)の評価は倍率方式による。

  路線価方式とは、価額がほぼ同じと認められる一連の宅地が面している路線(道路および水路)の中央部にある標準的な宅地の一単位あたりの価額、すなわち路線価を基準としておき、これに各宅地の特殊事情を加味して価額を算定する方法である。実際には、路線価に宅地面積を乗じて計算することとなる。

   ※1月1日時点における1平方メートルあたりの土地の価額である。

  この路線価は、毎年、路線価図に示された上で税務署から発表されるものであるが、その際には、売買実例価額、精通者意見価格および公示価格の仲値の範囲内において、国税局長が土地評価審議会の審議を経て評定する。

  ※仲値とは、売買実例価額および精通者意見価額のウェイトを公示価額の半分とする条件の下に置き、この三つの価額から得られる平均値のことである。多くの場合、仲値と公示価額はほぼ同額になる。もっとも、実際には国土庁が公示する地価公示価格に一定の評価割合をかけて評定されているので、仲値あるいは公示価額の7割または8割(平成4年度から)となっている。

  次に、倍率方式とは、固定資産税評価額に、国税局長が一定の地域ごとに売買実例価額、公示価格および精通者意見価格を基にして地域の実情に即して定める倍率(評価倍率表などという)を乗じて計算した金額で定める方法である。

  ※これは、地方税法第410条により、固定資産評価員の評価に基づいて市町村長が決定する。

  なお、ここで家屋の評価について述べておく。家屋の場合は、一棟ごとに評価するのが原則であり、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算した金額によって評価する。具体的には、同一の家屋を評価時において建築したものとする場合における建築価格とするのであって、新築に必要とされる建築費を算出した上で、経過年数や損耗の程度などに応じた減価を行うこととなる。

  3.株式の評価

   株式は、土地や家屋などよりも、実際の相続や贈与における評価の問題が少ないと思える。しかし、東京証券取引所や大阪証券取引所などに上場されているような株式であればともあれ、そうでない株式の場合は、取引がなされることのほうが少ないので、評価は難しくなる。相続税法には、株式に関する評価の仕方について詳細な規定がないので、どのように評価するかが一応の問題となる。

   財産評価基本通達は、証券取引所に上場されている株式(上場株式)、気配相場等のある株式、取引相場のない株式(非上場株式)の三種に分け、それぞれについて評価の方法を定める。

   (1)上場株式

  上場株式の意味については、説明するまでもなかろう。評価の方法としては取引価格法が用いられる。これは、原則として、株式が上場されている証券取引所が公表する課税時期の最終価格によって評価する、というものである。その最終価格が、課税時期の属する以前3ヶ月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額の最低を超える場合には、その最低の価格によって評価することになっている。但し、負担付贈与、または個人間の対価を伴う取引によって取得したという場合には、贈与税の回避を防止するために、上場されている証券取引所が公表する課税時期の最低価格によって評価する(財産評価基本通達169。特例として同170ないし172を参照)。

  (2)気配相場等のある株式

   気配相場等のある株式は、登録銘柄、店頭管理銘柄、公開途上にある株式の三種類に分かれ、それぞれ扱いが異なっている。

  登録銘柄は、日本証券業協会の内規によって同協会に店頭登録銘柄として登録されている株式のことである。この場合は、日本証券業協会が公表する課税時期の取引価格によって評価する。やはり、その取引価格が、課税時期の属する以前3ヶ月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額の最低を超える場合には、その最低の価格によって評価することになっている。但し、負担付贈与、または個人間の対価を伴う取引によって取得したという場合には、上場されている証券取引所が公表する課税時期の最低価格によって評価する(同174(1))。

  店頭管理銘柄は、日本証券業協会の内規によって指定されている株式のことである。評価の方法は登録銘柄の場合と同じである(同174(1))。

  公開途上にある株式は、上場の承認申請中の株式、登録銘柄とする方針が明らかにされている株式を合わせた表現である。この場合は、株式の公募または売り出しが行われている場合には、金融商品取引所または日本証券業協会の内規によって行われる入札によって決定される、入札後の公募等の価格、すなわち公開価格によって評価される。但し、上場または登録に際して公募が行われなければ、取引価格等を勘案した上で評価する(同174(2))。

  (3)取引相場のない株式

  取引相場のない株式の評価方法として、類似業種比準法と純資産価額法が定められている。

  類似業種比準法は、評価の対象となる株式を発行する会社の価格を、同一または類似の業種の上場会社の平均株価等に比準して算出する方法である。

  これに対し、純資産価額法は、評価の対象となる会社の一株あたりの純資産価額によって株価を評価する方法である。一株あたりの純資産価額は、評価会社の正味資産価額から、課税時期における負債の合計額および課税時期における評価差額に対する法人税等に相当する金額を控除し、残りを発行済み株式数で除して得られる金額である。

  取引相場のない株式を評価するには、まず、評価会社を、従業員数、資本金額、総資産価格(帳簿価額による)、および直前期末以前一年間における取引価格を基準として大会社、中会社、小会社に区分する。財産評価基本通達は、次の三種類に区分し、評価の方法を定める。

  @大会社は、次のいずれかの要件に該当する会社である(同第178)。

  @  従業員数が100人以上である。

  A  総資産価格が10億円以上(卸売業については20億円以上)で従業員数が50人を超える。

  B  直前期末以前一年間における取引金額が20億円以上(卸売業については80億円以上)である。

  原則として類似業種比準法によって評価するが、納税義務者は純資産価額法を選択することもできる(同179(1)、180)。

   A中会社は、従業員数が100人未満であり、かつ、次のいずれかの要件に該当する会社である。

  @  総資産価額が4000万円以上(卸売業については7000万円以上)で従業員数が5人を超える。

  A  直前期末以前一年間における取引金額が、卸売業なら2億円以上80億円未満、小売・サービス業なら6000万円以上20億円未満、これら以外の業種なら8000万円以上20億円未満である。

  原則として、財産評価基本通達179(2)に規定された、類似業種比準法と純資産価額法とを併用する算式により評価するが、類似業種比準法の部分を純資産価額法に置き換えて算出することも、納税者の選択肢として認められている。

  B小会社は、従業員数が100人未満であり、かつ、次のような会社である。

  @  卸売業の場合は総資産価額が7000万円未満、または従業員数が5人以下であり、直前期末以前一年間における取引金額が2億円未満である。

  A  小売・サービス業の場合は総資産価額が4000万円未満、または従業員数が5人以下であり、直前期末以前一年間における取引金額が6000万円未満である。

  B  これら以外の業種の場合は総資産価額が5000万円未満、または従業員数が5人以下であり、直前期末以前一年間における取引金額が8000万円未満である。

  次に、会社の種類に応じて評価する。

   原則として、純資産価額法によって評価するのが原則であるが、納税義務者は中会社の算式を利用する評価を選択することもできる(同179(3))。

 

  4.債務の評価

   民法相続編においては債務も相続財産であるが、相続税法においては相続開始時点において存在する被相続人の債務のうち、履行が確実と認められるものの金額は、相続人または受遺者の負担に属する部分について、相続財産の金額から控除されるものである。これは、相続税法第22条の原則に従い、相続時の現況によって判断する。

 

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(2011年3月16日掲載)

(2011年8月19日修正)

(2012年8月12日修正)