サテライト日田(別府競輪場の場外車券売場)建設問題・第29編
このところ、サテライト日田問題に関して進展が見られなかったため、続編を作成しうる状況になかったのですが、今月に入り、別府市のほうで新たな動きがありました。6月19日には、原告:日田市、被告:別府市の第2回口頭弁論が行われますが、そのことと関係があるかどうかまではわかりません。今回は、朝日新聞の大分asahi.com/ニュース2001年6月6日付記事(http://mytown.asahi.com/oita/news02.asp?kiji=964)、および大分合同新聞ホームページ2001年6月5日付記事(http://www.oita-press.co.jp/cgi-bin/news2.cgi?2001-06-05=17)を基にしております。
サテライト日田設置関連補正予算案は、昨年の12月18日、別府市議会定例会において継続審議とされ(第12編および第10編を参照)、今年2月8日の別府市議会臨時会において否決されました(第20編を参照)。日田市側の、市民・行政が一丸となった反対運動が実を結んだ結果である、と言いうるでしょう(その際立ったものが、12月9日に行われた、あの反対デモ行進でしょう。第8編を御覧下さい)。これが別府市議会を動かしたことは間違いありません。そして、今年の1月7日、13時から東京放送にて放映された「噂の! 東京マガジン」の力が大きかったことも、否定できません。これがきっかけで、日田市のホームページにある「ひたの掲示板」には応援のメッセージが寄せられ、別府競輪場のホームページにある「競輪質問コーナー」には、おそらく別府市としては予想もしていないサテライト日田問題に関する質問や抗議が記されました。抗議の電話やメールはそれ以上であったと言われています。余談ですが、この時期、私も、市町村合併の講演会の準備をしながら、「ひたの掲示板」に書き込みをしていました。その結果、実際にお会いしたことがないとは言え、色々な方々と交流させていただくことにもなりました。
別府市は、臨時会において議案(サテライト日田設置関連補正予算案)が否決されたからと言って、断念した訳ではありません。3月の定例会への再提出も検討されていたようですし、遅くとも6月の定例会に再提出されるという観測が一般的でした。結局は空転の原因にもなりましたが、多数派形勢工作を目的とした与党会派の三分割も、サテライト日田問題によるものでした。結局、この工作は成功しなかったのですが、逆に、このような情勢であったからこそ、サテライト日田設置関連補正予算案は提出されなかったのです。そして、4月18日の第1回口頭弁論において、別府市は全面的に争う姿勢を示しました(第25編を参照)。一連の動きを見ていたならば、別府市が6月の定例市議会にサテライト日田設置関連補正予算案を再提出することは、むしろ当然の流れでしょう。
しかし、6月5日、記者会見の席において、別府市の井上信幸市長は、サテライト日田設置関連補正予算案を市議会に提出しないことを表明しました。その理由として、提案したとしても市議会の理解を得られないという判断があったようです。もっとも、これは、設置を断念するという意味ではありません。上記朝日新聞記事にも、「競輪事業振興のため」にはサテライト日田の設置が必要であるという趣旨が示されておりますし、サテライト日田の設置手続に法的な問題がないこと、この問題に関して別府市が当事者としての立場にないことを、改めて示しました。以前から別府市が表明している立場です。
以前から私が指摘しておりますように、この問題に関する別府市の対応は、誠実なものとは言い難いと思われます。たしかに、設置許可に関わる行政手続の面からすれば、当事者は設置許可申請者である溝江建設と経済産業省(当時は通商産業省)であり、別府市は第三者です。しかし、溝江建設は、自転車競技法の規定からして設置許可を申請しうるのですが(公営競技において、設置許可申請をなしうる者について何らの限定を加えていないのは競輪事業だけのようです)、設置許可を得られたから車券を販売できるという訳ではありません(この点も、自転車競技法にみられるおかしな点です)。施設を賃借する予定になっている別府市だけが、車券を販売しうるのです。そうであれば、別府市は、サテライト日田問題に関する実質的な当事者であることは言うを待ちません。たとえサテライト日田の建物が完成しても、別府市が、予算を通じて車券販売の準備をし、建物を賃借した上で実際に車券を販売しなければ、場外車券売場として何の意味もないのです。果たして、こうした単純なことを別府市側は理解しているのか、と疑わざるをえません。
それにしても、最近、サテライト日田問題があったからかどうかはわかりませんが、全国的にも、別府市より日田市のほうが、良くも悪くも注目を浴びているようです。少なくとも、インターネットの世界では、日田市のほうがイメージをアップさせたと言えるでしょう。それは、別府市のホームページに掲示板がなく、別府競輪場のホームページには掲示板があっても、本来の趣旨とは違うと思われるサテライト日田問題以外に書き込みがないこと、その書き込みに対して別府市が何の対応もしていないことからすれば、当然のことです。逆に日田市のほうは、「ひたの掲示板」において、サテライト日田問題が議論されており(私もその一員ですが)、市政に関する他の問題についても活発な議論がなされているのです(これにも私が参加しています)。電子政府、電子自治体構想を現実化するためには、行政側から一方的に情報を流せばよいという態度を捨て、いかに辛辣な意見が寄せられようが、真摯な意見である限りにおいて、誠実に受け入れ、検討をした上で、反省をしなければなりません。勿論、行政の立場に過誤がないというのであれば、十分に説明をしなければなりません。
(2001年6月11日)
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